断腸亭料理日記2010

〆鯖

4月3日(土)第二食

土曜日。

天気がいい。
が、少し肌寒い。

昼過ぎ、いつものように、アメ横の魚やを目指して、出る。
セーターを着て、ウインドブレーカー。

4月に入り、朝の通勤に使っている、大江戸線なども
そうだが、新入社員や、進入学の学生などもいるのだろう、
新たに東京へ出てきた人々、物慣れない様子で、
うろうろしている姿も見かけるようになった。

今日のアメ横界隈もそうなのか、地方から出てきたと
思われる人も多いように思われ、随分な人出。
(上野の花見の人も少なくなかろうが。)

魚やをのぞく。

あんこう。
さすがに、もう季節ではあるまい。

あん肝、も、ある。
あん肝は、この前、ここで買ったもので、
いがらっぽいものに出くわしたことあった。

小鯛がある。
江戸前鮨で著名な、春子(かすご)鯛と、いってよかろう。
山盛りあって、500円。
ちょっとひかれるものがある。しかし、実際のところ、
以前にやったことがあるが、大量の春子をさばくのは、
たいへんな作業になる。

鯖、に、目がとまった。
ちょっと小さめ、3本で、500円。

この冬は、脂がのって、随分とうまかった。
もうそろそろ、終わりなのだろう。

ひょっとすると、まだ、食べられるかも、、。
わからぬが、鮮度はわるくなさそうである。

淡い期待を抱きつつ、、、。
買ってみようか。

帰宅。

こんな感じ。


ちょっと、細い。

〆鯖で、いけるだろうか。
ともあれ、三枚におろそう。

頭を落とし、腹を割く、、と。
あれま。
やっぱり、卵巣。

子持ちであった。

前にも春先の鯖で、こんなことがあった。
脂っ気もなにもなく、パサパサ。
〆てもうまくなかったのだが、今日のはどうだろうか。

そうである。
この子、は、食べられないのであろうか。
塩をして焼いてみようか。
分けておいておく。

三枚におろし、中骨にも塩をし、置いておく。
おろした身にも〆鯖用に、塩をし、置いておく。


と、いったところで、〆鯖は、すぐには食べられない。
先週作ったカレーの残りがまだあったので、
温めて、これで呑むことに。

呑むのは、缶酎ハイ。

呑んだら、眠くなった。
〆鯖には、塩をして、2時間。

既に一時間経っているので、1時間で、起きようと、
アラームをかけて、横になる。

、、、、。

と、、、起きたら、7時。
アラームなど、何の役にも立たなかった。

おそらく、3時頃には寝ているはずで、
2時からで、塩をしたので、5時間程度になる計算である。

内儀(かみ)さんに、なぜ起こさなかった、と、
文句をいうと、起こしたのだが、うるさい、
といった、と、いう。

気を利かせろ、といいたいが、家(うち)の内儀さんにそれを
要求するのは、無理というもの。
まあ、しかたがなかろう。

あわてて、水に漬ける。

魚の酢〆、と、いうのは、塩をして、水を抜き、
その分、酢が入る、ということなのだが、
むろんのこと、塩気も身に染みていく。
時間をかけるほど、塩辛くなる。

どうであろうか。
しばらく、水に漬けたまま、置く。

いつも、わからぬのが、この時間。
塩を抜く、のはよいが、せっかく抜いた
水分が戻ってしまうのではないか、
と、思うのである。

数分であげて、水気をよくふき取る。

酢に漬ける前に、酢洗い。

ほんの少しだけ、砂糖を入れた、酢を作り、
漬ける。

ここから、一時間ほど。

だいぶ漬かったか?
塩をした時間が長かったので、
もう酢が入ったであろう。

切ってみる。

?。

あれま、中の方は生。

そんなものであろうか。
もう30分ほど。

もういいだろう。
切ってみる。

多少、先ほどよりも酢は入ったが、
中心までは、入っていない。

もういいか。

半身を切って、盛り付ける。

塩をしておいた、中骨と子も
オーブントースターで、焼いてみる。


〆鯖。


〆鯖は、生っぽいが、なんのなんの、大丈夫。
酢の入り具合は、いつも〆ている程度。
なんら問題はない。

また、味も、脂はのってはいないが、普通にうまい
〆鯖、で、ある。

塩をしている時間はなんであったのか。
わからぬが、結局、鮮度がよかったからか。
まあ、うまければよいか。

ちなみに、鯖の玉子。
これは苦くてだめであった。

さて、残りの2本。
これらは、二枚におろしておいた。
翌朝、半身をポワレ、というのか、
塩をし、オリーブオイルと、にんにくで焼いてみた。

魚のポワレは、皮がパリッとしたのが、うまい。
以前に、鉄製のフライパンで皮がくっつき
滅茶苦茶になったことがあった。
で、今回は、テフロン。
それも、買ったばかり。
(テフロン、と、いうのは、ご存知の通り、
段々にヘタってくるので、新しい方が、性能は
発揮する。プロの料理人もテフロンを使う人もおり、
こういう人は、新しいものにどんどん替えるという。
もったいないようだが、この先日買ったものは、
400円弱ではなかったか。これはこれで、あり、なのかも
しれない。)

パリッと焼けた。


むろん、うまい。

さて。

残っていた、〆鯖、半身。
あの後、さらに一時間ほど漬けておき、
酢からあげて、容器に入れて、冷蔵庫に。

翌、日曜の夜、食べてみた。

結局、一昼夜、経っているわけだが、
ほぼ完全に酢は入り、味も、わるくない。

江戸前仕事の小肌の酢〆では、酢に漬けた後、
一昼夜以上、ざるにのせて、常温に置いておく、
と、いうのを聞いたことがある。

鯖ではどうなのか、わからぬが、やはり、酢に漬けて、
すぐ、ではなく、しばらく置いて、食べるもの、
なのであろう。
酢〆、と、いうのも、塩をする時間が長くとも
酢が完全に入るのには、時間がかかる。
それも酢に漬けたまま置く、のではなく、
空気に触れている状態で、ある程度の時間、置く。

この常温に置く、というのは、乾かすという意味も
あるようにも思う。酢からあげたばかりでは、
いくら水気をよくふいても、酢の味は強い。
しばらく置くことで味もこなれる、ような気もする。

ともあれ。
魚の酢〆、と、いうもの、なかなか、複雑なもの、
で、ある。





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