断腸亭料理日記2010

龍馬伝、坂の上の雲、

あたりから、考えたこと。

今日は、ちょっと変則、
『最近考えたこと』シリーズ(?)。

今年のNHKの大河ドラマ「龍馬伝」。
それからその後、ちょうど今やっている、
「坂の上の雲」。

「坂の上の・・」の方は、ご存じの通り、
司馬遼太郎先生の作品。
「龍馬伝」の方は、原作は明示されていないが、
坂本龍馬を掘り起こしたのは、やはり、司馬先生、
と、いってよいのではなかろうか。

この2作品、TVドラマの作品としては、おもしろかった、
「坂の上・・」は終わっていないが、ことは、
間違いなかろう。手に汗握るし、感動もした。

しかし、個人的には、やはり、釈然としないものが
残ったのである。

かたや幕末、そして、その後の明治。
まあ、連続している時代といってもよいだろう。

この時代、あるいは、その時代の原動力になった人々を
2作品は、十二分に肯定的にとらえている。

果たして、本当にそうなのか?、
というのが私の釈然としないものの本体、
の一つ、である。

つまり、幕末から明治維新の近代革命と、
その後の富国強兵、文明開化から、列強に伍して
帝国主義の時代に突入していった日本の明治期。

文化的にいえば、近世江戸文化の、
一応の消滅、と、近代欧米文化の流入、あるいは転換。

これを日本人として、どう評価するのか、という問題で、
本当に、そんなに肯定的にとらえてよいのか、という、
問題提起、なのである。

そして、もう一つ。
これは、多分に、私の感情的な部分ではあるが、
この2作品は、多分に関西の人達の歴史?、、
そんな風に見えてしまっているのである。

江戸人、東京人から見た場合、
違う幕末、明治があったのでは?
ということなのである。

先日観た、河竹黙阿弥作の、
歌舞伎「天衣紛上野初花」の話を思い出す。
あのときにも書いたが、あれは明治になって黙阿弥が
書いた作品。

「入谷村蕎麦屋の場」。
江戸らしい江戸が描かれている。
明治になって、黙阿弥は“江戸”を見せたかったので
あの場面を書いた、という。

少し前に『河竹黙阿弥の明治維新』(渡辺保・新潮社)というのを
読んだことがある。これによれば、明治になって、黙阿弥は
歌舞伎の作者を続けているなかで、当時の現代ものの芝居にも
取り組んでいたという。しかし、様々なことで当時の
演劇界、あるいは、その取り巻きから、受け入れられなかった
ともいう。

であれば、自分の住む世界は、江戸で、そちらの方が
すばらしい、先の「天衣紛上野初花」の
「入谷村蕎麦屋の場」のような、江戸らしい江戸を
書きたかったということのようなのである。

これを、近代化、文明開化に乗り遅れた、
『江戸』の旧態人の懐古趣味と、片付けるのは
簡単なことである。

しかし、ほんとにそうか?それでいいのか?、
明治維新万歳、明治の日本人万歳!、とまでは、
私には思えない、のである。

今まで、あまり、こういった視点では
考えられてこなかったと思われる。

そういう意味で、明治維新と明治を本当の意味での
評価は終わっていないのではないだろうか、と、
思うのである。
明治の功罪、というのだろうか、そういうものも
考えてみる必要があるように、思う。

明治と江戸は、時代とすれば、近世と近代。

ご存じのように日本の近世である江戸時代は、
封建社会で鎖国をしていた。
この社会は、なんらかの形で、近代に生まれ変わらねば
ならなかった。まあ、これは時代の趨勢ではあろう。

これが薩長ら西日本の雄藩連合による、倒幕、
という形を取り、その後の薩長出身政治家が
指導する明治政府ができた。

まずは、これによる、マイナス点はなんだったのか。
それが一つの視点かもしれない。

そして、仮説ではあるが、先の、黙阿弥先生の例ではないが、
江戸のよさを残したままで、世の中の枠組みだけを、
近代に移行するということはあり得なかったのか。
そんなことも頭に浮かんでくる。

ともあれ。

今日は、なんらか、結論を出すつもりはない。
これらは、自らの課題として、追々考えていきたいと
思っている。

ただ「龍馬伝」「坂の上の雲」の明治維新、あるいは、
明治の時代解釈だけが、すべてではないのではないか、
ということを、問題提起したかったのである。







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