断腸亭料理日記2010

南千住・うなぎ・尾花

12月2日(木)夜

今日は、一日、柏の事業所。

と、なれば、帰り、どこに寄ろうか。

南千住の、尾花!。

むろん、うなぎ、で、ある。

12月は、時季はずれ、ではないか、
と、思われるかもしれぬが、そんなことはない。

うなぎは夏の土用、というのは、その昔、
売れ行きが落ちる真夏のうなぎの販売促進策として、
平賀源内が考えたこと。

沙魚(はぜ)もそうであったが、
うなぎも、冬を前に、脂を蓄え、うまい時期なのである。

と、いうことで、12月はうなぎの月、
私は、そう思っている。

TXを南千住で降りる。

この駅前、というのも、再開発が終わったようで、
随分ときれいになった。
きれいになって、南千住らしくなくなった、ような
気もするが、どうなのであろうか。

最近の下町の再開発で思い出すのは、日暮里駅前。
あそこも、舎人ライナーの開通とともに、ビルができ、
駄菓子の問屋などが再開発にあった。
あのビルができて後、日暮里にもいったが、
むろんのこと、近隣を含め、住んでいる人が大幅に
かわるわけではないので、日暮里はやっぱり、
日暮里、と、感じたものである。

きれいになることに誰しも異はとなえまいが、
再開発ビルができることによって、どこへいっても
同じような駅前になってしまいはしないか、
それが心配、ではある。
その街の雰囲気、空気のようなものは、
その街がたどってきた歴史そのもので、
大切にしてしかるべきではないか、と、私は思うのである。
つまり、その街らしい再開発を考えるべきである、と。

ともあれ。

駅前から左に出て、小塚原の通りを回向院の方に渡り、
線路際、土手下の路地に入る。

真っ直ぐいって、右側。
近くまでくると、蒲焼のよい匂いがしてきた。
(これ、なぜか、いつもではないようである。)

門を入って、右側にお稲荷さんを見て、
玉砂利を踏んで、紺に尾花と染め抜いた
大きな暖簾を分けて、戸を開け、玄関に入る。

出てきたお姐さんに、1人、と、指を出す。

埋まり具合は、6〜7割というところ。
12月のウイークデーは、こんなところであろう。

右奥の壁際に案内される。

コートと鞄を両脇に置いて、上着も脱ぎ、
どっかりと胡坐をかく。

このどっかり座っている過程で、一日の疲れが抜けていき、
これから尾花のうなぎが食える、という
ワクワクした気分が湧いてきて、よいもの、である。

今日は、ビールにしようか。
それから、、つまみは、、、?
もう冬だし、相も変わらず、鯉の洗いでもなかろう、
焼鳥にしようか。
それから、うな重。

エビスビールがきて、じっくりと、待つ。
読むのは、今日は、新聞ではなく、文庫本。
(まだ、『駒形どぜう』。)

煙草を吸いに、玄関の外まで、立つ。

戻ってくると、焼鳥ができていた。


どこもそうだが、うなぎやの焼鳥は、たっぷりと
肉を刺しており、焼け具合もよく、うまい。
(やはり、肝焼きのような要領なのであろうか。)

食べながら、ゆっくりと、呑む。

ビールが終わる頃、待ちに待った、お重がくる。

ふたを開け、山椒をふる。

毎度書いているが、この瞬間もたまらなく、うれしい。
うなぎの蒲焼というものが、嫌いな方には、
まったく理解ができなかろうが、私には、無上の悦(よろこ)び、
で、ある。
この世に生まれてきて、東京に育ち、今も働き、住み暮らしている、
悦び、と、いってもよい。


うまい、うまい。
夢中でかっこむ。

食べ終わり、お茶を飲み、荷物をまとめて、
立つ。

玄関で、下足札を渡し、帳場で勘定をする。


うまかった。

満足、で、ある。



03-3801-4670
荒川区南千住5丁目33−1





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