断腸亭料理日記2010

手土産と、、、日本橋・吉野鮨 その1

5月20日(木)夜

明日、朝直行で、とあるところへいくのだが、
手土産を持っていかなければ、ならない。
むろん仕事、で、ある。

 どうでもよいのだが、、。

 仕事で手土産=菓子折、を持っていく、というのは、
 企業などにお勤めの皆さんはよくあることであろうか。

 初対面で、顧客、特に末端生活者など、なにかお詫びにいく、
 というときは、まあ、あろう。しかし、それ以外で、今時、
 仕事で訪問先に手土産、というのは、そう多くはないのでは
 なかろうか。

 しかし、それでも、ま、ま、私なども持っていくことが
 あるのだが、これ、少し聞いてみると、企業や業界によって、
 微妙に異なっているようである。

 現代の日本の企業、あるいは、仕事で、どういうときに、
 どういう人に、いくらぐらいのものを、持っていくのか
 調べてみると、おもしろいかも知れぬ。

 手土産というようなものは、文化人類学、などでは、
 お互いの関係性の中での、象徴的な意味での『贈与』というような
 言い方の概念になるのだと思う。つまり、実質的なモノではなく、
 互いの関係性に基づいて、贈る、という。
 この、実質ではない、というところに多分に『文化的』なものが
 含まれているのである。

 ちなみに、弊社では、大学などの先生に初めて会いに行くとき
 あるいは、普段世話になっている外注、外部の協力工場などに

 挨拶に行くとき、などで、金額は3000円以内。
 (金額は、税金の関係で決まっていそうである。)

 あるいは。

 手土産をどこで、なにを買うのか。
 これも意外に、考えてしまう。
 持っていく先が地方の場合は、意外に簡単。
 東京らしいもの、で、済んでしまう。
 まあ、東京バナナ、でもよいのだが、私は、最近は
 羽田でも売っているので、資生堂パーラーの
 ものを買うことに決めている。
 だが、問題は持っていく先が東京、首都圏の場合。

 まさか、東京バナナ、はありえないし、
 コンビニやKIOSKのようなところに売っている
 どこのものかわからぬような、おかき、の、
 詰め合わせ、と、いうのも、とりあえず買いました感、
 丸出しなので、気が引ける。では、会社の近所の和菓子屋?、
 それもどうか。
 で、結局、デパートでなにか、みつくろうことにした、
 のであった。

そんなことで、帰宅途中、デパートに寄る。
帰り道、なので、本来なら、上野広小路の
松坂屋、で、よいのだが、ちょいと、日本橋に
いってみたくなった。

ついでといって、どちらがついでだか、わからぬが、
日本橋高島屋裏の老舗鮨や、吉野鮨へいってみようかと、
考えた、のである。

日本橋の吉野鮨というのは、そこそこ、
有名なところであろう。
(ここ、私は、実は、場所も近く、似た名前なので
京橋与志乃と、混同していた。すきやばし次郎、浅草松波などの
超有名系列の源流、京橋与志乃と、日本橋吉野鮨とは別の店、で、ある。
ひょっとすると、なんらか、関係はあるのかもしれぬが、
今は、私には情報はない。)

日本橋吉野鮨は、創業は明治12年といい、東京の鮨やとすれば、
そうとうな老舗といってよかろう。
また、日本橋で、且つ老舗であれば、高そうな印象もあるが、
高島屋の買い物帰りのおば様も利用する、そこそこ
リーズナブルな店でもあるという。
で、ちょいと、いってみようか、と、
思い付いた、のであった。

市ケ谷駅からJRに乗り、一駅飯田橋までいって、
東西線に乗り換えて、日本橋まで。
(雨、で、ある。)

高島屋の地下で、そこそこ珍しげな洋菓子の
詰め合わせを買い、さっそく、裏の吉野鮨へ。

裏といっても、別館との間の路地、を、京橋側に
少し行った右側。


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店の前まできた。
7時前、予約はしてこなかったのだが、入れるだろうか。

ちょっと不安に思いながら、暖簾をかき分け、
開けて入ると、テーブル席やら、カウンターも
ほぼ満席。

左側、カウンターの向こう側のツケ場になん人かいる職人に、
1人、と指を出す。

と、運よく、カウンターの真ん中にあきがあった。
眼鏡をかけて、目のギョロッとした、方が、
その目の前のあいているところを指示す。

持っていた、今買った手土産、鞄、傘、を若い衆に
渡し、座る。

雨なのだが、蒸し暑かった。
上着を脱いで、カウンターの下の棚へたたんで入れ、
扇子でパタパタ。
出てきたおしぼりで、汗をぬぐう。

瓶ビール、エビスをもらう。

置かれている、割り箸の箸袋。
見てみると、店名の他に、言葉が書かれている。
「たかがすし屋、されど鮨屋」。
、、どういう意味であるか、これだけではわかりかねるが
いずれ、店からの、メッセージ、なのであろう。

さて。

一息ついて、、、。
親方が、、、

なんにします?

、、少し、つまもうか。

光りもんを少し、切ってもらえますか?

と、頼む。

ここのカウンターの造りは、いわゆるツケ台はなく、
カウンターから、いきなり、ガラスの冷蔵ケース、
で、ある。

しばらく待つと、ゲタに載って、出てきた。

小肌、鯖、春子の三品。

出した親方は、無言、で、ある。
ちょっと、怖そう、か。

光りもの、つまみで、と、いって、
この三品、特に、春子が出てくるというのは、
さすが、明治からある老舗、というところ。

春子、というのは、この前いった、新橋のしみづ
でも出るが、小鯛を〆たもの、で、ある。

今、東京の鮨やでも江戸前仕事を標榜しているところ
以外では、お目にかかれないねた、と、いってよろしかろう。

鯛であるが、鮨やでは、白身ではなく、光りものに分類される。
(小鯛の酢漬けは、江戸前鮨以外でも、若狭、福井県の
小浜では笹漬といって、木の樽入のものが名物、で、ある。
池波先生もこれはお好きであったと記憶している。)
むろん、私も好物、で、ある。

そして、鯖。
これは、べら棒、に、うまい。
〆具合は、浅め、で、あろう。
切り口の半分ほどは、生で、ある。
この時期に、と思うほど、実に脂がのっている。

小肌。
これは、青い柚子の皮を細かく切ったものが
まぶされている。
小ぶりで、薄めで、うまい。

つまみながら、ツケ台の向う側を観察してみる。

くの字に曲がったカウンターの角、一番入口に
近いところには、私の目の前の親方によく似た、
眼鏡をかけた、若めの方。この方は、息子さんであろう。
この位置に、息子さんがいる、ということは、
一応は親方は譲って、息子さんが店主格なのであろう。
そして、その向かって右隣が、私の前の親方。
その隣が、少し年輩の職人の方。助手といった格か。
さらにその右に職人が二人。
そのうちの一人は、若親方に似ているので、
弟さんかもしれぬ。外(そと)は、二人から三人。
弟さんの方は、外も兼ねているよう。
時折、私の前の大親方から、その弟さんへ注意が
飛んでいる。(やっぱり怖そう?)

ゆっくりと、ビールを呑みながら、大根やら、
茗荷やらのツマも、全部つまんでしまう。

よし、にぎってもらおうか。


と、いったところで、長くなった。
つづきは、また明日。



ぐるなび

東京都中央区日本橋3-8-11
03-3274-3001




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