断腸亭料理日記2011

池波正太郎と下町歩き1月 その1

1月15日(土)

さて。

年が明けて、最初の『池波正太郎と下町歩き』で、ある。

昨年4月から始まって、10回目になる。
もうそんなにやってきたのだと、我ながら思う。
あっという間。

毎度書いている通り、この『講座』をやらせていただいている、
成果は、私自身の多大な勉強になっていること、が、あるのだが、
直接、きていただいている方からお話しを聞くと、まわっている
東京のそれぞれの「町」が、どんな空気感なのか、が、
よくわかった、という声があった。

この断腸亭料理日記を書きながら、
最近、伝えたいと、考えていることは、ズバリ、
このそれぞれの町が持っている“空気感”である、
と考えるようになっている。

江戸から含め300年以上の間、大都会であった東京。
その長い時間の中で、人が集中して住み、泣き、笑い、
怒り、食べ、寛ぎ、働いてきた。

そして、それぞれの町が、微妙に、あるいは、
大幅に、違う個性を持った歴史を積み重ねてきた。

むろん、よい歴史あれば、忘れたい歴史もある。
しかし、よいものも、わるいものも含めて、この積み重ねてきた、
歴史そのものが、その町の“空気感”なのである。
つまり、その町の持っている空気感は、
300年以上に渡る、江戸・東京の住人達が
積み重ねてきた生活の歴史そのものなのである。

それぞれの町が、みんな、違う歴史を持ち、
違う空気感を、今まで連綿と持ってきた。

このそれぞれの町の空気感の集合体が、
東京という都市である。
いわば、これが東京のアイデンティティーである。

しかし、この違いは、バブル以降のここ10年、
15年の間に、なくなりつつあるのも事実ではある。

なくなってほしくないし、なくしてはいけない、
と、私は思う。

だから、少しでも多くの方に伝えたいと考えるのである。

しかし、努力はしているが、文章だけでは、
やはり伝えきれていない。

あたりまえだが、空気感などというものは、
感じるものであり、実地に歩くことが、最もよいに
決まっている。

これを、ご一緒に歩き、お話しし、ある程度、
実感していただいた、という言葉を聞かせていただけたのは、
書く、だけではできないことが、できたということ。
これは、この『講座』をやらせていただいた、大きな成果と
感じているのである。

まあ、そんなこんな。

で、今回は、神田須田町、あんこう鍋のいせ源と、内神田。

いせ源は、池波レシピ、でも、むろんあるが、
私自身が、年に一度は、真冬に行きたい店であり、
皆さんにご案内したい店。

内神田は、日本橋、京橋などと並んで、
江戸開府当時からあった、町人が住む、街。

ここを外して、東京下町歩きは、成立しない、
と、いってよい町であろう。

と、いうことで、『池波正太郎と下町歩き・内神田』
スタート、で、ある。

歩くコースはこんなところ。


より大きな地図で 断腸亭の池波正太郎と下町歩き1月 内神田 を表示

今までの中では、比較的狭い範囲、で、あるが、
密度は濃い。

11時、JR神田駅南口、集合。

私は、10時前、着物に着替えはじめ、
例の、鳶(とんび)のコートを着て、
10時15分、家を出る。

曇り空。

そうとうに、寒い。

雨や、雪にならなくてよかったのだが、
この寒さは、町歩きにはそうとうきつそうである。

稲荷町駅まで歩き、銀座線に乗る。

上野、上野広小路、末広町、神田。

10分もかからない。

銀座線からJRの神田駅に出てくると、
北口。

東側に一度出て、外から、南口まで回る。

寒さのせいか、皆さん、いつもより、集まるのが
ゆっくり。

それでも、11時には、全員集合。

資料と地図をお渡しし、スタート。

南口に集まったのだが、まずは、西口側に出る。


出たすぐ右側。


JR高架の古いレンガの壁。

毎度見ているが、新橋から、上野まで続く、
明治末に開業当時からあるもの、だとは思うのだが、
神田駅だけは、他の駅とは少し違う歴史がある。

例えば、新橋、旧烏森停車場は、1909年(明治42年)の開業。
神田駅は、それから少し遅れた、1919年(大正8年)。

そして、当初は、(今いう)山手線の駅ではなく、
中央本線の駅として、万世橋、東京間の開業に伴って
開業したのである

山手線が止まるようになったのは1925年(大正14年)。
東北本線が秋葉原まで開業したタイミングだったようである。

そして、ついでに、銀座線の神田駅も。

銀座線神田駅は1931年(昭和6年)開業。
当時は、東京地下鉄道という名前の会社であった。

ここまで説明をし、歩き始める。


つづく。






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