断腸亭料理日記2011

いいだこ桜煮

3月26日(土)

さて。

土曜日。
昼前から、内儀(かみ)さんは
遅くなるといって、出かけていった。

今週は、急いでしなければならぬことはなく、
4月の『講座』の資料作り。

(まだ、空きもあるようなので、お気軽にどうぞ!。)

4月は基本は、昨年と同様のつもり。

(昨年の4月は、簡単に1回で終わっている。
この当時は、この日記と『講座』とは分けようと、
考えていたためである。)

たまたま、私の住んでいるところ、ではあるが、
池波先生の生まれ育たれた浅草永住町、池波正太郎記念館、
それから菩提寺、というコースは『講座』の初回とすれば、
外せなかろう、ということである。

先ほど、資料作り、と、書いたが、4月は、昨年のデータを消してしまい、
作り直している、のではある。

ともあれ。

朝から、3時すぎまで、この作業をし、まだ未完だが、
今日は終了。

で、いいだこ、で、ある。

これは、地震のあと、吉池で、子持ち、と、いわれて
買ってきたのだが、時間がなく、
冷凍庫に放り込んでおいたのであった。

二杯。

これを、桜煮(レシピ)にしようと、と、いうのである。
たこ、というのは、酢だこ、あるいは、最近は生、
というのもあるが、やはり、茹でただけが、
最も一般的な食べ方であろう。

鮨やにあるたこは、この、ただ茹でただけ、
を使っているところもあるが、本来の江戸前仕事
では、もう少し、違うことをしていたようである。

よくいわれるの、茶ぶり、といって、熱い番茶で
霜降りにする、というもの。

この前の日本橋の吉野鮨、や、新橋のしみづ、
神田鶴八、などのたこは、表面の赤い部分が、
ちょっと、ホロッとしており、香りもよく、うまい。

ただ茹でただけではなく、この茶ぶり、を、
しているのだと思う。

この数年、鶴八、しみづ、の系統の鮨やにいくようになり、
あらためて、江戸前仕事のうまさ、を、見直しものは
いくつもあるが、そのうちの一つが、この、たこ、で、ある。

明らかに、こちらの方が、うまい。

なぜ、この仕事をしなくなったのか。

河岸には、我々が魚やで買う茹でたものも売られており、
生を自分で茹でるのではなく、それを買ってきて切るだけ、
という鮨やも多いという。

ひょっとすると江戸前鮨でも、以前から、
ただ茹でただけをにぎるものも、あったのかもしれない。

ともかくも、まったく味が違う。

また、以前に、日本橋弁松の弁当を食べたことがある。
日本橋弁松というのは、歴史を江戸にさかのぼり、
折詰弁当の元祖、と、いう。

ここの弁当には、たこの桜煮、というのが入っている。
この桜煮は、味付けとしては、そうとうに甘い、
のであるが、やはり、さっきの鮨やの江戸前仕事と同じ
ホロッとした食感がある。

ただ茹でただけの、たこと、
この、ホロッ、が、あるのと、どちらがよいのか、
うまいのか。むろん、人それぞれ、好みだろうし、
茹でただけのも、ぶつに切ってワサビで食うのも、
よいのだが、ホロッ、は、新鮮だったのである。

と、いったところで、桜煮を作る。

詳細は、上のリンクをご参照いただくとして、
けっこう、手間はかかる。

塩でもんで、ヌメリを取り、洗う。
頭を裏返して、墨袋を破裂させないように慎重に取り外し
戻す。(これは無事にクリア。破裂させてしまうと、
生ぐさくなるし、吸盤に墨が入り、入ったものはなかなか
きれいにならず、見た目にもわるい。)
この時に、気が付いたのだが、子持ち、といっていたが、
子、らしきものはあるのだが、ほんのわずか。

鰹削り節で出汁を取り、薄口しょうゆで味付け。
同時に、番茶を薬缶に入れ煮出し、例の茶ぶり。

これを味を付けた出汁に入れ、器ごと、20分蒸す。

できた。


いいだこ、桜煮。

香りもよし。

食感も味も格別。

うまいもん、で、ある。







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