断腸亭料理日記2012

初鰹 その2〜煮穴子 その1

4月21日(土)

引き続き、土曜日。

自分でさばいて、切った初鰹の刺身。


ビールを開けて、食べる。

ふむふむ、なかなかうまいのではなかろうか。

アメ横の魚やが自慢をするだけの事はある。
むろん、鮨やで食べるレベルとは比較にならないが、
さっぱりとした旨みで、初鰹らしいおいしさ、で、ある。

鰹も、ものがわるいと、身の色が白っ茶けていて、
味はスカスカ、なんということも過去あった。
あるいは、スーパーで売っているものにあったりするが、
妙に、血生ぐさいもの。

まあ、そんなこともなく、十二分に水準以上のもの
で、あろう。

さて。

その後、遅い時間。

鰹と一緒に買ってきた、穴子を煮ようと、
思い立つ。
むろん、鮨やで出てくる、煮穴子、で、ある。

袋から出して、数えてみると、25匹程度。


大量、で、ある。
よく洗って、大きいのは、5匹ほど、明日、
天ぷらにしようと、分けておく。

毎度書いているが、家には鮨やにある、甘いたれ、
が、ある。

鮨やの符丁(ふちょう)では、ツメ、という、あれ。

余談だが、今、この符丁を、客も使うようになっている。
これは、やめたほうがよい。
池波先生の教え、でもある。

男の作法 (新潮文庫)

符丁というものは、本来、客にわからないように、
という意味もあり、わざと使っていることがある。

特に、おあいそ。

これなど、お客が使うのは、愚の骨頂。

おあいそは、店がするから、おあいそ、なのである。
客が、おあいそしてくれ、は、ヘン、で、ある。

お勘定してください、で、よい。

いい年をしたおじさんがご機嫌で使っているのをよく見かけるが、
お里が知れる、というのか、飲食の場でのマナー、
それこそ、男の作法、のようなものを、学んでこなかったのである。

あがり、ガリ、などもそう。
お茶と、生姜、で、よい。

今、女の子でも1カン、2カンといったりするが、
これも、一つ、二つというべきである。

注意して聞いていると、ちゃんとした店の鮨職人は
お客には、符丁を使わないことの方が多いはずである。
(使う人がいれば、それは、ダメ。)

従って、ツメではなく、甘いたれ。
通ぶって、ニキリ、などといわなくてよい。
知っていても、使うものではないのである。

閑話休題。

まあ、そんなことで、この文章でも私は、できるだけ
鮨やの符丁は使わないことにしている。

そこで、穴子の煮汁を煮詰めた、甘いたれ。

穴子を煮るときには、これをもう一度鍋に戻し、
伸ばして、穴子を煮る。
(今、そんな古いものなど使いません、といっている
有名鮨職人もあるよう。)

冷蔵庫に入れてあるので、固まっている。
軽くレンジで温めて、鍋に入れる。

ここに、水、酒を加え、穴子を入れる。
大量なので、大鍋、で、ある。


あくをすくいながら、煮る。

煮立ってきたら、アルミホイルで落としぶた。

煮穴子は、柔らかくなるまで煮る。
まあ、今の煮魚は、こうしないのだが、これは
江戸前仕事に習った方が、うまいであろう。


溶けるほどまで、、と、思ったが
薄めてはあるが、煮汁が濃いので、濃い味が
染み込みはじめた。

濃すぎて、食べられないものになっては
元も子もないので、このあたりで、やめる。

プロは竹の大きなざるに入れて煮たりするが、
そんなものはないので、杓文字で崩さぬように、
そ〜っと、煮汁からあげる。


鮨やを始めるんですか?、という量である。

煮汁の方は、あく取りで、よく濾(こ)して
再び“甘いたれ”に、戻すために煮詰める。

量が多くなっているので、早くに詰まるよう、
砂糖を追加する。

煮あがった穴子は、温かいうちに、食べよう。
添え物にきゅうりを切る。


甘いたれは、今、煮詰めている途中なので、
かけられない。

きゅうりは、皮だけをかつらむきし、千切り。

かつらむき、というのは、大根などでよくやるが
面に対して包丁を寝かして刃を入れ、紙のように薄く
長くむいていく、あれ、で、ある。
鮨職人がきゅうりでこれをしているのを見ていて、
真似をしているのである。
こうすると千切りが簡単にきれいにできる。

斜めに小口切りにしても千切りにはなるが、
これでは、きゅうり中央のわた、の、部分が入ってしまい、
イマイチなのである。

内儀(かみ)さんとともに、ビールをあけて、
つまむ。


この項つづく。






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