断腸亭料理日記2012

炭とたどんと、かつ丼と その1

昨日、1/30配信予定の本号がちょいとしたトラブルで
配信できませんでした。お詫び申し上げます。

書いてはいたのですが、データが消えてしまっていたのです。
遅い時間になり、書き直す気力もなく、寝てしまった、
というわけです。
本日二日分とも思いましたが、読む方もたいへんだ、という
内儀(かみ)さんの意見で、本日1号のみの配信といたします。

断腸亭

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

1月28日(土)

インフルエンザやら風邪が流行っている。
寒いのと、関東地方は、乾燥のせいであろう。
私も、昨日仕事を休んでしまった。
私の場合は、鼻からなのだが、皆様もお気を付けを。

そんなことで、土曜。

昼すぎ、少しよくなったので、買い物に出ることにする。

なにかといえば、一つは炭。

旧臘(きゅうろう)、12月の初め、本格的に寒くなった頃に
買った炭がなくなった。
火鉢に火を入れるのは、年末年始の休み中と、
通常は土日のみなのだが、一ヶ月とちょっとで使い切った、
ということである。

買い物のもう一つは、かつ丼の材料。

カツ、ばかり食べているようだが、
ここのところ食べていなかったかつ丼が食べたくなり、
少し、元気をつけようかと、カツを揚げるところから
作ろうと、思い立った。

しかし、相変わらず寒い。
もこもこと着込んで、自転車で出る。

ところで、炭、というのは、どこに売っているのか、
皆さんはご存知であろうか。

いや、その前に、炭を使う人はどのくらい
おられようか。

私のように、火鉢用途、という方は、ほとんど
皆無、ではあろう。

使っているのは、おそらく、アウトドア、
バーベキューなどをやられる方であろう。
であるので、炭は都心では、東急ハンズのようなところ、
郊外では、ホームセンターに売っている。

また、ちょっと特殊だが、茶の湯をやられる方なども、
専用の炭を使われていると思われる。

ともあれ。

昔、炭というのは、電気ガスのない時代、
煮炊きや暖房用途に使われ、どの家庭でも
必要なものであった。

このため、東京下町などでは、炭やというのは、
一町に一軒はあったのであろう。
その後、炭や、というよりは、燃料店と呼ばれるようになり、
石油を扱うようになったり、または、ガソリンスタンドになった
というような例もあったのかもしれぬ。

私の住む元浅草には、同町内に少し前まで炭や一軒あり、
ここで買っていたのだが、閉店。(ここは、ほぼ炭のみを置いていたので、
燃料店というよりは、炭や、といってよかろう。)

その後、近所は近所だが、浅草通りを北へ渡った
松が谷に一軒見つけ、以来、そこで買っている。

これは斉藤商店という。

業務用の炭などを広く扱っているような店である。

店の前に自転車をとめ、入ると、この店のご主人が出てきた。

ご主人が出てくるのは珍しい。
いつもは、お内儀さんか、息子さんである。

このご主人、私がこの店に初めてきたときにも
出てきて、話好きか、炭が好きなのか、いろいろと
話をしてくれた。

出てきたご主人に、そこに置いてある、
いつも買っている、岩手の切炭6kgを指差し、
これを一袋ください、という。

すると、ご主人、

たどん、って、使ったことあります?

と、聞く。

いや、使ったことは、ないです、と、答える。


!たどん。

むろん、知識としては知ってはいる。

皆さんはご存知であろうか、炭団(たどん)。

圓朝作の落語などにもあるが、江戸の頃、
塩原太助が発明をしたともいう。

余談だが、誰もご存知ないと思うので、
ちょっとだけ塩原太助のこと。

江戸時代、「本所に過ぎたるものが二つあり、津軽屋敷に炭屋塩原」
などとも謳われた、まあ、立志伝中の人物。

戦前は教科書にも出てきていたのいうので、
誰でも知っている人物であったのだろう。

群馬の田舎から出てきて、一代で大きな店を作り上げ、
また、慈善活動にも熱心であったという。
(まあ、よくある話、ではある。)

今、墨田区、両国の南、京葉道路が走っており、
その下に竪川という川(堀)がある。
この川が隅田川に合流する少し手前に塩原橋という橋がある。
この近所、本所相生町にその塩原太助の炭やが、あった
ので、橋の名前にした、という。

池波正太郎と下町歩き・本所編

閑話休題。

炭は使ってみるとわかるのだが、炭の袋の中に破片や、
粉が随分と出る。この残り物の粉につなぎを入れて丸く固めたものが
たどん、なのである。
(まあ『もったいない精神』の塊のようなものである。)

たどんというのは、売られているものでもあったが、
家庭でも作っているものでもあったという。

こういうものであることは、知ってはいた。
また、練炭やら、豆炭は、かろうじて、子供の頃
家でも使っていた。

しかし、たどん、そのものは、見たことすらなかった。
へ〜、今でも作っているんだ〜、という感想。

これ、と、ご主人に示されて、
なるほど、店には、炭と同じように紙の袋に入れて
売られている。

ご主人は、火持ちがいいよ、少しあげるから使ってみて、と、
2〜3個ビニールの袋に入れて、渡してくれた。

炭の勘定を払い、礼をいって、出る。




家へ帰って、出してみた、炭団(たどん)。
直径7〜8cmはあろうか、思いがけず、でかい。
ちょっとみ、爆弾のよう。






今日はここまで、つづきはまた明日。






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