断腸亭料理日記2012

2012年 断腸亭の年越し その3

断腸亭の年越し、その3。

昨日は、氏神様である鳥越神社へ初詣へいって、
寝るまで。

さて、元旦。

元日の朝。

恥ずかしい話だが、
以前に元旦を元日の意味で間違って使い、
読者の方からご指摘を受けたことがあった。
“旦”という字は、朝、夜明けという意味で、
元旦だけで元日の朝になる。

ともあれ。

起きたのは、9時頃。

起きて先ずするのは、炭を熾(おこ)すこと。

火鉢で、雑煮の餅を焼くため。

寒い。

この冬は、例年になく寒いような気がする。

平均気温ではどうなのであろうか。
年齢(とし)のせいかもしれぬ。

あまり、運動もしていないので、
身体が鈍(なま)っているのかもしれぬ。

わかぬが、今朝は寒い。

炭を火熾しに二つ入れ、ガスにかける。

三〜四分。
ある程度、熾きてきたら火鉢に移す。

餅網を五徳の上に載せ、餅を載せる。
東京なので、むろん、四角い切り餅。

子供の頃などは、近所の米やで、一枚一升であったか、
大きなのし餅で買って、家で切って使っていた。
よく私などは、母親に包丁で切らされたものである。
買ったその日は柔らかく、堅くなった翌日以降に
切る。

むろん今は、個包装。
便利なもの、で、ある。


家の雑煮は鶏がらの出汁にしょうゆの澄んだもの。

入れるものは鶏肉、里芋、小松菜、三つ葉。
三つ葉以外は、大晦日までに茹でて冷蔵庫に入れておく。
元旦、出汁にしょうゆを入れ、具を加え、熱くし、
焼いた餅を入れて、雑煮になる。

雑煮というのは、民俗学的にいえば、
儀礼食ということになる。

餅だけでも稲作民の日本人にとっては欠くことのできない
儀礼食である。

稲自身も神様で、そこから作った餅にも神様が
宿っており、正月の朝、食べることで、その神様、
=自然の化身、精気といってよいようなもの、
を身体に取り込むという意味がある。

そうそう。
元日の朝は、地域にもよるが、これに類する習慣は多い。

若松、若水なんという言葉を聞いたことが
あるかもしれぬ。

めでためでたの若松様よ、の若松。

元日の朝、山から松を切り、水を汲む。
これが若松と若水。

これらも年の初めに、自然の力を取り込む、
という意味がある。

若松は現代では玄関に飾る門松になっている。
若水は、、水道になって、滅んだということであろう。

我々日本人は、古来から自然とともに
生きてきた、ということである。

そんなことで、里芋に鶏肉、小松菜の入った、雑煮。


私の親父などは雑煮が大好物であったが、
子供の頃は、たいしてうまいとも思わなかった。

しかし、成人し、結婚をし、家庭を持つと、
やはり、雑煮がなければ、正月にはならない、
と、思うようになった。

家それぞれに決まった雑煮があり、
それが親から子へ伝えられていく。
様々な、民俗的な習慣がなくなり、
我々はどこからきたのか、我々日本人は
なんであるか、わからなくなって久しい。

だが、それでも雑煮はやはりほとんどの
日本人が今でも家庭で食べているだろう。
きっと、未来にも雑煮は伝えられていくような
気がする。

稲を作らない我々町に住んでいる者どもも
やはり、日本の自然の中で稲作をしていた記憶からは
離れられないのである。

また、もう一つ。

ほとんどの日本人にとっての正月は、今でもそうだと思うが
単なる年の替り目ということだけではなく、
重い意味がある。

年があらたまることは、民俗学的には
死と再生、と、考えられている。

つまり、年の暮に一度死んで、新年になると、
新たに生まれかわる。

今でもこの考え方が我々日本人の基底にあって、
正月を大きな節目として捉えている。

そう。
我々は、生まれかわったのである。

様々なことがあった、平成二三年は終わった。

生まれかわった平成二四年。
よい年であると、信じよう。

(ついでに、未曽有の国難に遭った平成二三年、この節目で、
改元でもすればよかったのに、、、。)







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