断腸亭料理日記2012

真夏の京都〜清水寺成就院

その1

7月25日(水)午後

滋賀出張。

滋賀というと、行き帰り京都経由の新幹線。

帰り、時間があったので、せっかくなので、
京都に寄ってみようか。

京都でもどこ、というあてもない。

JRのCM『そうだ、京都行こう。』
そのまんまだが、スマホで調べてみる。

以前に同じように出張の帰りに東山を
ブラブラ歩いていたら、青蓮院門跡のご開帳と、
見事な庭を見ることができた。

そこで、今だけ、の、特別公開を調べてみる。

清水寺に、庭が名高い成就院というところがあり、
これが特別公開をしているのを見つけた。
これはどうだろうか。

庭、と、いうこと、で、ある。

東京にいると、庭といえば、六義園だったり、
浜離宮だったり、広い大名庭園ばかりで
観にいっても間が持たない、というのか、
どこでなにをみたらよいのか、ちっともわからない。

これに対して、青蓮院門跡の庭はコンパクト。
少し歩いても、座って観ても、見えるものすべてが
計算し尽くして設計されている。

箱庭の美学というのであろうか。
実によい。
作者とすれば、小堀遠州なんというのがよく聞く名前。
安土桃山から江戸初期に完成されたもののようだが
この時代のものがどうも、よい。

京都にはこの頃のものが多く、
時間があれば、これら京都中の有名な庭を
すべて観て回りたいくらいである。

清水寺というのは、それこそ中高生の修学旅行以来
行っていない。どう行けば最短なのか、調べてみると
適当な最寄の駅はなく、一番近いのが、地下鉄の東山。

東海道線を山科で降りて地下鉄に乗り換え、
東山で降りる。

灼熱の京都。

三条通から、左に曲がり、
古川町商店街というアーケードのある小路の商店街を抜ける。

野菜だったり、お惣菜だったり、
小さいが、京都らしい小ぎれいな商店街。

真っ直ぐ突き抜けると、川に突き当たる。
石垣のある川で、幅10m程度。

この暑さ、である。
お母さんがついて、小学生らしい子供3〜4人が
川へ入って、水遊びをしている。

この川はなに?。

調べると、白河。

白河はこのあと祇園を抜けて、鴨川へ注いでいる。
なるほど。

こんな町中の川で、水遊びができる京都、
というのは、やはり、うらやましい。

目の前に石造りのとても細い橋がある。
手すりもなにもなく、ただ石を向こう岸に渡しただけのもの。
幅は50cmちょっと、で、あろうか。
まったく細い。

こんな橋だが、先に若い女性が渡っていく。
普通に使われている橋、のようである。

案内板があり、読んでみると、名前は一本橋、
というらしい。

江戸の頃からある橋のようで、比叡山の修行僧が山に籠っての
千日修行を終えて、初めて京の町に入る際に、この橋を
渡った、という由来があるよう。

しかし、暑い。

水には入れる子供が羨ましい。

この白河の向こう側は塀で、既にそこは、知恩院の一郭。
関係する塔頭(たっちゅう)やら、大学もあるよう。

川に面して、古門という表示がある山門がある。
これを入ると、道の両側、塀ばかり。歩くには、暑そう。
もう一度、白河を渡り返し、一度、大きな通(東大路通)へ出て
南に下る。

このまま南下して、清水寺の参道まで
行ってもよいのだが、車の通る通りはそうとうに暑い。
できれば、東山の中、円山公園を抜けるのがよいだろう。

次を左(東)へ曲がる。
ここにも知恩院の門があり、これは新門というよう。
これが今の知恩院の正規の参道なのであろう。

入ると、やはり両側、知恩院関係の施設で、
街路樹はあるが、結局、アスファルトの暑くて、ゆるい坂道。

知恩院の巨大な国宝、三門前まできて、右に曲がる。

また、門を抜けて、円山公園。

すぐ右側に、いもぼう平野屋本店、というのがある。

ちょっと風雅な、かといって、そう気取ってもいないような、
茶店というのか、料理屋、というのか、そんな趣の家。

前にこの家の前を通った時にも、なんだか気になっていた。

創業は江戸の享保の頃、と、いう。
いもぼう、というのは料理の名前。
海老芋(京野菜の里芋)と棒鱈を炊いたもの。

この暑いのに、いもぼう、でもなかろう、、。
門の前に品書きが出ており、見てみると、氷がある。

もうだめだ。
ここまでくるまでに、汗まみれ。

熱中症間近。(いやほんとに。)

休もう。

入ると、ウイークデーのこんな時間、
さすがにお客さんはいない。

お姐さんと、番頭さん(?)が、あわてて出迎える。

うなぎの寝床のような細長い店の奥、お姐さんが、
冷房の効いた部屋へ案内してくれる。

冷えた座敷に一人で上がる。


生き返る。

襖(ふすま)は百人一首であろうか、
三十六歌仙であろうか、絵と歌の描かれたものが
貼り交ぜになっている。

宇治金時を頼む。

お客もいなかったせいか、少し時間はかかったが、きた。


なぜだか、あんこが別盛り。

かかっているのは抹茶のシロップなのか、これだけでも甘い。

かき氷など久しぶりだが、冷たい上に、上品な甘さで、
心地よい。

汗も引いていく。

食べ終わり、立って玄関へ。
勘定をして、門の内側で、一服。


吸い終わって、出る。

後ろから、若旦那か番頭さんか、先の男性と
お姐さんの、おおきにありがとうございます〜、の声。

たった氷一杯だが、丁寧なもの、で、ある。

なにか、また暑いところを歩く元気が出てきた。




つづく。








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