断腸亭料理日記2013

断腸亭パリへいく。 その7

4月30日(火)

なん回かトイレに起きたぐらいで、結局、
翌朝まで眠った。

むろんなにも食べず、水だけで。

今日はヴェルサイユへ行く予定であった。

起きたら、なんたる僥倖か、奇跡的に熱は下がっていた。

過去には、モロッコへ行ってあたったことはあった。
まあ、食い意地が張っている者はこういうことはあるもの。
甘受すべきであろう。

多少フラフラするが、いけそう、で、ある。

朝飯は、食欲もないので、オレンジジュースにカフェオレと
クロワッサン一つだけ食べて、出る。

今日は昨日と打って変わって、雨模様の
寒空に逆戻り。

ヴェルサイユ宮殿はやはり今回のお上りさん的パリ訪問では
行っておかなければなるまい。

ヴェルサイユまではいくつか行き方があるようだが、
オペラ座付近からは、Saint-Lazare(サン・ラザール)駅から
一時間もかからないよう。


より大きな地図で 断腸亭料理日記パリへ行く(6) を表示

歩いてサン・ラザール駅へ向かう。


サン・ラザールはパリのいくつかある中長距離列車の発着する
ターミナル駅のうちの一つ。

かの新幹線TGVなどは出ていないので、
ターミナルの中では地味だそうな。

自動券売機はよくわからないので、窓口に並んで買う。

目的駅は、Versailles - Rive Droite(ヴェルサイユ-リヴ・ドロワ)駅。
この駅行きでここが終着のよう。

窓口はむろん英語は通じるし、その上親切に
出発ホームも教えてくれて、「5minutes!」と。

列車まで走る。

平日の朝の下り、列車はガラガラ。

乗ってほどなく、La Defense(ラ・デファンス)という
駅に着く。

ここはパリの副都心のようなところのよう。
オフィス街で、高層ビルが固まっている。
(内儀(かみ)さんが仕事できたことがあり、
教えてくれた。)

パリの中心部には景観上の規制があり、
高いビルは建てられない。
それでこういう副都心を作ったのだという。

上の地図をご覧いただきたい。

ここには、La Grande Arche、日本語で
新凱旋門といっている巨大な門の形をした
ビルがある。

(うまい写真が撮れなかったので、ウィキペディアから拝借。
シャルル・ド・ゴール広場から撮ったラ・デファンスと新凱旋門。)

ニュースにもなって私も知っていたし、ご存知の方も多いかもしれぬが、
これはフランス革命200周年を記念して1989年に建てられた。

そして、さらにご存知かもしれぬが、
このラ・デフォンスの新凱旋門は、シャンゼリゼ(シャルル・ド・ゴール広場)
にある凱旋門と、さらにもう一つ、ルーブルの前にある凱旋門と
一直線になっている。

歴史的にパリは重要なものをこの直線状に並べてきたという。
それで新凱旋門もこのラインの延長上に建てたのだ、という。
実際に上の地図を見ていただければ、納得が
いかれよう。

ラ・デフォンスを通過し、これを思い出したのである。

そして、実際にこの場に来て、このことについて、改めて
考えがわいてきた。

なにかといえば、都市を作る上で、日本人などはおそらく
こういう発想はしてこなかったのではないか、ということ。

凱旋門自体はナポレオン1世によって建てられたが
この一直線上に重要なものを建てる、という思想は、
それ以前、フランス王国時代からのもののようである。

王国の宮殿であったルーブル宮も、この線に対して
左右対称に建てられ、ルーブルの前面線上には庭園が
同じく左右対称、シンメトリーに作られている。
(これから観るヴェルサイユの庭園もそうだが。)

そしてこの思想は、王国でも帝国でもない
現代のフランスでも、新凱旋門という形で
引き継がれているということ。

これはなんであろうか?。
現代的には歴史を踏襲した洒落か?いや、洒落ではあるまい。

日本であれば、例えば、方角というのを大事にする。
陰陽道の考えだが、北東のいわゆる鬼門方向には
江戸であれば、上野寛永寺を置く、といったような
ことはするのだが、一直線上に並べる、というような
発想はしてこなかったはずである。

パリの場合はなぜこうなのか、あるいは、なんのためにこんなことを
しているのか。不思議に思われまいか。
(ちょっとずれるが、この方向自体にも意味があるのか?)

パリ、あるいはフランスという国、もっというとフランス人の世界の捉え方、
というものを考える上で、とても興味深いテーマだと思う。

が、この考察は長くなるので後にまわすとして、今は先を続けよう。

列車は少し小高いところに差し掛かり、遠くに
エッフェル塔が見える。


ほどなく、ヴェルサイユ-リヴ・ドロワ駅に着く。

ヴェルサイユ宮殿は左前方。

ここは郊外の住宅地、なのか。
道路や街並みは随分と瀟洒できれいである。

肉屋さん。


ディスプレイがきれいである。

店先にある回転式ロースター。
鶏の丸焼きだったり、ローストビーフなのか塊りの肉、
あるいはアルミの容器入りのミートローフのようなもの?などを
焼いている。ロースターはここ以外にもパリの精肉店の店先には
必ずあった。

以前、私が子供の頃には、日本の肉屋にもよくあって、
鶏の足などを焼いていたものである。
しかし、そういえば、いつの間にか見なくなった。なぜであろうか。

日本人の場合、そうそう頻繁には鶏もも肉のローストなど食べない。
やっぱり焼いた鶏といえば、骨付きをむしゃむしゃ食うよりも
焼鳥で、串に刺さったものがよかったからか。
本来の肉食民族と、本来魚を食べてきた民族との違いなのかもしれない。

 

 

つづく。

 

 



 

 


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