断腸亭料理日記2013
歌舞伎のことやらを書いているうちに、
リアルタイムから内容が遅れてしまっているが、
一つだけ書いておきたいもの。
2月10日(日)第二食
天丼が食べたくなった。
かき揚げの天丼。
天丼というのは、東京の名物であろう。
そもそも、天ぷらというもの自体の発祥が江戸のように
思われる。
天ぷらを最初に食べたのは、徳川家康であると
いわれており、高齢の家康が鯛の天ぷらを食べて死んだ、
などともいう。
江戸・東京の名物といえば、鮨、天ぷら、うなぎ、であろうが、
この三種の中では天ぷらが最も早く、江戸時代の前期には屋台の
天ぷらやというのが、出現していたようである。
中でも、かき揚げ。
これは、幕末から明治頃であろうか、
かき揚げの天丼というものが、ある種、流行していたと
思われる。
新橋に[橋善]という老舗の天ぷらやが最近まであった。
場所は旧芝口一丁目。銀座の中央通りが汐留川を渡り東海道になるが
ここに架かっていたのが、新橋。むろん、地名の新橋の由来になっているもの。
この東海道側の袂にあったのが[橋善]という店。
明治の頃、天ぷらといえば、この[橋善]と池田弥三郎氏生家の銀座[天金]、
そして、浅草[中清]であったという。
[橋善]の天丼というのは巨大なかき揚げというのが、
売りであったという。
[天金]は今はもうないが、今でも健在の浅草[中清]も大きなかき揚げが看板。
浅草にある老舗天ぷらやなん軒かも、大きなかき揚げを
名物にしている。
さて。
いつものように、ご飯は、炊飯器ではなくホーローの鍋で炊く。
あらかじめ米は研いで浸水しておく。
天ぷらの用意。
小海老は冷凍。
冷水で必要な分だけ、解凍しておく。
揚げ油は胡麻油ベースのものを缶に入れてストックしてあるが
これを出して、揚げ鍋に入れ、予熱をしておく。
プラスチックの弁当容器に玉子を割りほぐし、氷2かけら、
水を少々入れ、よく混ぜておく。
ここまでやって、飯は先に炊き始める。
さすがに、飯を炊きながら、同時進行で天ぷらを揚げる、という
芸当はできないので、飯だけを先に炊いてしまう。
噴いてきたら、一度とめてかき混ぜ、再びふたをして、
最少の弱火に。
水分がなくなり微かに焦げるにおいがしてきたら、火をとめる。
これで、ご飯はOK。
よし、かき揚げ。
まずは、小海老に小麦粉をまぶす。
今日は、市販の天ぷら粉100%でやってみよう。
溶いた玉子冷水に天ぷら粉を合わせる。
最近はあまり失敗はしなくなっているが、
かたくもなく、ゆるくもない、程度。
お椀にかき揚げ一つ分の粉をまぶした小海老を取り、
ここに衣を入れる。
油温を確認。
OK。
一気に、投入。
市販の天ぷら粉というのはカラッと揚げるために、
混ぜ物(基本は重曹であろう)がある。
これで、小麦粉100%よりは大きく発泡する。
ひょっとすると、発泡があまりに激しくて、
揚げ鍋からあふれてしまうこともある。
今日はOK。
15秒ほど、落ち着くのを、待つ。
落ち着いたらひっくり返す。
ちょっと、衣がかためであったか。
いつもより、厚みがある。
厚みがある、ということは、中まで火が通りにくい、
と、いうことになる。
ここで、裏技。厚いところに菜箸を刺して2〜3穴を開ける。
揚げている間に、丼つゆを作る。
小鍋に桃屋のつゆ、原液、酒少々を入れてのばし、今揚げている揚げ鍋から
天かすを取って入れ、煮立てておく。
かき揚げの方は、よい色になってきた。
再度、菜箸を刺して、火が通っていることを、確認。
大丈夫であろう。
あげる。
もう一回戦。
これは内儀(かみ)さんの分。
OK。
終了。
丼に飯を盛って丼つゆにかき揚げをひたし、飯の上にのせる。
ビールを抜いて、食べる。
ふむふむ、かき揚げ丼にはなっている。
が、、、ん?。
食べ進むうちに、厚いところに差し掛かってくると、
生、ではないが、随分柔らかい。危ないところ。
市販の天ぷら粉を使ったせいで、安心しきってしまった
ようである。
天ぷら自体難しい料理だが、かき揚げとなると、
さらに難しい。
ゆるすぎれば、形にならないし、かたければ今日のように、
厚くなり、生の部分ができてしまう。
この間のうまく揚がる範囲が、おそろしく狭い。
なめてはいけない。
毎回、初心に返って心して作らねば。
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