断腸亭料理日記2013

手拭いのこと。

さて。

今日はちょっと変則だが、表題の通り、
手拭いのこと。

私は、ハンカチやハンドタオルではなく、
日本手拭いを、四季を問わず常用している。
いつからかといえば、落語を始めてから
なのでもう20年近くになる。

男性では夏になると汗拭きに、ハンドタオルを使っている人が
多いと思うが、私は手拭い。これがよい。

実用上では、乾きやすいこと。
汗で濡れても一時間もすれば、大方は乾いてしまう。
手拭いは、広げれば、薄い一枚の綿の布になのでよく乾く。

もう一つは、趣味の問題。

今、手拭いの種類、まあ柄、であるが、は以前に比べれば、
減ったと思われるが、それでも、様々なものがある。

温泉旅館の名前入りなど、宣伝用のもの。
(私の子供の頃は、身近な商店などの
開店や年賀の配りものは、まだまだ、名入りの手拭い
というのがあって、台所のふきんなどに使っていたものである。)

あるいは、これも配りものだが、
歌舞伎役者や落語家がやはり、年賀や、様々な披露の際に贔屓に配る、
名入りのもの。

または、私の住んでいる浅草などでは、祭では町内会で
名入りのものを作っている。
(これが半纏同様、粋でデザインがよいものが多い。)

配りもの以外だと、むろん、売っているもの、ということになる。

今、和ブームで、ある程度買う人もあるのであろう。
浅草でも手拭い専門店のようなものがあるし、
デパートにも専用のコーナーがある。

以前は、こうしたところで買っていたが、最近はあまり買わなくなった。
柄の趣味である。
こうしたところのものは新しく考えられたものが多い。
やはり、私は伝統的で粋なものが好きである。

どんなものか。
まずは、これ。

これ、おわかりになろうか。

[と金]である。

これは、浅草のひさご通りにある祭用品店のオリジナル。

扇子同様、手拭いも私はよくなくすが、
これは、なくすとすぐに買いに行く。
生地も大きく、かつ厚めで汗拭きにはとてもよい。
ちなみに、このたたみ方は落語用のもので、
この状態でズボンのポケットに入れている。
(落語用のたたみ方は、こちら。)


次はこれ。

伝統的な柄。

見たことが誰しもあろう。
これは[青海波(せいかいは)]という。
見た通り、波を図案化したもの。
この大きな柄はすがすがしくまた、美しく、粋でもあろう。

これも[青海波]だか小さめの柄で
上のもののネガポシの関係のもの。
いろんなバリエーションがあっておもしろい。

これは、折っていないか[よろけ縞]という。
この、よろけっぷり、が、よいではないか。

これは、紋所にもあるが、雁を図案化した、雁がね。
(特にこれは結び雁がねというよう。)

これなどもクラシックで好きである。
波になにか飛んでいる。
「氷」屋の幟にも飛んでいるのだが、覚えておられようか。
これは、千鳥(ちどり)。
江戸からあるものだが、ちょっとユーモラスで、
可愛いではないか。

これは見覚えがあろうか。
[沙綾型(さやがた)]という。
奉行所のお白州。金さんの後ろの襖に描いてあった。
(わかるかなぁ。)
奉行所はともかく、実際に八丁堀の与力の家の玄関の襖に、
よく使われていたらしい。

次は、これ。
これも一般的な柄だが、おわかりになろうか。
これは[かごめ]。
籠の目、で、ある。
籠は、あの竹で編んだ籠である。
そう思って見ると、籠に見えてこないだろうか。
(ケチャップのカゴメは、このかごめ。古くは例えば
キッコーマン(亀甲萬)のように、このかごめを
印(しるし)に使っていたようである。)

ここまで、伝統的な和柄。

で、こういう柄は、どこで手に入るのか。
手拭いを売っていれば、すべて見ることにしているのだが、
やっと見つけた。

なんと意外にも、ミュージアムショップ。
上野の国立博物館、そして両国の江戸東京博物館。
こんなところに手拭いを置いているのである。

そして、もう一か所。成田空港。
やっぱり、という感じだが、
外人向けの和もの土産なのであろう、
こういうオーソドックスな柄の手拭いを売っている店があった。

さて、まだまだ愛用の手拭いはあるのだが、
一枚だけ、いかにもなやつ。

またまた、折ったもの。
これは有名な[かまわぬ]。
こういうのも出しておこう。

歌舞伎、七代目團十郎の柄。
七代目團十郎については、上のリンクを詳しくはご参照いただきたいが、
江戸後期の超有名人。

[かまわぬ]は、むろん、かまわない、を、鎌と輪とぬ、の、
簡単な判じ物にした図案。

歌舞伎役者は皆、自分の柄を持っており、浴衣用の反物や
手拭いにして、贔屓に配ったのである。
図案としては、他に尾上菊五郎の菊五郎格子や、
斧琴菊(よきこときく)(どちらも三代目菊五郎考案とのこと。)
などか有名でよく売られているので見たことがあるかもしれない。

さて。

こんなところが、私、断腸亭の手拭い披露、第一弾。
(第二弾があるのかどうか、わからぬが。)

扇子と手拭いは落語家の唯一の持ち道具だが、
この前の扇子同様、皆さんも手拭い、いかがであろうか。


 




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