断腸亭料理日記2013

まぐろあら

6月30日(日)夜

夕方、田原町のスーパーの赤札堂へ。

赤札堂というのは、門前仲町が本店で、
まあ、下町のスーパーといってよかろう。

小洒落たものはないが、魚が比較的ちゃんとしている。

この、ちゃんとしている、というのはむずかしい。

大手のスーパーなどは魚は築地などの市場を通すことは通すが
中長期に卸と契約を結び、鮭なら鮭、いかならいか、、まぐろならまぐろ、
と、売れ筋の決まったものを季節を問わず決まった量を確保する。

このため、その日の市場の最高値で買うという契約に
なっている。

こうなると割高でもありまた、基本、年がら年中、同じものしか置いていない。

実際には魚は自然が相手のものである。獲れるときもあれば
獲れないときもある。
たくさん獲れれば、安くなるし、獲れなければスーパーで売れる
安い価格のものはなくなる。

また、種類も時々で多く獲れるものは変わってくる。
年によっても同じものが同じ季節に同じように獲れるわけではない。

その時にたくさん獲れているものを安く(適正な価格で)、
ちゃんと店頭に並べている。これが、ちゃんとしている、
ということである。

規模が大きくなれば、量を確保しなければならず、
なかなかこうはいかないというのはわかるのだが、
私はそういうスーパーでは魚は買いたくない。

旬も感じられないし、うまそうでもない。

と、いうことで、赤札堂。

国際通りと浅草通りの交差点から浅草通り沿いに上野方向に
浅草郵便局があって、その先。

入って、まず、野菜売り場。

谷中が安い。(80円)

この季節はやっぱり谷中しょうがである。

魚売り場。

ん?!。
(せっかくほめたのに)なんとなく、目にとまるものがない。

こういう時は、あら、で、ある。
あらは、安くてうまい。

そう。
大手のスーパーなどでは、あら、など、置いていないところも
少なくないのではなかろうか。
店でさばいてないからなのか、あっても買う人もおらず、
捨ててしまうのか。

あるいは、ところによっては、
あらはあらでも、鰤(ぶり)のかまだったり、鯛の頭だったり、
わかりやすいものを、きれいにして、高い値段をつけて
売っていたりする。これもだめである。

今日あったのは、(メ)バチまぐろのあら。
血合いは入っていない。血合いはあってもよいが、なければない方が、
うまい。

バチまぐろは、まぐろでも小さなものの呼び名。
多くは、本(黒)まぐろのようだが、若いので脂は少ない。

本まぐろのあらだと、ほほ肉だったり、脂のあるところもあり、
これまた、高くなったりはする。

まぐろのアラは、冬ならば、ねぎま鍋だが、
基本、しょうゆで辛めに煮る。

バチまぐろもこれでよかろう。

帰宅。

作る。

と、いっても、簡単である。

切って、しょうゆで煮るだけ。

案の定、脂は少ない。

あらの部位はよくわからないが、骨に近いところなのか
軟骨がついていたりするところもある。

生姜で煮ようかと思ったが、切れているので
ねぎまと同様、長ねぎを入れることにする。

まぐろは、出刃包丁で食べやすい大きさに切る。

ねぎは5cm程度で、その半割。

煮るというよりは照り煮という感じなので、鍋でなく、
フライパン。まぐろを入れ、しょうゆ、酒を加え、煮立てる。

魚を煮るには、極力短時間。

以前は味が染み込むまで煮る、というのが、
和食でも一般的であったというが、今は、短時間。

魚は煮ると、身のコラーゲン質がつゆに出て、
どんどんパサパサになっていく。

煮る時間は短くするが、その分、汁の方を濃くする。

それで、水も入れない、しょうゆと酒のみ。

煮立って、身に火が通ればもうよい。

谷中は洗って、食べやすいように、包丁の刃を入れておく。
味噌を添えて、皿に。



ビールを開けて、食べる。

これはよい。

このバチまぐろは、冷凍ではなく、生だったのかもしれない。

脂はほどんどないが、プリプリであま味があり実にうまい。

まぐろというのは、生でも、こうして火を通しても、
脂があってもなくても、ものが冷凍でも生でも
どちらにしても、濃口しょうゆの味に実によく合っている。

そして、砂糖はおろか、みりんも入れない。
これが、うまい。

魚売り場の端っこに寂しげに置かれている、あら、も、
十二分にうまく食えるもの、で、ある。

 

 






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