断腸亭料理日記2013

蕎麦・神田まつや

9月10日(火)夜

火曜日。


今日は17時半前、神田小川町あたりで仕事終了。

先週引いた夏風邪が尾を引いて、どうも本調子ではない。
夕方になるとちょっと微熱が出るようである。

喉から始まって、鼻、気管支あたり。

生来、私は喘息持ちで、アレルギー性鼻炎もあり、
呼吸器系が弱点である。

その上、20代の頃、自覚症状はまったくなかったのだが、
結核を患って、その後自然に治っているのが、30代になって
人間ドックを受けるようになりわかった。
その後は安定しているようではある。

結核というのは治ったようでも菌は身体の中に潜伏しており、
身体が弱ってくると発症してくるという。

結核も軽い場合には夕方になると微熱が出ると聞く。
ひょっとすると、夏風邪から軽い状態の結核が発症しているのかもしれない。

肺病病みというと、沖田総司のようでちょっとよいかもしれぬ。
(沖田のように若くはないが、、。)

さて。

どうしようか。

こんな状態であるから、あまり酒も呑みたくはない。

蕎麦。

久しぶりに須田町の[まつや]に寄ろうか。

神田[まつや]は池波レシピ。
池波先生が通っていたというのは、あまりにも有名である。

この時刻であれば座れよう。

靖国通りを北側に渡り[まつや]の前までくる。

出入り口が左右二つあるが、左は出口で右が入口。

右側にまわって入る。

まだ暑いという季節的なものであろうか、
空席もパラパラある。

中央あたりの案内された席に相席で座る。

品書きを見る。

ここへきて、まったく呑まないというのも、ないであろう。

お酒を一合だけもらおうか。
冷や(常温)で。

肴は焼鳥。
塩かたれかを聞かれたが、たれ。

お酒はすぐにくる。


蕎麦味噌をなめながら、一杯。

前に座っている六十すぎであろうか、ちょっと年配の小父さんが
天丼を食べている。

藪などには一切ご飯ものはないが、老舗蕎麦やにしては珍しく、
ここには、うどんもあれば、ご飯ものもある。

老舗だが庶民派というのであろうか。今でもこれを通しているのは
神田[まつや]の矜持(きょうじ)と、いってよかろう。

呑みながらまわりを見ていると、やはり見る間に席が埋まっていく。


焼鳥もきた。


ここではよくこのたれの焼鳥を食べているが、塩、というのは食べたことがない。
どんなものであろうか。(まあ、塩で焼いたものではあろうが。)

目にも鮮やかな、黄色い溶きがらしが添えてあるのがよい。

そういえば、最近、ここでは外人のお客さんをちらほら見かける。

ただ、外人さんだけ、というのではさすがになく、日本人の連れがおり、
案内されてきたという感じではあるが。

ガイドブックに載っている、と、いうのではないのかもしれない。

先ほどまで隣に座っていた比較的若い四人組も三人の外人に
一人の日本人であった。
(ちなみに彼らが食べていたのも丼ものであった。
[まつや]通(つう)なのか、麺類が苦手なのか、、、。)

東京でいかにも日本っぽい、食べ物や、と、いうと、確かにここは
よいかもしれぬ。建物も古い日本建築の一軒家で味があるし、
鮨やや天ぷらやでは、値が張る。

ここならばリーズナブル。
日本人から見ても、先に書いたように、庶民派。
だが同時に、客あしらいも“行き届いている”といってよいだろう。

東京自慢の食べ物やである。
(連れてきたお兄ちゃん、グットチョイス!)

さて。

蕎麦だ。

なににしようか。

熱(ねつ)っぽいし、温かいのにしよう。

うん、庶民派だ!
カレー南蛮にしよう。
(そう。藪や趣味蕎麦などにはありようはずもない、カレー南蛮。)

きた。


このカレー南蛮、やっぱり、どこにもある、ここにもある、
という東京のカレー南蛮とは微妙に違うように思う。

本当にうまいカレー南蛮(うどん)は私は、名古屋のもの、
だと思っている。あちらのものは、牛肉で、とにかくべとべとにつゆが濃い。

ただ[まつや]のものは鶏肉なのだが、これがまた滅法うまい。
つゆはカレー南蛮とすれば濃くもなく、薄くもなく、
東京の標準的な濃さ、だと思うが、すっきりしてる、と、いうのであろうか、
上品といってもよい味である。

つゆも飲み干す。

うまかった。

汗も出てきた。

席で勘定をして、
「ありがとうございまぁ〜〜す。」の声に送られて出る。

やはり神田[まつや]、建物、味、サービス含め、貴重な
東京を代表する蕎麦やであろう。

是非是非、このままの姿であってほしい。
そう思わせる蕎麦や、で、ある。



まつや


 

 




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