断腸亭料理日記2014

小島町・うなぎ・やしま

4月26日(土)夜

さて。

今日は久方ぶりに、ご近所、小島町のうなぎや[やしま]へ。

昨年2月、ニホンウナギが環境省のレッドリストに登録され、
同時に、稚魚の大不漁で、高騰。

東京の蒲焼も大きく値が上がっていた。

値段が高いからというのもあるのだが、
それ以上にやはり、うなぎやに行くのは、私も
後ろめたさを感じ、食べに行く間隔も自然とあいていた。

昨年の稚魚大不漁からの高騰と絶滅危惧種への登録の
タイミングは偶然ではなく、おそらく大いに関係はあるのであろう。

しかし、今年の稚魚の相場はなんでも、80万円/kg。
これが昨年はなんと300万円/kg。
稚魚が昨年よりも獲れている、と、いうことらしい。

値段が安くなったとはいえ、絶滅に瀕しているというのは
むろん変わっておらず、どんどんと食べればよい、
ということはないのだが、少し息をつげるような気はする。

と、いうようなわけで、ご無沙汰をしてしまったが、
[やしま]で、ある。

毎度書いているが、ここのご主人とは顔馴染。

以前になん度か、ご主人のご厚意で、
浅草寺、伝法院の池に、春と秋のお彼岸にうなぎを放す、
東京のうなぎやさんの組合の放生会行事
参加させていただいたこともあった。

[やしま]は春日通りと左衛門橋通りの交差点の小島町交番の隣。
その隣はいつもいくハナマサ。

拙亭から歩いて1分もかからない。

18時前、内儀(かみ)さんと向かう。

店に入ると家族連れが一組。

調理場の入口の暖簾から顔を出して、
うなぎ包丁をにぎって、忙しくうなぎを割いている
ご主人に挨拶。

座敷に上がる。

ビールをもらい、白焼き一人前と、お重二つを頼む。

やはり、昨年よりも安くなっているようである。

(ほんとうに、この半年くらい他のうなぎやにも
入っていなかったのでわからないが、他の店も
そうであろうか。)

ビールとお通しの、いつもの味噌豆がくる。


からしが添えられ、青海苔がまぶされている。

味噌豆などを出す店は少なかろう。

また、我々の同世代でも知らない人も多かろう。

味噌を作る時の茹でた大豆なので、味噌豆という
名前である。

しょうゆをかけてかき混ぜてつまむ。

落語、というよりは少し長い小噺(こばなし)だが、
この味噌豆の噺がある。

ある商家の台所にあった味噌豆を小僧の定吉が、つまみ喰い。

旦那(主人)が見とがめ、定吉を近所に使いに出す。

旦那は、どれ私も、と、ちょいとつまんでみる。
と、これが、止まらなくなる。

こんなところに定吉が帰ってくると、まずいな、
と、はばかり(便所)へ入って、食べ始める。

お使いから帰ってきた定吉、再び、つまみ喰いを再開しようと
味噌豆を器に盛って、旦那に見つからぬところ、、

と考え、やっぱり、はばかりへくる。

扉を開けると、、、あ、、、旦那。

なんだ定吉。

お替りでございます。

ちょっと、舞台がきたない。

食べ始めたらとまらなくなるというくらいで、
かなり安く、一般的なお惣菜であったといってよかろう。

白焼きから、きた。


久しぶりの、うなぎ。

それも、白焼き。

毎度書いているが、わさびじょうゆで食べるうなぎの白焼きは、
酒の肴とすれば、これ以上ないという江戸前の酒の肴の
一つであろう。

ふっくら焼けて、ほんわかとした脂とあまみ。

まさに絶品。

食べ終わって、お重の登場。


実にうつくしい。光り輝くうな重、ではないか。

お久しぶりでございます。

思わず拝みたくなる。

さっぱりと、辛めに仕上げられた[やしま]の蒲焼。

かわらず、うまい。

食べ終わり、お勘定。

ビールを入れて、二人で1万円弱。

ご馳走様でしたぁ〜、

おいしかったです。


このうな重が食べられなくなるのは、東京人とすれば
まったくもって、一大事である。

毎度書いているように、鮨、天ぷら、と並んで
江戸、東京人に昔から愛され、押しも押されぬ
東京名物であるといってよろしかろうし、言い換えれば
江戸東京の食文化を代表するものである。

農水省なのか、東京都なのか、業界団体なのか、
わからぬが、是非、未来永劫、東京のうなぎ蒲焼が
安心して食べられるようにしてほしいし、
我々消費者も考えねばいけなかろう。

まぐろも然り。

世界中から文字通りかき集め、食べ尽す。

長年魚を食べてきた国民として、
私達は節度をもって魚を食べなくてはいけなかろう。

それでなければ、ユネスコ無形文化遺産指定が
恥ずかしいと思うのである。




やしま
TEL 03-3851-2108
東京都台東区小島2丁目18−19

 


 


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