断腸亭料理日記2014

小肌と新いかの鮨と天ぷら その3

今日も昨日のつづき。

天ぷらからにぎりにかかっている。
昨日は、酢飯を作ったところまで。
〜〜〜〜〜

昨日仕込んだ小肌と、新いかを冷蔵庫から出す。

いかは一杯分でにぎり二つ分。
半分に切る。

小肌は半身でにぎり一つ分であろう。

よくプロはきれいににぎるために、包丁目を皮に入れたり
ひねったりしている。
試みに、十字に包丁の刃を入れてみる。

ペーパータオルの上に並べてみる。


(小肌を干すのにのせた網の形が皮に残ってしまった。)

最初にまずは小肌の裏にわさびを塗って置いておく。

次に両手を水で湿らせて、一つ分と思われる量の酢飯を
右手で取り、左手にのせる。

左手の上で形を整え、一度軽くにぎる。
この段階で、たいていは多いのだが、量の加減をする。

もう一度にぎり、形を整える。

にぎった上に小肌をのせ、もう一度にぎる。

一応にぎれたが、やっぱりイマイチ。

なにがというと、飯粒がにぎりの形から、一粒、
二粒はみ出てしまうのである。

今までになん回くらいにぎっているかわからぬが、
まあ、そう簡単にうまくにぎれるようになってしまっては
鮨職人はいらなくなってしまう。

ともあれ、四つ、にぎってみる。


十字に包丁目を入れたのが、あまり効果を発揮していない。

新いかもにぎる。

とりあえず、二つ。

食べよう。

新いかと並んで、小肌も夏が子供の生まれる季節で、
シンコ(新子)といって珍重される。

柔らかいというのもあるが、香りがよい。

今日のこの大きさでは
もはやシンコとはいえない大きさ。

大きくとも一匹でにぎり一つ分、
これを一匹づけというようだが、あたりまでが
シンコであろうか。

最近は夏前の6月頃、早ければ早いほどいいだろうというので、
2cmくらい、それこそメダカほどの大きさのものを
なん枚もあわせてにぎる極端なものを出す鮨やもある。
まあ、こんなものは味どころの騒ぎではない
ことはいうまでもない。

日本人(東京人?)の初物好きというのは、
それこそ江戸時代からのことで“女房を質に置いても”といって
見栄を張って買い求めるご存知の初鰹はその典型であろう。

そして、実は江戸では、魚に限らず、野菜でも果物でも
出端(ではな)には初物を求める人が殺到し、値が高騰、
多くの品目で決められた時期以外の売り買いは禁止
というお触れが出ていたくらいであった。

落語に夏にみかんを一つ千両で求めるという「千両みかん」
という噺があるが、あれなども、あながち
荒唐無稽なことではなのかもしれない。

初物というのは、心弾むものではある。
今日の新いかなどは私自身も、ワクワクである。

ただ、それは無理をしない範囲で愉しめばよい。
それ自体が目的化してしまうのは、やはり滑稽であり、
味もなにもわからないくらい小さい生まれたての子魚を取ってしまうのは
漁獲資源保護の観点からみても、おろかなことではなかろうか。

食べる人がいるから、獲る人がいて、商う人がいて、
料理する人がいる。
マグロにしてもうなぎにしても、毎度書いているが
食べる消費者にしても、販売する飲食店、小売、卸
含めて、売れるだけ世界中からかき集めて売り尽くし、
食べ尽くすことのおろかさに皆が早く気が付くべきであろう。

魚食文化は、無形文化遺産となった和食の大きな部分を占めているが、
その文化を持っていることは誇らしいことであると私は思う。
しかし同時に世界への責任もより増しているのである。

またまた、ゴタクが長くなってしまった。

まずは、新いかのにぎり。

これは、天ぷらもそうであったが、格別。
極上のこの季節の宝といってよかろう。
柔らかな歯触りと、とろけるようなうまみ。
そして、酢飯と一緒ににぎることによって、
また別の味わいがプラスされる。

小肌の方はどうか。

〆加減は、酢が強め。
これはわるいことではない。
基本、江戸前仕事の鮨やは、酢〆のものは強めである。
これならば、上々ではなかろうか。

追加でにぎりって、全部で6つ、7つ一気に食べてしまった。

が、しかし。
内儀(かみ)さんは、いかはうまいうまいと食べたが、
小肌は一つ食べて、やめてしまった。
いわれて気が付いたのだが、かすかに生ぐさい。
昨日から、作っているので私自身は慣れてしまっているのであろう。

はてさて、なにがわるかったのであろうか。

塩が少なかったか。
干す時間が足らなかったのか。あるいは鮮度か。
かなり微妙なところなのだと思うが、難しいものである。

おまけ。

新いかの柔らかい下足とえんぺらを軽く湯がいて、
穴子の甘いたれをかけた。

酒の肴としては、乙なものである。

 




 


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