断腸亭料理日記2014

名古屋・煮込みうどん・山本家本店

正月から引き続いて「忠臣蔵」の『九段目』を書いてきた。
書いたように『九段目』というのはなかなかによくできた、
いや、素晴らしい芝居であると感じた。
筋と演出を追って書いたがもう少し、作品論というと
大げさであるが、この作品の意味だったりを考えてみたいのだが、
それはまた稿を改めるとして、久しぶりに通常バージョンを。

1月8日(水)夕

年始3日目、で、あるが、出張。

行く先は愛知県。

名古屋で乗り換えて、名鉄で知多半島方面。

冷たい雨の一日。

5時頃に再び名古屋駅に戻ってきた。

久しぶりの名古屋。

名古屋には30代の頃、3年ほど単身赴任をしていた。

名古屋でうまいものというと、うなぎのひつまぶしと、
味噌煮込みうどん、で、ある。

味噌かつというのもあるが、私は甘い赤味噌とかつの
組み合わせが今一つ。

やはり、この二つがうまい。

せっかく名古屋にきたのだから、今日は味噌煮込みを
食べて帰ろう。
こんな寒い日にはぴったり、で、ある。

名古屋地方で味噌煮込みうどんというのは、
大定番で、家庭でも作られるし、インスタントの
袋麺もある。
また、町のうどんやでも、必ずあるメニュー、で、ある。

味噌煮込みうどん、と、いうのは、ご存知の通り、
岡崎市の八丁味噌が最も有名だが、この地方名産の赤味噌
をベースにしたつゆで煮込んだ鍋焼きうどん、で、ある。

煮込みうどんを看板にしている有名店は、名古屋で
二軒あり[山本家総本家]というのと[山本家本店]。
どちらも山本家という名前で、紛らわしいのだが、
私は[本店]の方を贔屓にしている。

理由は、むろん、こちらの方がうまいから。
また居心地もよい。

[総本家]の方は、東京にも支店があるのだが、
[本店]の方は名古屋に来ないと食べられない。

[本店]の“本店”は名古屋駅の西、中村の大門
(おおもん)というところにある。

大門という名前でピンとくる方もあろうが、
以前は中村遊郭という名前の遊郭であったところ。

駅周辺にもなん軒かあるのだが、最も便利なのは
西側(新幹線側)、太閤通口の地下街エスカの店。

昼時にくると列ができていることもあるが、
この時間であれば、ゆっくりと座れる。

座ってビール。

注文はご飯付の煮込みうどん。

うどんそばとご飯を一緒に食べる、という習慣は
日本中にあると思うが、名古屋の味噌煮込みうどん、
とくに、この店ではご飯を付けるのが大定番である。

そんなに炭水化物ばかり食べなくともよいのであるが、
味の濃い味噌煮込みのつゆがあると、どうしても
白い飯が食べたくなる。

その上、ここには“イチハン”といって、うどんが、
1.5人前のものまであり、多くの人がこれを頼む。

ビールと一緒に、漬物がくる。

今“漬物”と書いた。
東京では飲食店などでも一般に“お新香”ということが多い。

言葉の意味とすれば、古漬けが本来“漬物”で、浅漬けが“新香”
だと思われるが、地域によっては“新香”という言葉を
嫌うということがあるようで、いわゆる浅漬けでもあえて、
“お漬物”という。
この店でも私が“お新香”というと“お漬物ですか?”と
言い直させられた記憶がある。

“新香”にはどうも味が薄い、という語感があって
嫌われるともいう。
京都でも“お新香”ではなく、基本“お漬物”ではなかろうか。
“お新香”を常時使うのはひょっとすると、東京だけであろうか。

ともあれ。

ここの“お漬物”はなかなかうまい。

“お漬物”のお替りは自由。
今日も食べ始めたらお姐さんがテーブルの間を
お替りを配って回っていた。

ほどなく、味噌煮込みがくる。


食べたことがある方はご存知であろうが、名古屋の土鍋には
蒸気抜きの穴がない。これはふたを取り皿にするため。
名古屋地方ではふたを取り皿にするが流儀。

開けるとこんな感じ。


流儀通り、ふたに取って、食べる。


ここの味噌煮込みのうどんは、麺が硬めなのが特徴。
麺が硬いのは、名古屋人の好みかといえば、一概に
そうではなく、名古屋でもここのは硬くてだめ、
という人もいる。

久しぶりに食べると、やっぱりうまい。

味噌も濃く、出汁も濃いのであろう。
先に書いたが、このつゆでいくらでも飯が食える。

また、生玉子。
この卵黄と赤味噌というのは絶妙に相性がよい。

最初に玉子を崩さずに食べ始め、つゆだけの味を愉しみ
途中から崩して、溶け出した味を愉しむ。

まったくもって、幸せな味、で、ある。

うまかった、うまかった。満腹、で、ある。

うまいだけでなく、行き届いたサービスもこの店の
よいところ。

ご馳走様でした。



山本家本店




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