断腸亭料理日記2014

蕎麦・神田・まつや

3月22日(土)夕

国立の芝居がはねて、さて、どこへいこうか。

半蔵門からの帰り道。
いつも寄るのは、神田須田町。

須田町には、古いよい店がたくさんある。

軍鶏鍋の[ぼたん]

あんこう鍋の[いせ源]など。

今日は、軽く[まつや]でそばにしようか。

タクシーに乗って内堀通りから靖国通りを右に曲がって
九段坂をおりて、すぐ。

4時半すぎ、の半端な時刻だが、1〜2組の待っている人もいる。

10分と待たずに店内へ。

奥、右側、相席で座る。

目の前は若いお洒落な女性二人組。
板わさなどを前に日本酒を愉しそうに呑んでいる。

オジサンご用達のこの店では、珍しい。
だが、よいことであろう。

さて。

まずは、ビール。

キリンのラガーをもらって、
肴は、うにと、焼鳥。


ビールとそば味噌。

うに。


これは練りうに。

今、うにといえば、生うにで、練りうに、というのは、
あまり食べなくなっていると思われるが、うまいものである。

子供の頃、うに、といえばいつもあるのは、
瓶詰の練りうにであった。

練りうにというのは、いかにも酒呑みのつまみ、
ではなかろうか。

ここの練りうには、下関の「岡本」という
ところのものだが、毎年、私は年越しそばを
ここに買いにきて、必ず、そばのなん倍もする
このうにの瓶詰を買うことにしている。

それで、うちにはいつもこの「岡本」の練りうにがある。
むろん、酒にもよいし白い炊き立ての飯と食べても
堪えられないもの、で、ある。

うちにあるので、別段ここでもらわなくともよいのだが、
それはそれ、で、ある。

焼鳥もきた。


塩、も、選べるが、そばやで焼鳥を頼むとすれば、
たれ、以外にあるまい。

焼きねぎに、ふっくら焼かれた焼鳥。
溶きがらしが添えられているのもよい。

相席のお嬢さんに倣って、燗酒にかえる。

板わさももらう。


さて。

そばは、なににしようか。

やはりまだ、温かいそばがよかろう。

これだけつまみを食べたら、かけがよいか。


ほんとうに、なんにもない、かけそば。

これがまた、うまい。

温かく、腹に染みる。

最近、池之端の藪蕎麦でも、かけを頼むことが
多いような気もする。

かけそば、と、いうのは、やはりその店の看板といって
よろしかろう。

つゆとそばだか。
それ以上でもなく、それ以下でもない、
その店の味の基本である。

食べ終わり、席で勘定。

「ありがとうございま〜す」の、声に送られて、
店を出る。

やっぱり、この長く引っ張る、古くからある下町のそばやの
お姐さんの声はよい。

ご馳走様でした。

うまかった。

気取らず、居心地よく、うまい。

いつもかわらぬ、神田まつや、よいそばや、で、ある。





まつや


 

 


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