断腸亭料理日記2015

国立劇場12月歌舞伎公演

東海道四谷怪談 その1

12月6日(日)

さて。

毎度ご退屈様ではあるが、歌舞伎、で、ある。

12月の国立劇場は「東海道四谷怪談」。

12月に“怪談”というのもいささか時候違い、季違いのような
気もするが、私はこの演目観たことがない。

「四谷怪談」はおそらくご存知ではない方というのは
ほぼおるまい。
(私も時々どちらがどちらであったか、わからなくなることがあるが、
「四谷」はお岩さんの方である。皿を数えるお菊さんは「番町皿屋敷」。)

作は四世鶴屋南北。歌舞伎の作者とすれば黙阿弥同様に
真っ先に名前が挙がる人。
「四谷怪談」を観たことがないのは、歌舞伎勉強中の私としては
まずかろう。

と、いうことで予約をした。

なかなか人気のようで、連休に取ろうと思ったのだが
既に一杯で、6日となった。

昼、12時開演なので、着物に着替えて、11時、
内儀(かみ)さんと出る。
国立へはちょっと面倒。大江戸線で春日に出て、
三田線に乗り換え、神保町。神保町からタクシー。

20分前に着いて筋書き、イヤホンガイド、弁当、ビールやらを
買って、席に着く。
今日の席はほぼ真ん中、前から6列目。
なかなかよい席である。

「東海道四谷怪談」もちろん通し。
毎度書いているが、ご通家はいざ知らず、私のようなトウシロウは
作品全体がわかる通しでなかれば鑑賞にもならないし、まして、
怪談話は、部分的に観てもまったく意味はない。
それもあって、歌舞伎座などでもこれはほぼ通しに決まっていると
思われる。

また最初に書いた、今まで観る機会がなかった理由だが、
やはり歌舞伎座でも上演されるのは夏で、毎年上演るとも
決まっていないので意外にチャンスは少ないということになるのである。

配役と幕を写しておく。

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四世鶴屋南北=作

通し狂言東海道四谷怪談 (とうかいどうよつやかいだん) 三幕十一場

国立劇場美術係=美術

発 端 鎌倉足利館門前の場

序 幕 第一場 浅草観世音額堂の場

第二場 浅草田圃地蔵前の場

第三場 同 裏田圃の場

二幕目 第一場 雑司ヶ谷四谷町民谷伊右衛門浪宅の場

第二場 同 伊藤喜兵衛宅の場

第三場 元の伊右衛門浪宅の場

大 詰 第一場 本所砂村隠亡堀の場

第二場 深川寺町小汐田又之丞隠れ家の場

第三場 本所蛇山庵室の場

第四場 鎌倉高師直館夜討の場

(出演)

松 本 幸四郎

中 村 錦之助

市 川 染五郎

市 川 高麗蔵

中 村 松 江

市 村 竹 松

坂 東 新 悟

大 谷 廣太郎

中 村 米 吉

中 村 隼 人

片 岡 松之助

澤 村 宗之助

松 本 錦 吾

大 谷 桂 三

片 岡 亀 蔵

市 村 萬次郎

坂 東 彌十郎

大 谷 友右衛門

ほか

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座頭は、幸四郎先生で民谷伊右衛門。
息子の染五郎が、お岩他。

初演は1825年(文政8年)江戸中村座。
南北先生71歳時の作品という。
むろん、最大傑作といわれている。

三代目尾上菊五郎がお岩、七代目市川團十郎が伊右衛門
が初演だったという。
三代目菊五郎は今に続く、音羽屋菊五郎家の芸の基本を作ったといわれる人。
七代目團十郎は、私もなん度か書いているが、團十郎家の芸である
歌舞伎十八番を定めた人、また、天保の改革でお咎めを受けた人、
息子の八代目は幕末自害をして七代目よりも先にこの世を去った、、
数々の話題のある人。

この二人にとってもこの「東海道四谷怪談」は代表作であるようである。

まず素直な感想は、12時開演で5時近くまで、三幕十一場、
長い舞台であったが、さすがに名作、ものすごいエンターテインメント。
十二分にたのしめた。やはりこれは観るべき芝居である。

伊右衛門の幸四郎もよかったし、
なにしろ、染五郎が獅子奮迅の働きでベリーグッド。

国立なので有名大看板役者はこの二人くらいだが、
充実した、見ごたえのあるよい舞台であったと思われる。

さて。

この芝居、まずは四世鶴屋南北のことから書かねばなるまい。

文政12年(1829年)に亡くなっている人で活躍した時代は
文化文政期。幕末から明治の黙阿弥先生の二世代ほどは前になろう。

武士の世界を描くのを時代物、庶民を描くのを世話物というが、
なかでも生世話物(きぜわもの)といわれる写実的な演出を完成させた人、
といわれる。この写実の登場は歌舞伎にとっては大転換点であった
と考えてよいのであろう。

南北は五世まであるが、この四世南北が最も有名で
大南北(おおなんぼく)などとも呼ばれる。


つづく


国貞 1831年(天保2年) 江戸市村座 お岩 三代目尾上菊五郎







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