断腸亭料理日記2015

初芝居 国立劇場・新春歌舞伎公演
通し狂言 南総里見八犬伝 その2

1月4日(日)

引き続き、国立劇場の歌舞伎「南総里見八犬伝」。

幕開き。

まずは「発端(安房)富山山中の場」。

例の犬の八房と伏姫が籠(こも)る洞窟の場面。

原作がどうなのかわからないし、
私たちが視た人形劇の「新八犬伝」が
どうだったのか覚えておらず、おそらくいろんな
バリエーションがあるのだろうが、ここで一人と一匹は絶命し、
八つの玉が八方へ散る、というお話である。

「新八犬伝」では確か山の名前をトミサン
といっていた記憶があるが、これはトヤマといっていた。
どうもトヤマが原作通りのよう。

「発端」というのは一幕(ひとまく)に数えず、
次が、序幕で一幕目になる。

これはニ場。

「大塚村蟇六内の場」。

確か「新八犬伝」もそうであったように思うのだが
富山の発端の次は犬塚信乃登場の幕。

犬塚信乃は二枚目の若衆。
尾上菊之助が演じている。

菊五郎の長男、御曹司。寺島しのぶの弟。
吉右衛門の娘を娶っている。

もう三十も後半だと思うが、今だに
こういう役がぴったりくるのは流石なもの、で、ある。

犬塚信乃の敵役として、網干左母二郎
(あぼしさもじろう)が出てくる。

あ〜、いたいた、こいつ。

「さもしい浪人。あぼしさもじろぅ〜」

という九ちゃんのナレーションを思い出す。

この網干左母二郎は、尾上松緑。
歌舞伎ではこういうキャラを色悪(色男の悪人)というが
松緑という役者はぴったりである。

(以前に「忠臣蔵」五段目斧定九郎の松緑を観た。
定九郎も、色悪でよいのだと思うが、あれは
同じ色悪なのに、なぜか松緑は似合わない。
落語にもなっている初代中村仲蔵が練り上げた役で
ただの色悪ではなく、品(ひん)というのか、
粋な風情、というのか、そんなものが必要なのだと思うが、
どうもこの人、そのあたりが足りていない。)

それからもう一つ。

名刀村雨の登場である。

芝居では「村雨丸」といっていたが、
人形劇では「丸」はなったように思う。

これも九ちゃんのナレーション
「抜、け、ば、玉散る、氷の刃」。

舞台でも、刀を抜くと照明が暗くなり、
ゴロゴロと雷鳴が鳴り響く。

なにかこのあたりの演出が一緒。

(もしかして、人形劇はこの芝居を
下敷きにしていたのではなかろうか。)

この名刀村雨丸を巡って、さもしい浪人網干左母二郎と
犬塚信乃、そして同時に登場する犬川荘助、
さらに犬塚信乃に岡惚れをしている浜路(はまじ)が
絡み合う。

あ〜、こんな話だった、、、。

なにか、とても懐かしい。

見ていくうちに思い出してきたのだが、
おそらくさほどに難しい筋でもなく、
八犬伝を知らなくとも理解ができよう。

次が「本郷円塚山の場」。

ここは犬山道節登場。

道節は、座長菊五郎。
座長の役でもあるからであろう、
道節は八剣士を束ねる、リーダー格。

人形劇でもそうであったのか、
今一つ、記憶にない。

どうも犬塚信乃が主人公的に扱われていた
記憶がある。

忍者というのか、山伏というのか、道節は、火遁の術を使う。
(これも記憶にはない。そうだっけ?。)

序幕はここまで。

二幕目。

「滸我足利成氏館の場」
「同芳流閣の場」

滸我はコガと読ませて、むろん古河のこと。
室町時代の古河公方のことである。

ここに信乃が名刀村雨を献上しにくるのだが
この時既に、網干左母二郎に中身の刃だけすり替えられ、
さらに道節の手にある。

手ぶらで来るとはなんたる奴というので、
捕まえられそうになるが、信乃は逃げて、屋根の上で
なぜか犬飼現八が登場し、二人大立ち回り。
(この現八も、松緑。)

クンズホグレツ、ふたりは利根川へ落ち込む。

「行徳古那屋裏手の場」

信乃は利根川沿いに行徳まで流され、
宿屋の倅、犬田小文吾に助けられ、傷も癒える。
(江戸以前の利根川は銚子ではなく、江戸湾に流れていた。)

そこに現八が訪ねてくる。
実は、現八は小文吾の乳兄弟。

三人には例の玉と、身体にそれぞれ牡丹の花の
痣(あざ)があり、因縁を感じて義兄弟の契りを結ぶ。

そこへ追手がきて、小文吾は二人を逃がし自分は捕まる。


国周 犬塚信乃 四代目中村福助 明治17年



つづく




 


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