断腸亭料理日記2015

東京風おでん・八頭入り

1月8日(木)夜

木曜日。

連日、寒い日が続いている。

今日は、おでんにでもしようか。

正月明けに、安くなっていた八頭(やつがしら)を
買っておいたのであった。

あれを入れようか。

これに、毎度のハナマサでセットになっている
おでん種に、すじ、豆腐を加えて、買う。

八頭というのは皆さんご存知であろうか。

まあ里芋の一種といってよいのであろう。

親芋、子芋、かたまっているので、子沢山、子孫繁栄。
あるいは頭(かしら)になるというので出世祈願の縁起もの。

それで、お節料理の煮しめに入れたり
雑煮に入れる家もあろう。

家では食べなかったが、東京の習慣かもしれぬ。

今はあまり見かけなくなったが、少し前まで、
11月のお酉様(熊手を売る酉の市)では、
必ず八頭を売る屋台がいくつかあった。

やはり、お酉様が正月の準備をするための
"歳の市“であったことの証し、であろう。

そして、八頭はおでんにも入れる。

今、コンビニのおでんには里芋すら入っていないのではなかろうか。
このため、若い人はまず、ご存知あるまい。

東京風おでんの[お多幸]にはあったっけ。

志ん生師の名演が有名だか、落語「替わり目」には
おでんの種として八頭はちゃんと出てくる。

焼いた豆腐や芋(里芋の類)に味噌を塗って食べる
いわゆる田楽が江戸時代の終わり頃、
江戸でしょうゆで煮た"煮込み“のおでんになったと
いわれている。

里芋の類を煮込みのおでんに入れるのは
田楽からの流れ、なのかも知れない。

作る。

八頭を洗い、皮をむいて一口に切る。
これは圧力鍋で下煮。

ヒタヒタに水を張り加熱、加圧。

その他の種はいきなり、煮る。

大きな鍋に酒としょうゆをたっぷり。
少しの水。そうとうに濃い。

東京のおでん、いや、煮物はすべてこうであった。
むろん品(ひん)はないがこういうものであった。

こちらの方は、しょうゆの色が付けば食べられる。

同時進行で玉子も茹でる。
三つ。

しょうゆの濃い正調(?)東京風おでんには
菊正宗の燗酒がどうしても必要である。

火も熾して、火鉢で鉄瓶、で、ある。

炭が熾きたら、火鉢に移し鉄瓶はガスで熱くしてからかける。

八頭と玉子はまだだが、しょうゆの濃いつゆにしたので、
ごぼう巻やらは、10分〜15分で味が染みて食べられる。

先に食べよう。

鉄瓶で燗をつけて、食べはじめる。

ゆで玉子はゆで時間10分。

八頭は圧が上がって弱火で五分。
火を止めて、20分ほど。

ゆで玉子は水で冷やす。

八頭は茹で上がった。

お、っと。

先に煮始めた揚げ物やすじは、これ以上つゆに入れておくと、
しょっ辛くて、食べられなくなる。
こいつらは、つゆからあげて別の鍋に。

そして、濃いつゆに八頭と豆腐も入れて煮る。

八頭に色がついてきた。

冷えたゆで玉子は皮をむいて、八頭と同じ濃いつゆに
入れておく。

OK。


あまり見栄えがよいものではないが、
上が八頭、手前はすじ、左がさつま揚げ、その右がつみれ。
(そういえば[お多幸]の皿は朱色の塗りのものであった。
あれであれば、濃い色のおでんも多少は映えるかもしれぬ。)

つゆは濃いので入れない。

八頭というのは、普通の里芋と違って驚くほど
ねっとりとしている。

しょうゆ味と実によい相性、で、うまい。

今は、正月以外は八頭は東京でもあまり出回らぬようだが、
もっと食べたいものではある。
(子供の頃であろうか。いや、最近まで見かけた記憶があるが、
八頭を観賞用に水栽培をし、芽や葉を出させているのが
あったようだが、あれはなんだったのであろうか。
今でもやっている家はあるのであろうか、、、。)

さて。

この後、味が染みた種はあげておき、翌日は同じように
冷蔵庫の在庫になっていた大根半分を圧力鍋で下煮して、
濃いつゆに入れまた、煮る。
つみれとごぼう巻も買って加える。

一週間ほどで食べ尽くしたが、
なんだか、おでんやになったみたい。



 

 


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