断腸亭料理日記2015

銀鱈煮付け、ひじきと油揚げの煮物

6月14日(日)夜

日曜日。

午後、ちょっと用足しに蔵前へ徒歩で出る。

ぶらぶら歩いて、厩橋の隅田川テラスで、一服。

半袖のポロシャツに短パン。

天気はよいが、さすがに真夏ではないので、
この格好であれば、気持ちはよい。

厩橋から駒形の[自家製麺 伊藤]で、
中華そばを喰い、またぶらぶらと帰ってくる。

拙亭そばの小島町に新しくスーパーができたので
寄ってみる。
酒売り場がちょっと充実しており、ハワイのコナビールがあったので、
4本ほど。

それから。魚売り場で冷凍銀鱈の切り落とし、1パック、¥150。
これは安い。
それから、生ひじきが目についたので、油揚げと煮よう。

銀鱈はむろん、煮付け。

帰宅。

しかし、銀鱈というのはちょっと不思議な魚である。

とても馴染み深く、また今は高価になっているが、
子供の頃からあった魚ではなかろう。

ちょっと調べてみた。

私は銀鱈という和名もあるので、沿岸でも揚がるのかと思っていたが
ごくまれに三陸や北海道で揚がることもあるようだが、
ほぼ100%輸入のようである。

いつ頃から出回るようになったのか記憶はないが、
当初は煮魚用の安い魚であったと思われる。

ご存知のように生ぐささもなく、よい食感で脂がふんだんにあって、
とてもうまい。

寒いところの魚で、獲れているのは北太平洋。
アラスカやカナダ、カリフォルニアあたりの水深200〜300mの大陸棚の
深海で、1m以上にもなるようである。

またカナダなどでは養殖もされているらしい。

値が上がっているのは、日本などの需要もあろうが、
アメリカなどでは銀鱈に多く含まれている脂はオメガ3脂肪酸、
いわゆるDHA、EPAで、コレステロール低下効果があるから人気、
ということらしい。
(銀鱈に限らず、マグロのトロや青魚など魚の脂の多くが、
DHA、EPAであると、聞いたことがあるが。)

さらに、彼らがどうやって食べているのか調べてみると
そう特別な料理法ではなく、ローストやムニエルのような
もののようではある。
上品なフィレなので、フライにして、いわゆるフィッシュ&チップス、
フィッシュサンドのような食べ方もあろう。

脂が多いのは寒い海の深海魚だからであろうか。

一番最初に、不思議な魚と書いたのは、実はこのあたりのこと
なのである。

この魚、脂があってうまいのだが、だれが煮ても
ほぼうまい煮魚になる。

なにか、こんな簡単調理の魚ばかり食べていては
いけないような気がしているのである。

旬もあるのかないのか。

それに深海魚をわざわざ食べなくともよいではないか、
とも思う。(あんこうだけは食べさせてほしいが。)

養殖がされているというのを聞いて少し安心をしたのだが、
人気があって、獲り尽しはしはしまいか、とも思う。

今日は、切り落としで150円だったので買ったが、
普通の切り身は二枚入って600円ほどはしていよう。
そんな理由で、私自身は、まず買わないことにしているのである。

ゴタクが長くなってしまった。

銀鱈は凍っていたので解凍し、洗い、熱湯をかけて霜降り、
もう一度洗う。

あとは、水、酒、しょうゆ、砂糖。
味付けは甘辛のかなり濃いめ。

煮立てて、アルミホイルで落としぶたをし、
弱火にして、6分。
毎度書くが、煮魚は煮すぎない。その代り煮汁は濃く。

ひじきと油揚げの方は、油揚げを短冊に切って、
冷蔵庫ににんじんもあったので、ひじきくらいの
大きさ細さに切って、同じく酒、しょうゆ、砂糖で煮る。
こちらは、煮詰めながら含め煮。

銀鱈、切り落としの煮付け。



銀鱈煮付けは、切り落としでもご存知の味。

ひじきと油揚げの煮物。


ひじきと油揚げの方も、好みの濃い味に煮えた。

今度は、ひじきのこと。
子供の頃を思い出すと、家の食卓ではなく、給食で出いた
記憶があって、なんでこんなまずいものを、
と、いやいや食べていたような気がするのである。

私自身、子供の頃は野菜嫌いの偏食児のやせっぽちで、
ひじきの煮物のような、よくわからないものには、食指は
まったく働かなかった。

まあ、今から考えると、ひじきの煮物と食パンやコッペパンを
一緒に食べさせられていたのも、どうかとは思うが、、。

こういうものがうまい、と思うようになったのは
大人になったからなのだが、さらに酒を呑むように
なったのが大きな原因のように思う。
むろん、飯のおかずにもよいのだが。

酒というのはビールでも日本酒でも焼酎、サワー、
なんでもよいのだが、なにもなくてはやはり呑めない。

居酒屋のお通しなどでは、ひじきの煮物は
かなり高頻度で出てくるのではなかろうか。

これで慣れた、というのもあろうし、
酒とのつまみに食べると、食が進むし、なにか味をじっくり
感じられるように思うのである。ひじきの煮物のようなものも、
たいていはつまみ用なので濃い味付けである。
酒とともにつまんで、うまいと感じられるようになった。

むろん、食い物、料理というものは、おそらく
すべからく本来はまずいものはない、というのが大前提で、
私の持論ではある。
いわゆるゲテモノは別として、長く多くの人が食べ続けてきたものは、
どこかにうまい、と感じる要素が必ずあるはずである。
そこに気が付けば、まずいものはない。

あるのは、うまくなるはずのものを、まずく作ってしまった
料理、ということであろう。

   




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