断腸亭料理日記2015

上野・洋食・ぽん多本家

5月27日(水)夜

さて。

今日はなにを食べようか。

ここのところちょっと“路線”が違っていた
ような気がするので、ちょっと“らしい”ものを
食べよう。

とんかつ。

年がら年中よいのではあるが、暑くなってくると
特に揚げ物が食べたくなる。

帰り道、上野御徒町付近。

老舗が三軒あるが[ぽん多本家]にしようか。

三軒というのは[蓬莱屋][井泉]と[ぽん多本家]。

それぞれ個性があっておもしろい。
[蓬莱屋]はヒレで揚げ色が濃く、その昔かの小津安二郎が
贔屓にしていた家。
[井泉]は、三軒の中では一番庶民派で気軽な店なのでよく行くが、
ちょうど今放映されている、東京メトロのCMでカツサンド発祥の店
といって堀北真希ちゃんがここのカウンターでカツサンドを食べている。
(カツサンドはオミヤが主で、店で食べている人はあまりいないが。)

三軒の中では[ぽん多本家]は“洋食”という看板を掲げ
ちょっとお上品なポジション。フライものの揚げ色は薄め。
魚介もあり「蛤のバタ焼き」はうまい。

と、いうことで今日はちょっと落ち着いた気分で
[ぽん多本家]に決めた。

上野広小路駅から地上に上がる。

広小路の松坂屋は南館が建て替えに入っている。
なんでもここは23階建ての高島屋やパルコ、TOHOシネマ、オフィス
などが入る高層ビルになるよう。

上野あたりはまだこういう高層ビルはなかったのでは
なかろうか。
ちょっと雰囲気が変わるかもしれない。

その先の信号を東(左)に曲がり、左側。

ここは8時までで早い。

入って一人といって、入ったところのカウンター席に。

目の前は調理場。

瓶ビールに、カツレツを頼む。

ここはとんかつではなく、カツレツ。

カウンターには直前に入った男女二人の先客。

若い。20代ではなかろうか。
言葉を聞くと、どうも中国?からの観光客のようである。

上野あたりのこういう比較的高価格の老舗にも
いかにも観光客といった人々がくるようになっている。

まあ、さすがに爆買いをしているようなマナーのわるい
傍若無人な振る舞いをする手合いはまだいないが。
時間の問題なのか。

安いラーメン屋から、回転寿司、弁天山美家古のような
老舗鮨や、などなど、上から下まで、もはや彼らの見るネットには
情報は行き渡っているのであろう。

静かな店は、静かなままであってほしいものである。

ビールとお通しがくる。



お通しは煮穴子である。

ここのお通しは、いつもながら、ちょいと乙なものを出す。

山椒の香りが効いている。

なんとなく隣の中国人カップルの注文に聞き耳を立ててしまった。

日本語は話せず、カタコトの英語で、店の英語メニューと、
なんだかスマホの画面を指さしている。

それで頼んだのは、カツレツと赤貝の刺身。

酒も頼んでいないようだが、不思議な頼み方をする。

ここは世間的にはとんかつやということになっているが、
看板は“洋食”で、ビーフシチューなどもあり、さらに
メニューには魚介類、刺身もある。
知っていてきたのか、偶然なのか。

狙ってきたのであれば、なかなかの通(つう)ではないか。

私はここで刺身類は食べたことはないが、
他ならぬこの店のこと、なまなかなものは出さぬであろう。

カツレツ。


ソースをかけて、食べる。

浅めの色で、ふんわり、かつ、さっぱりとした揚げ上がり。

おそらく、ソースではなく塩などで食べてもよいように
考えているのではなかろうか。

厚みのあるロースで脂も多少あり、豚肉のうまみがじんわりと
感じられる。

ここのカツレツを食べるのは久しぶりだと思うが
改めて、しみじみうまいと感じられる。

隣の中国人観光客の男女はというと、
知らなかったのか、追加でご飯をもらっている。

カツレツと、赤貝刺身でご飯。
まあ、わるくはないが、やっぱり不思議。

私はというと、ご飯、味噌汁はなしで、食べ終わる。

これ、カツレツだけでも随分とボリュームがある。

腹一杯。

おいしかった、ご馳走様でした。

勘定をして出る。


ここは池波レシピ。池波先生もよくこられていた家であったか。
あたり前なことであるが、老舗というのは、
やはりうまい。いつきても安心して食べられる。

なん代、なん十年、百年に近い歳月をかけて腕を磨き、
うまいものを作っており、それで現代まで数多のお客に
支持をされてきている。
これは、ダテではない。

 

台東区上野3-23-3
03-3831-2351


 


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