断腸亭料理日記2015

鮨・新ばし・しみづ その2

5月31日(日)夜


引き続き、鮨、新橋の[しみづ]。

前回はつまみ、かれい、たこまで。

次は、角切りのむしあわびに肝を添えたもの。

あわびというのは、やはり夏のもの。

江戸前の鮨やでは、伝統的に生のあわびではなく、
火の通ったものを出す。

むしあわびといっているが、実際には今は、塩茹で。
ただ、塩茹でといっても、茹でただけではなく、茹で汁を
もう一度、あわびに戻す、という。

にぎりにするには薄く切るが、この場合、
歯応えよりも、うまみをより感じる。

今日のつまみとして出されたものは、
大き目の角切りでこれだと、うまみとともに、
歯応えをより感じられる。

それから、肝。
これは堅めの食感。
親方に聞くと、身とは別だが、やはり塩茹でという。
乙な酒の肴である。

もう一つ、つまみ。

小鉢に入った、まぐろの中落ち。
いや、正しくはスキミ、か。

中落ちは骨からこそげ取ったもので、スキミの方は
皮からこそげ取ったもの。

ねぎなどもなし。
元のマグロがよいのであろう。
みずみずしく、脂ものって、ばかうま。

このあたりで、にぎりにしてもらう。

まずは、きすから。

おまかせの場合の最初はなにか。
[しみづ]のこの日記を読み返してみると、
以前は鯛だったり、いろいろであったようである。

親方の最近チョイスはきすに定着しているようである。

あまり強くないが、酢〆である。
きすをにぎりで出す鮨やというのは、
私はこの系統以外では見たことがない。

この系統というのは、柳橋[美家古鮨]系統である。
古くからある江戸前鮨の種である。
なんと表現すればよかろう。
“素朴”?。なにかぴったりの言葉が思い浮かばないのだが、
安心するような味。

次は、しまあじ。

これは、脂がのっており、プリッとした歯応えもよい。

次は、いか。

いかは江戸前鮨であれば、すみいかしか使わない。
しかし、1年で夏前のこの時期だけは、すみいかは産卵期のため、
あおりいかを使う。

あおりも柔らかく、うまみ、あまみが濃く、むろんわるくはないし、
今の時期以外でも、使う鮨やは、東京でもあって安い種ではない。
ただ、やっぱり、すみいかの歯切れのよさが、江戸前にぎりらしい。

赤貝。

そして、まぐろ。

赤味と中トロ。

赤味はヅケではなく、そのままの赤身。

こういう店であるから、もちろん近海ものの生
なのであろう。

なんといっても、みずみずしさが違う。
みずみずしさというのは、あまみ、と言い換えてもよい。
それは赤味にしても、中トロにしても、同様。
本まぐろの生は、東京のある水準以上の鮨やくる意味の
一つかもしれない。

みる貝。

小肌。
この時期は、小肌も大きくなっていると思うが、
小さなもので、一匹づけ。(一匹を開いて、にぎり一つ分)
小肌はやはり小さなものがうまい。

海老。
さいまきといっている、小型の車海老。
ここももちろん茹で立て。
プリプリで、しっとり。

これがにぎりの海老の味である。

最後の巻物は、毎度のことながら、内儀(かみ)さんの
リクエストで、おぼろ入り。
今日はさらに、小肌も入れてもらって、おぼろ小肌巻。
なぜだか内儀さんはおぼろにご執心である。

小肌のにぎりにも、おぼろをはさんだりするので、
このおぼろ小肌巻は正しいのであろう。
ちょいと乙である。

私は終了。

内儀さんは玉子(のみ)。

さて、お気付きかどうか。

今日の目当てでもあった、鰹がなかった。

親方に聞いてみると、なかなかよいのが安定して
入ってこないとのこと。

まあ、こういう年もあるか。

それが自然というものであろう。

ともあれ、ご馳走様でした。

おいしかった。

勘定は、ビール二本、お酒冷一合
二人で、33,900円也。

むろん安くはないが、たまには上質な
“江戸前”を補給しなければ。





新ばし・しみづ
03-3591-5763
港区新橋2-15-10



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