断腸亭料理日記2016

新いかにぎり鮨

7月24日(日)夜

新いか、で、ある。

スミイカの子供。

すみいかは江戸前鮨で使われる
いかの代表。

いかというのは、多くが一年で成長し、
産卵をして死んでしまう。

スミイカの産卵期は春から夏で
この時期は、江戸前鮨やではスミイカは
使えない。

そして夏、生まれた子供が少し大きくなり、
新いかと呼ばれ出回る。これがとにかく柔らかい。
それで東京の鮨やでは珍重される。

買ったのは昨日。
出かけた帰りに御徒町の吉池に寄ると
こいつがあったのである。
新いかと呼べるのはほんのわずか。
今買わねば。
一皿、500円。(産地は鹿児島であったか。)
わずかなので、二皿買っておいた。

小物。


二皿全部でこんな感じ。

一杯が下足も入れて3cmほど。
ほんとにかわいいスミイカ、で、ある。

これをなににするか。

むろん、にぎりの鮨である。
天ぷらという手もあるが、まあ、小さすぎる。

先に、米を洗って浸水させておく。

スミイカをさばくのは、そう難しくはない。
下足を抜いて、甲羅を取り、エンペラから皮をむく。

が、小さく、数も多いのでとても面倒。
今日は、内儀(かみ)さんに下請けに出す。

そうとう根気がいるので、音を上げていたが
なんとか終了。


飯は土鍋で炊く。

完全に浸水が終わったもの。


土鍋で炊く場合も、電気釜で水加減をしてそのまま
土鍋に移している。

ふたをして強火。

沸騰したらふたを取り、


杓文字で底から返す。


再びふたをし、今度は最も火力の弱い五徳で
さらに最も弱火。

目安は10分ほどだが、
水分がなくなったのを確認し火を止める。
私がいつも目安にしているのは、
微かに焦げのにおいがしてきたところ。

ここから7分蒸らし。

その間に酢の用意。
一合で25cc。
ほんの少し、塩を入れる。

タイマーで7分計って切れたところで
もう一度だけ、強火にかける。
パチパチと音がするところまで。
ほんの少し焦げはじめるところである。


2〜3分置いて、炊きあがり。
なかなかよさそう。

飯台へ半分、一合分を移し、酢を広げる。


杓文字で手早く混ぜる。
混ざったら、広げてそのまま放置。
10分弱。
この時間が鮨飯には絶対に必要である。

いか。

小さな出刃でちょっと化粧をして準備。

にぎるわけだが大きさがいろいろなので、
まずは、大きめ、といっても3cmほどだが、のものを
選んで、その大きさに合わせて酢飯を握る。
いかの裏にわさびを塗って、もう一度にぎる。

とりあえず、五個。


最近は私のにぎりもそれらしい形になってきたか。


写真で見てもこの柔らかさがお分かりになろう。

江戸前の鮨が、スミイカにこだわるわけは、
なんであろうか。
元々、東京湾、江戸前で獲れたからではある。

味は、柔らかく、あまみがあるのだが、
例えば、スミイカが食べられない時期には
江戸前鮨やではアオリイカがよく代用されている。
これも、やはり柔らかく、あまみがあるが、
やっぱり、違う。
アオリイカは大きくなっても柔らかいのが
持ち味なのだが、厚みがあるのはにぎり鮨としては
ちょっといけない。酢飯が負けてしまう。
江戸前のにぎり鮨は大型のスミイカは使わない。
ちょっと大きくなると、大味になり硬くなる。
あまみと柔らかさを併せ持った、適度な厚みの
スミイカが江戸前鮨のいかのにぎり、なのである。

そういう意味で、スミイカは小さければ小さいのが
最良なのである。

身が薄いのだが、皮の食感がほぼない。
柔らかい食感と、あまみ、うまみ。

うまい、うまい。

七十五日生き延びた、か。




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