断腸亭料理日記2016

浅草・弁天山・美家古寿司 その2

引き続き、浅草弁天山[美家古寿司]。

昨日はつまみまで。

にぎり。

鯛と平目。

 



にぎりの大きさはこの写真のおおかた2割増しを
実寸となるようにしてみた。

このくらいの大きさが今の東京のにぎりの標準であろう。

そして問題は種と酢飯の比率。種と酢飯が同じくらい。
やはりこのくらいが正しい江戸前のにぎり、なのであろう。

ゴージャスな感じを演出するためか、酢飯から種が
大きくはみ出すにぎりを出すところがあるが、あれはだめ。
そんなことであれば、刺身で食べた方がよい。

あくまでもにぎり鮨は、酢飯と合わせて握ることによって
アミノ酸が増えるという、即席ではあるが、
押し寿司などなれずしと同様の科学的メカニズムを
持っている。
酢飯にもそれなりの存在感が必要なのである。

科学的なメカニズムはともかく、江戸前にぎりの
正しい姿として、ここと同じ名前の柳橋[美家古鮨]で
修行をした神田[鶴八]の先代親方が書かれていた。


そして、なにしろこの形が美しいではないか。

鯛は皮を残した湯引き。
どちらも昆布〆。

赤貝。

ほっき。


赤貝にしても、酢洗いくらいしているかもしれぬが、生である。
生ほっき。

もともとはほっきはどこでもボイルしたものを握っていたはずである。
やっぱり、生がうまいことは間違いない。

小肌と海老。

 

小肌は半身。

小肌はやはり小さい方がうまい。
去年の夏に生まれたものも、もうだいぶ大きくなっているのであろう。

小肌のにぎりはやはり江戸前鮨を代表する
ものであろう。
(はっきり覚えていないのだがおぼろをはさんでいたか?)

〆具合はノーマル。
うまい小肌である。

そして、海老。
車海老の小さいものであるが、江戸前では天ぷらやでも
鮨やでも、広くサイマキエビといっている。

ここは茹で置き。
願わくば茹で立ての粗熱が取れたところでにぎるのが、
最もうまいが、これも十分。

甘いたれを塗った煮いか。

 

普通煮いかは、やりいかだと思うが、
するめいかといって、出された。

やりいかは火を通しても堅くならない。
だが、するめ、といっても別段堅くはない。

お、そういえば、生のいかがなかった。

この日記のバックナンバーを見てみると、昨年の2月

やはり生のいかはなかった。

江戸前鮨では生のいかは本来は握らなかった。
握るようになったのは、明治以降と聞いたことがある。
これを踏まえたもの、で、あろうか。

今、江戸前を標榜する店では生のいかをにぎるが、
基本、すみいか、で、ある。
ただし、春先から夏前は子持ちになり、すみいかではなく、
あおりいかを使ったりする。
これは大きくなって、堅くなるということか。

先ほど、お通しでいかの下足が出ていたが
確かすみいかといっていた。
そして、子持ち。
この時期以外は、ここでも同じように生のすみいかをにぎっているのか。
今度聞いてみよう。

まぐろのづけと、玉子。


 

づけはむろん、赤身のしょうゆづけ。
つまみにもまぐろは出ていたが、やはり赤身。
ここは中トロなどは置かぬのかもしれぬ。

玉子は、やっぱり昔式の薄焼き。
(おぼろをはさんでいたのは、小肌ではなく、玉子の方であったかも。)

玉子が貴重であった頃、おそらく明治の中頃まで、
鯛などの白身や芝海老などのおぼろを混ぜて嵩(かさ)を増していたものである。
玉子の安くなった今となっては、こちらの薄焼きの方が
手間も原価も高いものになっている。不思議な存在。

一応、これでお仕舞だが、追加で海苔巻(かんぴょう)。


やっぱり最後は海苔巻が食べたい。

・・・ん?。

これは、1/6。
一本を、六つに切っている。

1/6は普通の細巻の切り方である。
以前から疑問に思っていて、ここにも書いたことがあるように思うが
他の細巻はカッパでも鉄火でも、普通1/6に切る。
しかし、かんぴょう巻だけは、1/4に切って寝かして出すのが普通。
(出前は別であろうが。)
皆様お気付きであろうか。

疑問に思って、どこかの鮨職人の方に聞いたこともあるが
理由はわからなかった。
(想像するに、かんぴょう巻が細巻としては古くからあって、
長く切るのは、ご飯の量をたくさん食べるためであったから、
と思っている。1/6に切った方が洒落ている。)

気まぐれではなく、ここはこうしているのであろう。
これも今度聞いてみようか。

ともあれ。

うまかった。
そして、くつろいで食べられた。これがよい。

ご馳走様でした。

 

 

弁天山美家古寿司


 

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