断腸亭料理日記2016

煮穴子

1、2日戻るが、これも書いておこう。煮穴子。

3月16日(火)夜〜

帰り道、例によって御徒町の吉池に寄る。

五反田にオフィスが替わってから
帰り道に寄ることが多くなった。

今までは大江戸線で牛込神楽坂〜新御徒町と御徒町を通ってはいたが
途中下車をしなければ吉池には寄れなかった。
五反田から山手線で御徒町までくるのでそのまま吉池に、
足は向きやすい。

7時をすぎており、もう店仕舞いを始めているのはいつものこと。
この日見つけたのは、天然ものの鰤(ぶり)の切り身3切れ。
これが安くなっていた。

もう一つ、開いた大きな穴子一本。厚みもある。
これは半額。
まあ、半額といっても、600円。

安いものの多くは中国産か韓国産。
国産の穴子は小さいもので一本300〜400円以上、
大きいものはこのくらいはいつもしているのである。

だが半額は安い。やはり、買おう。
普段であればなかなか手が出ない。

小さめのものであれば、天ぷら。
こういう大きいものは、是非とも煮穴子、である。

煮穴子は、鮨やでにぎる穴子である。
毎度書いているが、私はよく煮るし、
その煮汁を煮詰めたたれも常備している。

だがいつも煮ているのは、細い小さなもの。
やはり煮穴子はある程度大きなもので厚みのあるものが
よい。

と、いうことで今日のものは煮穴子好適品。
やっぱり買わねば。

鰤の切り身と煮穴子を買って帰宅。

鰤切り身は簡易に照り焼きというのか、
照り煮にして、今日食べてしまう。

煮穴子の方は時間もかかるので、煮て明日以降。

穴子は洗って、大きいので1/3に切る。

鮨やなどでは鍋で煮る。
自分の店で煮ているところのものを
食べたことのある方はおわかりになろうが、
江戸前仕事では、ホロホロになるまで柔らかく煮てある。
普通の鍋であれば、どうであろう、1時間程度は
軽くかかってしまう。

そこで、前にも書いているが、圧力鍋を使って
煮ることにしている。

圧力鍋に水、酒、しょうゆ、砂糖。
しょうゆはごく薄め。
味が染み込んでしまうので薄めにしなければ
とても食べられなくなる。

水位はヒタヒタ程度でOKであろう。

ふたをして点火。
圧を上げて、弱火で10分。

あとは、放置調理。

その間に鰤。

これはテフロンのフライパンにちょっと油を敷いて
両面軽く焼く。
ここに酒、しょうゆ、砂糖。
たまりしょうゆも少々。

たまりを入れると、香りがよくなりコクが増すように
思われる。

これで煮詰めながらからめ、仕上げにみりんを加えれば完成。
10分もかからない。
簡単なものである。
(これは写真を撮り忘れた。)

さて、穴子の方。

圧が下がったらふたを開けて、取り出す。

前回は取り出す時に崩れてしまったが、
今回のものは、厚みもあって、柔らかく煮えてはいるが、
しっかりしているのでフライ返しで取り出せた。

穴子は容器に入れ冷蔵庫へ。
煮汁は、フライパンに移し、砂糖、しょうゆを加え煮詰めて
ストックしてあるものに加えておく。

食べたのは翌日夜。

冷蔵庫から取り出し、ガスのグリルで軽く炙る。

たれも出してレンジで温める。

二切れ分、たれもかける。


プロはこれをにぎるのであるから、さすがの技、で、ある。

口に入れると、ほろほろ。

やっぱり細っこいものではなく煮穴子は
肉厚のものが最高である。

にぎり鮨にすれば、なん個分になろうか。

これをばくばくと食えるのは、まったくの贅沢。
幸せである。

結局、もう一切れも瞬く間に食べてしまった。

ほろほろに煮あげた穴子。まさに堪えられない味である。

この味、江戸前(鮨)のものであると思うのだが、
考えてみると、こういう料理の仕方でこんな味は他にはあまりない。
同じ長い魚で白身であるが、うなぎとも違う。
あるいは鰈でも金目でもよいが、他の煮魚とも違う。
いや、それ以前に、ここまでほろほろに煮る魚はない。

よくこういう発展の仕方をしたものである。
だが。
穴子の食べ方とすれば、江戸前では天ぷらと並んで
東西の横綱であることは間違いなかろう。
家でこれが食べられることに感謝、で、ある。






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