断腸亭料理日記2017

銀座・洋食・煉瓦亭

1月16日(月)昼

月曜日、昼、銀座。

なにを食べようか。

洋食。

オムライスはどうであろうか。

久しぶりに[煉瓦亭]。

[煉瓦亭]は創業明治28年(1895年)。

押しも押されぬ、洋食の老舗。
現代まで続いている東京、いや、日本の洋食やとしては
最も古い店の一つ、で、あろう。

試みに挙げてみると、帝国ホテルが明治20年 (1887年)。
帝国ホテルを洋食に入れるのは多少の議論もあるかもしれぬが、
やはり、東京の、日本の洋食を以後、戦後以降もこのホテルが
引っ張ってきたことは間違いない。
日本の洋食界には欠かせない存在である。
ともあれ、明治20年代はこの二軒であろうか。

明治30年代であれば同じく銀座の[資生堂パーラー]が
明治35年(1902年)などもっと増えてくる。
やはり[煉瓦亭]、そうとうなポジションを占めている。

ちなみに、明治28年というのは前年からの日清戦争が
終わって、下関講和、三国干渉。さらに台湾征討、
正式に台湾を植民地化している。
我が国が欧米列強を追いかけて、帝国主義の道を歩み始めた頃
といってよい。また、人々は日清戦争後の好景気にわいてもいた。

なぁ〜となく、この店ができた頃の時代の雰囲気が想像される。

さて。

[煉瓦亭]はというと、銀座三丁目、銀座通りの一本有楽町寄り。
銀座通りからだと、アップルストアの角を入って、右に曲がって
少し行った右側。
同じく洋食、カツカレーの元祖[グリルスイス]が手前にある。

年季の入った硝子ドアを開けて入る。

長らくここに4代目のご主人であろうか、老紳士が立たれて
案内をしていた。
娘さんなのか、お嫁さんなのか、女性が立って
案内をしている。

一人、と、いうと、地下を案内された。
私、ここにくると、ほぼ決まって地下、で、ある。

階段を下りると、壁際のテーブルを案内される。

椅子に掛ける。

赤白ギンガムチェックのテーブルクロス。
ここのトレードマークである。

水とメニューが置かれる。

メニューを広げ、オムライス?。

ん?

元祖オムライス、と、ある。

はて、ここでオムライスを食べるのは
初めてであったか。

ともあれ、頼む。

昼時、次、次と客が入り、テーブルはどんどん埋まっていく。
ウイークデーの昼、やはり、年配の方、それも地方から
出てきた、夫婦連れというような方が多いか。

しばし待って、きた。

あれ?。

元祖オムライスとは、こんなであったか。

アップ。

そう。

[煉瓦亭]の“元祖”オムライスとは、
形はオムライス型で、ケチャップも同じようかかっているが、
玉子の皮で包んでいないのである。

玉子は混ぜて、ご飯とともに炒めてある。

どちらかといえば、チャーハン?。

そうか。

これは知らなった。

元来私自身、オムライスというのはあまり
好物というほどではなかったので、どこの洋食やでも
頼むことはほとんどなかった。ここにも、なん度もきているが、
食べたことがなかったのであった。

スプーンを取って食べてみる。

ん!。

ご飯もいわゆるケチャップライスではない。
ますますチャーハンか。

ただ、具はマッシュルームに鶏肉、で、あろうか。

そして、ご飯に混ぜ込まれた玉子は中では半熟。
ケチャップをまわしながら食べていくと、これがオムライス
らしい味になってくる。

しかし、なんとなく、不思議な感じである。

今、定着しているオムライスが生まれる前に
この店で考えられた“オムレツライス”がこの形で
今もそれを作っている。
そういうことのよう。

人形町の洋食や[小春軒]には、玉子とじで甘辛の
今のかつ丼とは違った、かつの上に目玉焼きと野菜がのった
ちょっと不思議なかつ丼があるが、あれもその口、で、ある。

食い物が定番メニューになっていく過程のメニューという
ことなのであろう。
まあやはり、オムライスにしてもかつ丼にしても、定番になるには
それなりの理由があることがよくわかる。

ただ、そういうことを伝える歴史の語り部として、
ここのオムライスは“元祖”の名とともに残していって
しかるべきではあろう。

食べ終わり、1階に上がり、あがったところで会計。

ご馳走様でした。





中央区銀座3-5-16
03-3561-7258




煉瓦亭





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