断腸亭料理日記2017

森下・やきとん・山利喜 その1

6月27日(火)夜

明日から金曜まで、ビッグサイトで展示会。

今日は午後から準備で会場へ。

作業を終えて帰り道。
私の場合、ビッグサイトからのルートは
ゆりかもめで豊洲へ。
豊洲から有楽町線で月島。
月島から大江戸線で新御徒町、と、なる。

この帰り道、私にはちょっとうれしい。
なにかといえば、門仲(もんなか)と森下を通るから。

どちらも深川であるが、いい呑みやがある。
門仲だと[魚三]

森下だと[山利喜]がある。

深川というのは江東区のうちの、江戸の頃からある
区域、とでもいえばよろしかろうか。
豊洲だの有明だの、湾岸地域も江東区であるが、
そうでないところ。
(ちなみに、佃、月島は江東区ではなく中央区である。
他府県の方はどうでもよいように思われかもしれぬが、
東京人にとってはとても大事な問題である。)

門仲、森下に加えて、先日の清澄、木場なども
むろん深川。

その昔は、櫓下(やぐらした)の深川芸者なんというのが
頭に浮かぶ。

隅田川の東側というのは、本所と深川になるのだが、
江戸も開府の頃にはまだ江戸には含まれては
いなかった。
タイミングとしては明暦の大火前後といってよいと思うが
この時、江戸の再整理が行われている。
明暦は江戸開府から60年弱の頃である。
まだ、江戸時代も前期といってよいだろう。

家康が城下町としての江戸建設を始め、原型が出来上がって
いったのだが、都市化が進み、中心部にない方がよいものを
郊外に移す、具体的には、寺社と吉原遊郭。
あるいは、武家屋敷を建てる場所がなくなったので、
それを作るために、川向うの本所・深川を整備した
のである。

本所は低湿地、深川は陸地ですらなく、埋め立てから
始めている。

あの長谷川平蔵やら、勝海舟(およびその父)などは
本所の生まれ育ち。
貧乏旗本、貧乏御家人、まあ、徳川の家来だが、
金のない不良の者どもが跋扈していた、、、のか。

江戸府内であっても、江戸城に近い隅田川の西側とは
ある種違った気風、雰囲気があったのであろう。

また、特に深川は木場があったのも大きなポイントであろう。

木場というのは、今の木場公園であるが、
材木問屋とその広大な貯木場があったわけである。
当然網の目のように張り巡らされた掘割も。

木場で働く荒くれ者、あるいは鯔背(いなせ)なアニイ。

そして櫓下芸者。
(櫓下とは今の門仲付近)
芸者といっているが、実際には岡場所、すなわち
非公認の売娼宿である。
芸者と娼妓未分化の江戸期である。どちらも
兼ねていたと考えるのが実態に近かろう。
川の西側に比べると、やはり岡場所の数は、かなり
多かったようである。

ある程度、取り締まりも緩かったのであろう。

明治になって本所・深川は東京の工場地帯と変わっていく。
最初は小さな町工場。網の目に張り巡らされた
掘割がこの頃も生かされていた。

いずれにしても身体を使って働く者達の街であったのは
変わりがなかろう。

ただ、今の深川には、門仲界隈ぐらいであろうか、
昔の雰囲気が残っているのは。
先日も書いたが、今の深川は郊外住宅地と
大差ないようにも見える。
やはりこの原因は、震災、戦災、特に東京大空襲。
隅田川の西側も空襲には遭っているが、それでも
焼け残ったところはある。
これに対して、本所深川は徹底的に焼け野原となり
むろん、莫大な犠牲者が出ている。
長屋はもちろん、多くの歴史のある寺社その他、
墓石まで跡形もなくなるほど、というところもある。
ざっくりすぎるとは思うが、そんな土地、か。

そうとうに前置きが長くなってしまったが
深川というのは私にとってはいまだに未知な
部分がある。そんな深川というと、私には
先に挙げた、門仲[魚三]と森下[山利喜]。
大雑把すぎるか。

ともあれ。

森下駅を出て、新大橋通り沿いに交差点から少し歩くと
すぐに、赤い大きな提灯。
この先には、もう一軒の森下を代表する名店
桜鍋の[みの家]があるが、その手前。

自動ドアを開けて、入って階段をトントンと上がって、
中二階のような高さになるが、ここが一階か。
顔を出したお兄さんに、一人、という。

ちょっと調べて、二階のカウンターに、とのことで
もう一つ、上がる。

カウンターに掛けると、目の前には煮込みの鍋。

まずは、レモンサワー、で、ある。

そして、なにをもらおうか。

「煮込み玉子、ガーリックトースト」
は決まりだが。

それから、、、
と、考えている内に、、、、、

きた。




つづく




山利喜






 

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