断腸亭料理日記2017

上野・洋食・ぽん多本家

3月8日(水)夜

さて、水曜日夜。

今日は、帰り道[ぽん多本家]に行ってみようと
思い立った。

ここは上野発祥といわれるとんかつ。
そのとんかつ御三家の一角だが、
最近は、とんかつやというよりも
洋食やというイメージに私自身強く思うように
なってきた。

実際にこの店は“洋食”を名乗っている。
メニューにはフライもの以外にもビーフシチューやポークソテー
私が好きな、蛤のバタヤキなどもある。

ここの創業は明治38年。
先のとんかつ御三家のなかでは最も古い。
とんかつ専門の[蓬莱屋]は屋台時代を入れると大正初年創業。
おそらく[蓬莱屋]あたりが、洋食やのカツレツが独立した
ごく初期からあるとんかつやといってよいのであろう。

上野がとんかつ発祥というのは、実際は正しくないと思われる。
今に残っている東京のとんかつやでも例えば、新宿の[王ろじ]などは
大正10年創業。

この頃、明治の終わりから大正の頃、上野に限らず、
洋食やからカツレツが独立し、カツレツをメインにする
店ができ始めた。おそらく東京中、同時多発的に。
流行りの食い物といってよい状態であったと思われる。
それが、上野は数が多かった。

なぜ銀座でも日本橋(人形町含む)でもなく、
上野だったのか。
今も、銀座、日本橋にはとんかつやはそう多くはない。
妙なことではあるが、おそらく間違いない。
これはとても興味深い問題ではないか。

広くとらえると、特定の食い物やの分布に地域差があるということ。
以前にもちょっと考えてみたことがあるが、もう少し考えてみる必要を
感じてはいる。

ちょっと考えてみたのは、ラーメンやの分布。
以前の中華やのラーメンではなく“流行り”の、である。
今は東京中にある、が、しかし、20年〜30年前であったろうか、
分布には片寄りがあった。東京でも西高東低。
一時、ラーメンは環七、あるいは恵比須、なんというところが
メッカであった頃もあったほどである。
これに対して、山手線の東側にはほぼなかった。
これは店側の要因と、お客側の要因を考えてみると解きほぐせそうである。
そして、もしかすると、とんかつのヒントにもなりそうである。
ともあれ、この件は稿を改めてゆっくり考えよう。

さて。
[ぽん多]の創業はとんかつ独立よりも気持ち古い。
初代ご主人も洋食の修行をし、店も“洋食や”を名乗った。
ただ、当時からこの店でもカツレツは、看板であったという。
それはまさに流行りの食い物であったからということ
なのではなかろうか。

さて。

19時半頃、店到着。

重い木の扉を開けて、店内へ。
一人、といって、目の前のカウンターに掛ける。

さて、なににしよう。

今日は特に決めてこなかった。

私の場合、カツレツ以外だと、蛤バタヤキ。
フライものだと、イカフライもうまい。

ビーフシチューやタンシチューは頼んだことはない。
これは好物というほどではなく、他の洋食やでも
あたり頼まない。

そう。
洋食やを標榜しているが、カレーだのオムライス、チキンライスだの、
ご飯ものはやっていない。(白飯はあるが。)

ちょっと、食べたことのないもの。

海老コロッケ?。

こんなものがあったっけ?。

クリームであろうか。

頼んでみよう。

もちろん瓶ビールも。

お通し。

ほんとうに、ここのお通しにはいつも感心する。

豚の角煮。
ちょっとした割烹のものである。

味も濃すぎず、いい塩梅に柔らかく煮えている。

きた、海老のコロッケ。

まさに、揚げたて。

舌が火傷しそうなほど。

ただ、カツレツや他のフライもの同様、
揚げ色は、薄い。

やはりクリームコロッケ。

入っている海老は、なんであろう。
かなり大きい。
車海老?、もしかすると伊勢海老、かもしれぬ、
と思う程。

ぷりっぷりで、味もちょっとそんな感じ。

クリームの味は、上品。

二つであるが、大きいので食べでがある。

充分に満足。

いつもそうだが、全体として、とても繊細で
上質なものを食べた、という気分に包まれる。

やはりこれがこの店らしいところ、なのであろう。

うまかった。

ご馳走様でした。

大満足。

 


台東区上野3-23-3
03-3831-2351

 



 

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