断腸亭料理日記2017

日本橋室町・蕎麦・利久庵

3月28日(火)昼

午前、東京駅付近。

12時すぎ、ミーティング終了。

さて、昼飯。

今日は決めていた。

日本橋室町の[利休庵]で納豆そば。

このところ、日本橋界隈を頻繁に歩いているが、
ずっと頭にあったのである。
暖かくなってきて、食べ時。

あれは、うまい。

東京駅付近から日本橋室町もむろん目と鼻の先。

外濠通り、呉服橋の交差点から一石橋を渡って常盤橋の交差点。

一石橋というのは南詰に「満よひ子の志るべ」という
古びて欠けているところもあるが大きな石碑がある。

これは東京都指定の有形文化財。
建てられたのは幕末の安政4年(1857年)という。

いわば迷子さがしの掲示板。
探す方は特徴などを書いて石に貼る。
心当たりのある人は、その旨を書いて貼る。

これは近隣の町名主などが相談して建てたものであるという。
当時迷子は多く、今であれば、警察がその任にあたるのであろうが、
町名主が建てたのいうのはちょっとおもしろいかもしれぬ。

町人同士の自治あるいは互助という位置付けとして考えることも
できるかもしれぬ。

ただ、町名主というのは町人であるが、今でいう
町会長というよりは正式な江戸町奉行所配下の役人という
役割を持っている。この町名主のさらに配下には、
落語などに出てくる大家さん=家主(いえぬし)がいる。
家賃の取り立てなどもしたが、家主も町奉行所の正式な役目
なのである。今の、借家を持っている大家さんとは
違っていたのである。

自治、互助と奉行所の正式な住民管理、さらに警察が一体化し、
かつ、住民一人ひとりの身近にあったわけである。

現代は警察は警察、区役所などの住民管理は住民管理。
町内会はあるところもあり、ないところもある、任意組織。
分化、専門化しているのはよいが、穴だらけ、ということであろう。

この枠組みは為政者の管理、統制しようという意志が強ければ、
監視社会というようなことになるのであるが、
むろん、そういう意図で作られた制度であると
いってよいが、運用としては、住民達の自発的な
自治、互助の意志が発揮されていたといってよいのではなかろうか。
「満よひ子の志るべ」見ているとそんな気がしてくる。

ある種の奉行所の指導のようなものはあったのであろう。
しかし、仮名で書かれた石碑の文字や、そこに連絡用の
紙を貼る、といった使われ方を見ると、当時の町人たちの顔が
見えてくるようではないか。
管理統制と自発的な自治、互助がうまく調和している
ように思うのである。

江戸から学ぶこと、現代にも多くある。

閑話休題。

一石橋を渡り、常盤橋の交差点。
右前方は日銀。
耐震のためであったか、工事中。

外濠通りを渡って、日銀正面の通り。
まだ若い桜並木で江戸桜通りと名前がついている。
ほんの一輪二綸だが、開花している。

日銀の先、左が石造りの立派な三井本館、右が三越。
その間を抜けて、中央通りに出る。

[利休庵]のある通りはもう一本右。
日本橋からは二本目、で、あった。

鰹節の大和屋の角を入って、一本通りをすぎて
[利休庵]は左側。

硝子戸を開けて入る。
まさに昼時、
にぎわっている。

一人、といって、お姐さんに指示された
ところに相席で掛ける。
相席の相手は、私よりは若かろうが、そこそこの年齢と見える
女性一人。OLさんのよう。
食べているのは、納豆そば。

お茶がきて、むろん、納豆そばを頼む。

お客の回転は速い。

サラリーマンだけでなく、比較的年齢が高めの
女性の一人客も目に付く。

隣のテーブル。
椅子に掛けて、いつもの、といった、女性。
六十は越えていようか。

聞いたお姐さんが、花巻にえび天ですね、と応える。

頼んだものは必ずしも粋ではないが、なかなかな振る舞い。

きた。

これが[利休庵]名物、納豆そば。

ねぎと、溶きがらしも入れ、よく混ぜて、すする。

ここのそばは白い更級系。

私は納豆そばなど、ここ以外ではほぼ見たことがないし、
食べた経験もない。
しかしなぜ、こんなにうまいのであろうか。

入っているのは、納豆にもみ海苔、表の山本海苔のものらしい、
卵黄、花かつお。

つゆが特別なのか。

うまい、うまい。

瞬く間に、食べ終わる。

勘定をして、出る。

ご馳走様でした。

あ、あ、あ、、、もうちょい、なんか食べたいな・・・。




利休庵


中央区日本橋室町1-12-16
03-3241-4006




 

 

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