断腸亭料理日記2017

上野・洋食・ぽん多本家

5月19日(金)

金曜日。

なにを食べようか。

今日の東京の最高気温は26℃。
体感的にはむろんもっと高かった。

ただ、夕方になってだいぶさわやか。

五反田駅から山手線に乗って、御徒町。

今日は、夕方から肉の気分。

とんかつ。

久しぶりに、ミシュラン店[とん八亭]
とも思ったが、金曜は昼のみの営業。

それじゃ[ぽん多本家]だ。

とんかつといって、この店を出すのは、
失礼ではある。
ここは洋食や。

ただ、とんかつは上野発祥といわれ
(これも神話ではあるが。)
その発祥と思われる、明治末から昭和初期にかけての
創業の老舗が三軒。
この三軒を上野とんかつ御三家などと巷ではいわれている。

すなわち[ぽん多本家][蓬莱屋][井泉]。
それぞれ、明治38年、大正初年、昭和5年。

[ぽん多本家]が最も古い。

とんかつというのは、明治の頃は洋食やのポークカツレツ
というメニューであったわけである。

少し前に丼ものの歴史について、明治初年からの新聞記事を
検索して、いつ頃どんなものがどんな風に食べられていたのか
そこそこ実証的に調べてみたことがあった。
そこで、とんかつもおまけに調べてみたのである。

やはり大正時代にカツレツからとんかつという言葉に変化し、
一般化していることは間違いないようである。

[蓬莱屋]の創業は屋台であったというが、
そんな風にして、洋食やから当時人気メニューであった
カツレツが独立してカツレツ改めとんかつだけを
出す店ができていったと私は考えている。

そんな風に見ると、この3軒は少しずつ時代がずれて、
洋食やから独立し、屋台で始めて[井泉]創業の頃には
とんかつやとして一般化していた、とそんな流れ
だったのかもしれない。

ちなみに[ぽん多本家]は先に書いたように、洋食やを
名乗っているし、とんかつではなく、今もカツレツである。

さて。

上野広小路の春日通りの交差点から東に入る通りの南に二本目。

広小路が斜めにカーブしているところである。

店に入って、一人といって、先客が右端にあったので、
カウンターの左端に座る。

瓶ビールと“カツレツ”頼む。

静か、で、ある。

この店は、ほんとうに静か。
目の前は調理場だが、手を動かしている3人もほとんど
口を利かない。
それぞれ連携して作業をしているのであろうが、
阿吽の呼吸というやつなのであろう。
むろんBGMもない。
よいものである。

ビールがきた。

毎度書いているが、ここのお通しがよい。

前回は、いか下足のぬたであったが、今日は豚角煮。

同じものが出てくることはほぼないのではなかろうか。

豚角煮も、洋食やのものではない。
和食のものである。

カツレツもきた。

右上に添えられているのは、ポテトフライ。

衣のついたフライドポテトなのだが、知っている人は
そう多くはないかもしれぬ。
下町では肉やのコロッケよりも安い、子供のおやつ、おかずであった。
じゃがいもを衣をつけて揚げたものである。
今ではほぼ姿を消しているのではなかろうか。
池波先生は子供の頃大好きで、ポテトフライの正ちゃんで、
ポテショウというあだ名で呼ばれていたと聞いたことがある。
ほくほくで、うまい。

肉のアップ。

薄い揚げ色に、肉の切り口は、ほんのりピンク。

やっぱりここのカツは塩で食べたい。

肉のうまみがダイレクトに感じられる。

薄い揚げ色というのは、低温で長めに揚げている
ということであろう。
そうすると、普通は油切れがよくない。
ごくたまにではあるが、ここもそういうことがあるが、
今日は成功。
どんな技なのか。

これはもう塩しかない。

かみしめて、食べたくなるポークカツレツ。

うまかった。

ご馳走様です。

勘定をして出る。

出ると通りには灯りの入った提灯。

お祭である。

町会の名前が上で、下には名前。
東黒門、そして、個人名であったり、店の名前だったり。
ここは、五條天神であったか。
東黒門(ひがしくろもん)町会。

この土日は三社様もであった。
重なっているのかぁ〜。

まさに、下町は祭シーズンピークである。

 

台東区上野3-23-3
03-3831-2351


 

断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5 |

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |

2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |

2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |

2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |

2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |

2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |

2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |

2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月

2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |

2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |

2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 | 2015 11月 |

2015 12月 | 2016 1月 | 2016 2月 | 2016 3月 | 2016 4月 | 2016 5月 | 2016 6月 |

2016 7月 | 2016 8月 | 2016 9月 | 2016 10月 | 2016 11月 | 2016 12月 | 2017 1月 |

2017 2月 | 2017 3月 | 2017 4月 | 2017 5月 |


BACK | NEXT |

(C)DANCHOUTEI 2016