断腸亭料理日記2017

浅草・洋食・ヨシカミ

10月3日(火)夜

今日は、例によって栃木からスペーシアで
19時半、浅草着。

なにを食べようか、道々考えてきた。

思いついたのは、洋食。
六区の[ヨシカミ]

しばらくぶり、かもしれない。

東武の浅草駅を北口から降りて、
西へ真っ直ぐ。

馬道を渡って、左にカレーの[夢屋]、右にレストラン
[大宮]、左にラーメンの[与ろゐ屋]。

仲見世を突っ切って、右に伝法院のある伝法院通り。
このあたりも、このくらいの時刻でもはや
人通りは少なく、店もほとんどシャッターを下ろしている。

ウイークエンドの昼間は観光客などの雑踏で真っ直ぐ
歩けぬくらいである。

この伝法院通りは数年前から町並みを昔っぽくしているが
人が多いと人に埋もれてなんだかわからないが、
人がいないくなると店々の看板や外観がよくわかる。
また、常設のものだが、地口行燈なども少し上の方に
建てられている。

地口行燈といってもお分かりにならぬ方が多いかもしれぬ。
じくちあんどん、と読む。

地口、というのは、まあ洒落、駄洒落のこと。
落語の落ちで、洒落、駄洒落で落とすのを
地口落ちなどと言ったりする。

ちょっとした駄洒落とそれを描いた絵が
書いてある。

志ん生師のなにかの枕にあったが「お地蔵さんが電話をかけて
地蔵(自動)電話」。
(公衆電話のことを戦前、自動電話といっていたよう。)

こんな感じのもの。
描かれている絵がまた、今いうヘタウマのような
へろっとしたもので、味がある。

東京では神社仏閣の縁日、お祭りの時などには

参道などに飾るものであった。

伝法院通りからさらに真っ直ぐ、右に、かの、くじらや([捕鯨船])。

右に曲がると[水口食堂]、左に折れて、右側。
[ヨシカミ]到着。

ドアを開けて入る。

なかなか盛況。

いらっしゃいませ、と声がかかり、
一人、と指を出すと、カウンターの真中へ、と。

カウンターもほぼ一杯だが、ガスの調理場の前が
あいていた。

調理風景が正面から見られてよいかもしれぬ。
やはり、プロのフライパンの振り方には一見の価値がある。

カウンターの中、左手のお兄さん、彼も調理をするが
スッと、おしぼりとメニューを前に置く。
この動作、流れるよう。

メニューは実際には私は見ないのだが、こちらも一連の動作として、
メニューを開き、瓶ビールと、チキンライス、コンビネーションサラダを
頼む。

私のチキンライス好きは今さら説明はしなくともよいだろうが、
もう一品は、毎回多少は替えている。
だが、それでも、このコンビネーションサラダとの組み合わせが
最も多いだろう。

お兄さん、引き続いた一連の動作で、グラスに入った水を
出そうとしていたが、ビールの注文を聞いて、引っ込める。

ビールがきた。

ここのつまみは粒の揚げ餅。
今時、どこに売っているのか、と思うような、クラッシックな
つまみであろう。

ビールのグラスにはこの店のコックのイラストと
「うますぎて申し訳ないス!!」。

厨房向かって左では、私にメニューとおしぼりを出した
お兄さんが私のコンビネーションサラダを作り始める。

この場所が人がわかっても、サラダとカツサンドなどの
サンドイッチを作る場所。

揚げ餅をつまみながら、ビールを呑む。

目の前のガス台では、私のものと思われる、
チキンライス(チキラーとここでは略されている。)の
調理が始まっている模様。

コンビネーションサラダは、すぐにきた。

なんということのない、缶詰のホワイトアスパラがのった
レタスベースのサラダ、で、ある。
では、これのどこが好きなのかといえば、上にマヨネーズが
かかっているのだが、下の切ったレタスは、あらかじめ
マヨネーズで和えられている、のである。

普通のレストランでサラダとして出てくると、マヨネーズや
ドレッシングは普通、上からかけただけである。
(これは欧米流なのであろう。)
しかし、これでは、食べる前に自分で和えてから食べねばならない。
皆さんもそうされているであろう。
小さな皿だったり、ぴったりのサイズに盛り付けられていると
自分で和える間にこぼしたりしかねない。
この、あらかじめ和えてあるというのは意外に気が利いている
と思うのである。

そしてこのマヨネーズ。
自家製なのか、わからぬが、酸味が控えめ。
日本人の男性というのは、舌の酸味を感じる部分が多く、
酸味に弱いという。私も酸味はそうそう得意ではない。
これも、好きな理由。

目の前のガス台、チキンライスも終盤。
ケチャップを入れ、最後のあおり。
フライパンを火から外し、手首のスナップをきかせながら
どうであろうか、目の高さあたりまで、舞い上げている
のである。
毎度感心する。

出来た。

これは、なにがよいのかというと、やはり味が濃いこと。
下町の味?、浅草の味?、[ヨシカミ]の味、で、あろう。

うまい、うまい。

ご馳走様でした。





ヨシカミ




 


    

断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5 |

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |

2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |

2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |

2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |

2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |

2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |

2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |

2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月

2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |

2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |

2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 | 2015 11月 |

2015 12月 | 2016 1月 | 2016 2月 | 2016 3月 | 2016 4月 | 2016 5月 | 2016 6月 |

2016 7月 | 2016 8月 | 2016 9月 | 2016 10月 | 2016 11月 | 2016 12月 | 2017 1月 |

2017 2月 | 2017 3月 | 2017 4月 | 2017 5月 | 2017 6月 | 2017 7月 | 2017 8月 | 2017 9月 |

2017 10月 |



BACK | NEXT |

(C)DANCHOUTEI 2017