断腸亭料理日記2017

すみいか その1 にぎり鮨

9月30日(土)第一食

金曜夜、仕事帰りに毎度お馴染み、
御徒町の魚や、吉池に寄る。

閉店間際であったからか、随分と収穫。
芝海老、二割引き。

そして、すみいかが三杯一山で\300の半額。
つまり三杯、\150。これはアメ横並みではないか。

なにか訳あり?かと思うほど。
最近の店頭の様子では、倍でも安いと思うのだが。

まあ、吉池でそれほどへんなものはなかろう。

見た目では新いかというほど小さくはないが、
時期としては、よい頃ではなかろうか。

これは買わねば。
残っていた三山、全部購入。

芝海老はこの夜、から揚げで食べて、
すみいかは、翌日、土曜日。

全部で、九杯。
まずは、なにがよかろう。

すみいかは、江戸前を代表するいかで、
にぎりの鮨と、天ぷらが代表的なもの。

最初は、にぎりの鮨だ。

朝起きて、米を研いで、浸水しておく。

これ。

出してみる。

これがすみいか。

本当の名前は、コウイカであるが、
東京ではスミイカと呼ばれている。

西日本などではスミを洗って流通するというが
東京ではスミを洗わずに出回っている。
それでスミイカ。

他のいかに比べて、さばくのは少し簡単。
下足を引き抜き、甲を外す。
コウイカの類は、楕円形の薄い板のような骨が
甲にくっついている。
これを外す。
楕円の先端が尖っているので、手を切ることがあるので
注意が必要。

はらわたもきれいに取る。
この時に、スミの袋をつぶさないように
気を付けながら外さなくてはいけない。
つぶしてしまうと、真っ黒になり、スミが身について、
取れなくなる。

中側をきれいにすると、エンペラをきっかけに
皮をむく。
内側に二か所、ちょっと尖って硬い部分があるので
これは包丁で切っておく。
これをきっかけに、むければ内側の皮もむく。
むけなければ、むかないでもよし。
内側の皮もほんとうはむいた方がよいのであろうが
他のいかにくらべて、すみいかの内側の皮は
それほど邪魔にはならないように思っている。
(プロはむくのであろうか。)

下足とエンペラも食べるので、別に取っておく。

身の方。

ちょっとスミが残って残ってしまったのもある。

下足とエンペラ。

下足は目玉あたりから上を切る。
烏口(からすぐち)と呼ばれる口の部分も
食べられるので、取っておく。

飯は電気炊飯器で炊く。

炊き上がったら、きっちりと蒸らし時間を取る。

鮨酢は一合で40cc。
塩と気持ち味醂を入れる。
ほんの少し、甘みをつけようという意図。

木製の飯台に一合分の飯を取り、鮨酢をまわし入れる。

鮨やでは、酢飯を作ること自体を“切る”などというが、
文字通り、切るように混ぜる。

全体に酢が行き渡ったら“切る”のをやめ、空気に触れやすいように
広げておく。

ここから、7〜8分、置く。

酢飯というのは、難しいものである。
私も最近やっと少し分かってきた。

飯としての炊き上がりの状態。蒸らした時間、
気温、湿度、混ぜ方、混ぜた後の置く時間。
これらの要素が微妙に絡み合って、最良の酢飯が出来上がる。

日本の米というのは、炊き上がり時にはネバネバが
しっかりと固まっていない状態である。
これを蒸らして、表面に落ち着かせる。
ここで、鮨酢を合わせて、ご飯粒に鮨酢を含ませ、
同時にこの時持っているご飯の熱で、水分を飛ばし、
最初の蒸らし終了程度から、それ以下の状態、
ネバネバが表面に落ち着いている状態にする。
こういう作業であろう。

現象としてはかなり複雑で微妙なことをしているのだと思うが、
にぎり鮨が生まれた、江戸後期のことだとして、よくまあ、
こんな技を考え付いて、うまい酢飯を作れるようになったものである。
(ただ、にぎりの鮨が生まれた頃、すみいかはまだ生ではにぎられて
おらず、明治を待たねばならなかったという。)

すみいかは、一杯分一枚の半分でにぎり一つ分。
これはちょっとでかい。
ただ、1/3だとちょっと小さいか。
半分でにぎってみる。

できた。

にぎるのも大分慣れてきたか。

味は?。

まあ、上々。
すみいかは、十分に柔らかいし、あまい。

一杯¥50でこれが食べられれば上出来であろう。

にぎりの鮨で三杯。
まだ六杯分ある。

天ぷらだが、これは明日だ。

 



    

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