断腸亭料理日記2018

浅草・そば・尾張屋本店

4月1日(日)午後

日曜日。

今日もよい天気。
桜はもうほぼ終わっている。

午後、自転車で出る。

行く先はまず、合羽橋。

先日の、鉄製のステーキ皿を見に、で、ある。

きてみると、ステーキ皿というのは、意外やけっこう高い。
鉄の鋳物のようで、一枚3,000円、4000円といった
あたり。

こういうものは、一度アマゾンで値段を見た方が
よいかもしれぬ。
(合羽橋というのは、一概に安いものでもないのか。
後刻アマゾンで探してみたら、ディスカウントか、二枚で2,000円弱と
いうものもでてきた。結局、円形の大きなものを1枚2000円ちょいで
買った。)

さて。

小腹がすいた。
なにかちょいと、食べよう。

とすると、そばだ。

休日なので[並木藪]はさけて、、、
[おざわ]、[長浦]は営業時間外でふられ、
[尾張屋]になった。
ここは、天丼が看板なのだが、今日はそば。

こちらは昼夜通し。
硝子格子をあけて入る。

半端な時刻で、あいていた一階のテーブルに掛ける。

ここでそばを手繰ることは、かなり稀。
ほぼ天丼。
大きな海老天で濃い味の天丼は、うまい。

冷(ひや)で一本もらおうか。

そばは、とろろあたりか?。

ん!?、待てよ。

品書きを見ると、海老切り、というのが目についた。

いわゆる変わり蕎麦。
ゆずを練り込んだ、ゆず切り、なんというのが
よく聞くものであろうか。

これは桜海老を練り込んだもののよう。

やはり、季節のものを入れることが多いと思われる。
あまり、やっているところも多くはないし、
私もめったに頼まない。

[尾張屋]はいつもなにかしら変わりそばを用意していたのでは
なかったか。

もらってみようか。

注文を取りにきたお兄さんに、お酒一合冷と、海老切り、と頼む。

お酒はすぐにくる。

ここは大関のガラス瓶の一合をそのまま出す。
(冷は冷酒のことではなく、ヒヤ、で常温のこと。
ちゃんと常温であった。)

浅草はこのガラス瓶の一合をそのまま出すところは
意外に多い。
お燗もつけやすいし、お店にとっては便利であろう。
私自身は慣れているが、若干の味気なさは否定できない。

しかし、ここはいろいろなお客がくる。

もともと国内の観光客も多かったが、今は、
外国人も少なくない。

外国人でも中国系とみられる人。

こんなところで、ぐずぐずいうのもどうかと思うが、
そばの食い方はは誰か教えてあげてもよいのでは、
なかろうか、と思えてくる。

つゆに全部を付けない、ということ。

が、まあ、これ、日本人でも田舎の人は、わかっていない人は
よくみるが。

全部つけてしまうと、濃すぎるということ。
特に東京下町のそばつゆは。

それ以上にそばの食い方というのには大きな意味があるのである。

例の、歌舞伎「雪暮夜入谷畦道」そばやの場。

五代目菊五郎と黙阿弥翁が作り出した、舞台である。
そばやで、男が粋にそばを食う、という美学を描き出した。

金を出しているのだから、どう食べても勝手と
いってしまえばそれまでだが、江戸・東京の男にとって、
そばやでどう振る舞うかというのは、大問題なのである。

これが取りも直さず、文化、というもの。

と、ゴタクを述べているうちに、きた、海老切り。

桜花の季節らしい、桜色。
どんな味か?。
そばの味など、ろくにわからぬ私だが、試しにつゆをつけずに
食べてみる。

う〜ん、微妙。
正直のところ、よくわからない。
基本、白い更科粉に入れているのだと思うのだが、
更科粉らしい味はわかるが、それ以上は判別不能であった。

ということで、あとは、つゆをつけて、手繰る。

前にも書いていると思うが、一口、一息で手繰らねばならぬので、
それができるくらいの量を箸で取るのがポイント。
そうすれば、そば猪口に全部を入れずに済むのである。
つまり、ざるからそばをつまみあげ、つゆにつけ、箸から離さずに、
一気にすする。これを一連の動作で行う。

もう一つ、気になるのは、レンゲ。
以前はそばやではレンゲの類は出さなかったと思う。
むろん、温かい蕎麦の場合である。
温かい蕎麦は丼を左手で持って(せめて左手を添えて)
手繰るのである。これが正しい作法のはず。
ラーメン丼ではないので、そう重くはない。
持てるはずである。(昔の温かいそばの丼は今一般的
なものよりも小さかったと考えている。[並木藪]の
丼はちょいと小ぶりである。)だから、夜泣き蕎麦など
往来で立って食べられたのである。

ともあれ。

ご馳走様でした。

海老切り、季節らしいものを食べるのはちょいと豊かな
気分、になる。




台東区浅草1-7-1
03-3845-4500




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