断腸亭料理日記2018

五反田〜赤羽橋

麻布飯倉野田岩本店・別館その4

長々と都バスの路線沿線から書いてしまったが、
お愉しみの、麻布[野田岩]。

白焼きと、うな茶のついた、セットを頼んでみた。


ビールがきて。

コースター。

おわかりであろうか。
なにか文字が書いてある。

「菊五郎丈曰く

 親父が四代

 倅が五代

 己が六代目」

とある。

ちょっと謎めいているが、ここでいっている
六代目が文字通り、六代目菊五郎のことであろう。

当代菊五郎が七代目なので、先代にあたる人。
歌舞伎界でただ六代目といえば、六代目菊五郎を
指すほどの人のよう。

近所に住んでいたのか、よくこの店から
うなぎを取っていたとのこと。
六代目は戦後すぐの昭和24年63歳で亡くなっているので
むろんこれよりも前の話。
戦前のことかもしれぬ。

今、この店は五代目を名乗っているが
当時は先代、四代目の時代で、今のご主人はおいくつだったか
わからぬが、倅というのは、今のご主人のことなのであろう。

煮凝りがきた。

むろんうなぎを使っているのであろう。
うまい。

白焼き。

銀、ではなくステンレス?、色のお重。
またまた、もったいをつける。

開けると。

こんな感じ。

運んできたお姐さんが、塩でも食べてみてくれといっていた。

毎度書いているが、この店に限らないが、
東京のあるところから上の、うなぎやの白焼きは、
もう、この上なく、うまい。
生ぐさみもなく、ほんわかとしたあまみ。
まさに、江戸前の味である。

むろん、私は大好きではあるが、
普通、一人でくると、かば焼きのお重を頼むと
白焼きは、予算の都合で頼めなくなる。

だが、こうして、セットで出してもらえるのは
ありがたい。

ビールからお酒に。

(まあ、くどくど書くのもいやになったが、ここでも
パートなのか、いささか高齢のお姐さんに「お燗」といったら
「熱燗ですか」とやられてしまった。
「熱くしないで」「じゃあ、ぬる燗?」「ぬるくもしないで」
「??」「熱くもぬるくもない温度で」。すると、
板場に「お酒お燗。熱くもぬるくもない温度〜〜」だってさ。
むろん私に聞こえている。この言い草、なんたることか。
看板に触るというもの。)

そして、うな茶がきた。

こう、いくつも皿が並ぶのは、うなぎやらしくないが
ちょっとうれしいかもしれぬ。
奥は、お新香とここお得意の箸休めのおろし。

あけると。

名古屋のひつまぶし式に、薬味も、海苔、ゆずなどある。

最初は、そのままお椀によそって。

出汁をかけることを前提にしているのだと思うが
かば焼きの味はどうなのであろうか、変えているのか
よくわからぬが、過不足なく、うまい。

二膳目は出汁をかけて。

名にし負う[野田岩]の仕事、まあ、まずいはずがない。

名古屋で食べるひつまぶしの出汁と同じようなものの
ようには感じるが、どうなのであろう。

東京のかば焼きのたれは、そもそも出汁やお茶を
かけて食べる、うな茶は想定していないので、
普通のかば焼きででこれをやってしまうと、
実際にやってみたことがあるが、たれ味が負けてしまう。

名古屋のものは、たまりじょうゆが入っているから
なのか、わからぬが、むろん、出汁をかけても
うまい、かば焼き。

今回のもの、特に不都合は感じなかったのは
うな茶用にたれを変えているのか、それとも
もともと、ここのたれは、出汁やお茶をかけても
負けない味だったのか。

また、名古屋以西は、蒸さずに焼く。
これも違っている。

出汁をかけると、東京のふわふわのかば焼きだと、
溶けてしまう?。
まさか、そんなことはないか。
だが、焼き方、蒸し方も普通のかば焼きとは
変えているのかもしれぬが。

いずれにしても、余人ではない、この店が半端なものを
出すはずがない。

どこへ出しても恥ずかしからぬ、うな茶では
あると思う。

うまかった、うまかった。
ご馳走様。

うな茶というのが東京で今はほぼないが、
以前はあったのであろうか。
こういう食べ方が東京でも選択肢の一つとして
あってもよろしかろう。







麻布・五代目野田岩

電話番号:03-3583-7852
住所: 東京都港区東麻布1丁目5−4







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