断腸亭料理日記2019

浅草・弁天山美家古寿司 その1


12月14日(土)第二食

さて、土曜夜。

浅草[弁天山美家古寿司]

そう久しぶり、ではない。
書いていなかっただけ、ではある。

家で、赤酢の鮨をにぎっていたりするが、
むろん、プロのものは別物。

だが、最近、鮨やとなると、ここになっている。

近くて、もちろんちゃんとした鮨や。
そして、なにより、居心地がいい。

鮨やもいろいろなところに行ったが、
たどり着いた、という感じであろうか。

江戸で生まれたにぎりの鮨。
おそらく、その最も古い暖簾の中の一つといってよい。
また、私の住む浅草であること。
ここでよい、ここがよい。そんなところであろう。

私の場合、いつもその日食べるものは、その日決める
のだが、ここは、なかなかその日の予約では、入れない。
今日、入れたのはなん回目か、ではあった。

5時の予約。
春日通りからタクシー。

江戸通りから、吾妻橋西詰を斜め左、馬道通り。
浅草二丁目の信号。
伝法院通り、あるいは東武のガードの通り。
ここで降りて、ちょい先、左側。

弁天山は地名である。

なん回か書いているが、浅草寺の境内の南東端っこに
小山がある。ここに弁天様のお堂がありこれが弁天山。

その隣なので[弁天山美家古寿司]。

創業慶応2年。
当代親方で6代目。

江戸創業の鮨やの暖簾というのは、もう数えるほどしかない。
なん代もなん代も、時代を越えて暖簾を続けるというのは
それほどたいへんなこと、なのであろう。
業態にもよるのかも知れぬ。
うなぎやなどは、浅草にも多いが、江戸創業は数軒ある。
鮨も安くはないと思うが、違いは客単価なのか。

5時到着。
自動ドアを開けて、入る。

名乗って、カウンターの手前、親方の前に掛ける。

瓶ビール、キリンをもらう。

お通し。

左がするめいかのみみの甘だれかけで、
右がほっきのひも。

ほっきのひもは甘酢。

いかのみみが秀逸。
なにがといって、歯応え。

歯があたるとサクッと切れ、プリプリ。

するめいかは高くなったとはいえ、どこにでもある。
家でも食べるが、この食感はできなかろう。
ものも違うのであろうが、茹でる技が光っている
と思われる。

つまみをもらう。
平貝の磯部焼き。

薄い。
普通、この倍ほどの厚みに切るようのではなかろうか。
食感がおもしろい。

たこを切ってもらおうかと思ったのだが、
珍しく、ない、とのこと。
江戸前を看板にする鮨やで、たこは、その看板の
一つであろう。
ない、というのは、豊洲になかったか。

かわりに、というので、蝦蛄。

右が雌で、子持ち。
聞けば、時季は今頃という。

子持ちもうまいのだが、
ただ茹でただけではない、味が付いて、これがうまい。
薄めのしょうゆ、ちょっと鰹の香り。
鰹出汁で煮ているのか。

こんなところで、にぎってもらう。

以前は、おまかせやコースを頼んでいたが、最近はお好み。
コースだと、つまみから、いつも同じものが出てきてしまう
のである。にぎりはともかく、つまみはさすがに同じでは
おもしろくない。

まずは、いかと白身。

白身は鯛もあるが、平目の昆布〆。

ちょっと陰になっているが、お気付きであろうか。
ここは赤酢の酢飯ではない。以前からだと思う。「江戸前」を標榜
鮨やだが、白い酢飯。今度理由を聞いてみようかしら。

ともあれ。いかは、念のため聞いたが、もちろん、すみいか。

口に入れる。

ん!。

これ、すみいかでも、ちょっと違う。
歯を入れた瞬間の反発の強さ。
むろん、その後は、あまい。
ものがよい、のであろう。
だが、すごいすみいかである。

平目昆布〆。
昆布〆は私は生よりもうまいと思うのである。
水分が抜けてねっとりとし、旨味が加わる。
昆布〆は北陸などでは多用されるし、なにも江戸前だけの
仕事ではないが、とっても、わかりやすくうまくなる和食の
技ではなかろうか。

 

 

つづく

 

 

弁天山美家古寿司

台東区浅草2-1-16
03-3844-0034

 

 

 

 

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