断腸亭料理日記2019

断腸亭落語案内 その23 志ん生・三軒長屋


引き続き、志ん生師「三軒長屋」。

ストーリーはわずかなもので10分程度で終わるであろうものを
1時間にも膨らませている。
その枝葉のディテールを追っている。

喧嘩の仲直りに鳶頭の家の二階を姐(あね)さんに借りる。
皆が呼び込まれる。

A「姐さん、こんちはー」
姐「おや、松っぁんかい」
B「えー、こんちはー」
姐「おや、こうさんかい」
C「こんちは」
姐「あ、こんちは」

・・・(中略)・・

姐「大勢きたんだねー!。まー。なんだい?」
男「さーあがった、あがった、あがった。
  そこへ、ぶる下がっちゃいけねえ。」

二階へ上がろうとする若い者へ

男「おう!、おう!、手前(てめえ)なんだい!。」
若「えー、わたくしはねえ、、」
男「わたくしだぁ〜?この野郎、カタクチみてえなツラしやがって。
  なんだい!?」
若「二階に上がって、皆さんと、、」
男「皆さんと仲直りすんで、二階(ニケエ)で一杯(いっぺい)呑もう
  ってのか。
  なぁ〜〜〜にを、いいやがんでぇ。うぬなんぞ、二階で酒呑むガラか。
  縁の下で飯でも食らってろ。馬鹿野郎め。
  二階は役付きばかりだ。降りてろぃ。降りねえか!?蹴落とすぞ!。」
姐「まただね。お前は。それがいけないって、いってんだろ。
  ふん!、しょうがないね。
  おい、おい、兄ぃ。
  お前だって、二階上がったってしょうがねえよ。
  下にいて少し、用しとくれ。」
若「へー、どうもすいません。
  うっかり上がろうとしたら、怒鳴りつけられちゃったんで。」

姐「おーい!。
  なんかきたよ。
  魚やさんかい?
  誂えてきたの?刺身かい?

  あー、酒やさん?。酒持ってきたの?。
  みんな誂えてきたんだね、、

え?、炭なんぞいいんだぁね、ウチのを使やぁ。

  おー、奴(やっこ)、七輪のなかへ火種入れてね、
  その人に、熾(おこ)してもらいな。
  んで、お前は徳利やなんかの用意してな。」

(奴というのは、鳶頭の家にいる雑用をする若者。)

若「へい。
  おー、火種入れたか?よし。俺が心得た。

  へい。
  どーも、姐さん。
  お騒がせ申してすみません。

  鳶頭は?え?、お留守。
  お宅の鳶頭はいい鳶頭ですねー。
  あっしみてえな、こんな三下(さんした)ぁ捕まえても、表で会う
  ってえと「おう、兄ぃ儲かるけぇ?」なんて言われるとね。貫禄が
  あってそういわれるんだから、こっちゃぁ頭ぁ下がっちゃうよ。
  二階の奴ら、威張(えば)る一方なんだから。」

すると、表を、飛び切りいい女が通り、隣へ入っていく。
若い者は目の色を変えて、見る。
姐さんに聞くと、お妾さんで表の質屋[伊勢勘]の親父の持ち物だ、と。

若「え〜〜〜?あんなの?あの爺(じじい)!。あんな若い?!
  いい年しやがって。
  こちとら、若くって、一人でいて。
  歯なんぞありゃねえじゃねえか。」
姐「歯がなくてもいいじゃねえか。歯がなくたって、銭があらぁ。
  お前、銭がねえじゃねえか。」
若「銭は、ねえや。なー。
  やっぱり銭だね。」
姐「そうだよ。なにごとも金の世の中。
  旦那、あれ買って下さい、これ買って下さい。あいよ、あいよ、
  という目が出りゃぁ、言うことも聞かぁな。」

姐さんは、ここで湯へ行く。

若「奴ぉ。姐さんの下足(げそ)出して。

  はい。留守は引き受けました。ゆっくり行ってらっしゃい。

  姐さんもいい女だけど、ちょいっと、もう、とうがたっているなぁ〜
  さっきの女ぁ、いい女だったねー。もういっぺん出てこねえかなぁ。
  あすこんち、行ってみりゃ、出てくるかしら。
  「ちょいと、お尋ねします。隣の鳶頭んところはどちらでしょうか?」

  二階の奴らぁ、見られやしねえ。

  ん!?出てきた。

  なんだいありゃ!。

  おーう、二階のぉ〜!下ぁ見てみな、へんなものが通るから!」
 「なんだ、なんだ」
 「なんだへんなものって」
 「あ、あれだ、あれだ」
若「あー、たいへんな女が通りゃがんなー
  なーんだ、駆け出しゃがった。
  太ってやがんなー。
  駆け出すより、転がった方が速えぞ!、オメエは。

  やい!
  こっちみて、泣いてやがる」
 「化け物ぉ〜〜〜〜」

妾「どうしたの?
  なんで泣くんですよ。

  隣の若い人が、お前のこと化け物だって、言ったってぇ?。

  だからわたしが、そ、いってるでしょ。
  今日は若い人がたいへん寄ってっから、表、出ちゃいけないって
  言ってるのに。お前さんが勝手に出てそんなこと言われてきて。
  あたしゃ知りゃぁしないよ。

  泣いてちゃいけませんよ。旦那がおいでなすったよ。」

伊「はい、こんちは。
  あー、なんだい?。」
妾「いーえ。これが表へ出て、隣の若い人にね、化け物、化け物って
  いわれてね、悔しくって泣いてるんですよ。」
伊「そーか。うっちゃっとけ、うっちゃっとけ。
  どうせあんなやつらだ。
  俺が今、この裏通ってくるとな、「ヤカンが通る、ヤカンが通る」って
  いいやがんだ。俺、ヘンだと思って、上ぇ見たら、俺の頭指差しゃがって、
  ゲラゲラ笑って。
  癪に触ったけど、なんたって相手が相手だからな。仕方がねえから
  ま、我慢をしてるんだ。」

 

つづく

 

 

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