断腸亭料理日記2020

上野・とんかつ・井泉本店

8月31日(月)第二食

なんだか肉ばかり食べているようだが、
上野のとんかつ[井泉本店]、で、ある。

数日前から、行かなくてはいけないような
気がしていた。

しばらく行っていなかったと思うが、
見返すと、3月であった。

やはり時刻は外した方がよいだろうと、
13時に自転車で出る。

雲はあるが、日は出ている。

少し酷暑は収まったようだが、やはり今日も暑い。

春日通りを真っすぐ西へ。
多慶屋を越えて、御徒町駅もすぎて、広小路を
渡って、最初の左の路地に入る。

道なりに[井泉本店]の角。
店前の路地の反対側に自転車をとめて、
格子を開けて入る。

いらっしゃいませ〜。
一人、と、指を出す。

白木のカウンターは無人。
右側のテーブルに若い男女が一組いるだけ。

カウンターの手前正面、
ちょうどとんかつを揚げる油の前。

こんな時にはここがよいだろう。

掛ける。

お兄さんがメニュー。
ちょっと遅れてお姐さんがお茶の土瓶と湯呑を
持ってくる。

迷わず、メニューは見ずに、瓶ビール。

それから、かにと胡瓜のサラダ。
とんかつは特ロース。
もう、判で押したようにおんなじ。
もちろん、ご飯、豚汁はなし。

あ!。

目の前に、日替わりの持ち帰りサービスという
貼り紙に目が留まった。

ここも時節柄、というやつか。

今日は月曜日で一口ひれかつが
一つ、150円。追加で4つ頼む。

瓶ビールがくる。

目の前の厨房で3人、4人の料理人たちがきびきびと
動く。

かにと胡瓜のサラダがすぐにできた。

いつも通り、いや、いつも以上に
極上のパリパリ。

右後ろのテーブルの若い男女の男性の方。
低音なのだが、妙に響く声。
静かな店内なのでよく耳に届く。
届くのだが、はっきりと内容まではわからない
という微妙な感じ。

芸大か東大か?。
まったく関係ないのかもしれぬが。
若い先生と学生?。
男性がなにか一生懸命説明をしているよう。
女性の声はほとんど聞こえない。
時々、頷いているのか。

昼下がりの上野らしい。
落ち着いた古い上野の雰囲気を持っているこの店に
合っている空気、かもしれない。

特ロースもきた。

ロースが1320円也、特ロースが1595円也。
この違いはなにか。
特に味に違いはなく、大きさではなかろうか。

切り口。

厚みも違うかもしれない。

お箸できれる、が、ここの売り文句であるが、
その通り、柔らかい。
おそらくこれもなにか仕掛け、工夫があるので
あろう。

だが、それ以上にここの特徴は衣であろう。
ちょっと粒が大きめのパン粉で、明らかに
普通のとんかつにはない特別な味が付いているように
思われる。
むろん、サクサク。
香ばしいのであるが、もう少しなにか
パン粉だけではないプラスアルファ。

今日は、目の前でパン粉を付けているのを
じっくり見ていた。
ちょっと若い職人さんでたっぷりのパン粉を、
いつものご主人(?)よりもゆっくり、
丹念に丹念に肉の上、下、横と付けていた。
ただやっぱり、パン粉は生ではあるが、特別な
ものには見えない。
なんであろうか、秘密があるはず。

ともあれ。

ビールとともに、食べ終わる。

ご馳走様。
おいしかった。

立って、帳場で会計。
ここは、カードは使えない。

持ち帰りの一口ひれかつ四つももらって出る。

とんかつ[井泉本店]、浅草とも違う、
昭和の上野らしさを感じられる、稀有な
ところであろうと想像する。

 

 

井泉本店

文京区湯島3-40-3
03-3834-2901

 

 

 

断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5|

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |

2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |

2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |

2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |

2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |

2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |

2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |

2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月

2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |

2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |

2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 | 2015 11月 |

2015 12月 | 2016 1月 | 2016 2月 | 2016 3月 | 2016 4月 | 2016 5月 | 2016 6月 |

2016 7月 | 2016 8月 | 2016 9月 | 2016 10月 | 2016 11月 | 2016 12月 | 2017 1月 |

2017 2月 | 2017 3月 | 2017 4月 | 2017 5月 | 2017 6月 | 2017 7月 | 2017 8月 | 2017 9月 |

2017 10月 | 2017 11月 | 2017 12月 | 2018 1月|2018 2月| 2018 3月|2018 4月 |

2018 5月 | 2018 6月| 2018 7月| 2018 8月| 2018 9月| 2018 10月| 2018 11月| 2018 12月|

2019 1月| 2019 2月| 2019 3月 | 2019 4月| 2019 5月 | 2019 6月 | 2019 7月| 2019 8月

2019 9月 | 2019 10月 | 2019 11月 | 2019 12月 | 2020 1月 | 2020 2月 | 2020 3月 |

2020 4月 | 2020 5月 | 2020 6月 | 2020 7月 | 2020 8月

BACK | NEXT

(C)DANCHOUTEI 2020