断腸亭料理日記2020

豆富料理・根岸・笹乃雪

8月22日(土)第二食

暑い。
あまり外に出ないので、糖質を食べすぎない
ように気を付けねば、というのがこのところの
課題。

とすると、冷奴。

これしかあるまい。

豆腐となると、ここだ。

根岸[笹乃雪]

元禄4年(1691年)創業という。
東京で豆腐料理店としては江戸創業の唯一の存在であろうし、
すべての飲食店の中でもおそらく最古の部類であろう。

上野の山影、根岸の里。
寛永寺の宮様について、京都から江戸へきたのが
その始まり。明治以降も、宮家との縁は続いているよう。

また、明治、まだ鶯谷の駅がなかった静かな頃、
近くに住んだ正岡子規。

水無月や根岸涼しき笹乃雪

句をいくつか残してもいる。

こんな時期でもあり、予約をしなくとも大丈夫であろう。

タクシーで向かう。
拙亭のある元浅草からは1000円ちょい。

Tシャツ、短パンに素足に雪駄。

言問通りから尾久橋通りに曲がり、店前で降りる。

硝子戸を開けて入る。
下足のお爺さんに予約のないことを伝え、
あがる。

以前はフリの場合は階下であったと思うが、
今、席は二階のよう。

大きな座敷にテーブル席。
同じようなことを考える人が多いのか。
にぎわっている。

掛ける。

壁に浮世絵風のものが掛かっている。
歌舞伎であろうか、張り交ぜのようなもの。
なんであろうか、これ。一点もののようだが。
ここは、宮様筆の書だったり、その歴史からかなりのお宝が、
なにげなく飾られていることがある。
これもいわれがありそう。

ここは、コースもあるのだが、いつもバラバラと頼む。

まず、ビール。
豆腐料理店なので、基本豆腐系のものしか
ないのだが、唯一の肉料理、焼き鳥。

それから、もちろん、奴。
大きいので一つでよいか。

そして、看板のあんかけ豆腐。
がんもどき=飛龍頭。

胡麻豆腐。
こんなものでよいか。

奴から。

豆腐だけでもここに買いにくるのだが、
とにかく濃厚。

そして、笹乃雪の代名詞ともいえる、あんかけ豆腐。

上の黄色いのは溶き辛子。
豆腐もむろんうまいのだが、餡の出汁が絶妙。
流石の味。

小さいものだが、二つで一人前。
江戸の頃、宮様が、おいしいので、次からはお替りを
同時に出すように、と仰ったという謂(いわ)れがある。

焼き鳥。

やっぱり、肉っ気は一品くらいは食べたい。

胡麻豆腐。

よく考えたら、胡麻を固めたもので豆腐ではない。
たれは、甘い味噌。江戸甘味噌ではなかろうか。
黒胡麻の香りというのは、なんともいえなく癒される。

飛龍頭。

がんもどき、なのだが、ヒリュウズ、あるいヒロウス。
関西の言い方といってよいのか。

あんかけ豆腐とは違って、餡も含めてかなり甘い味付け。
中は具沢山。
東京だとがんもどきは、しょうゆで濃く煮付ける
のが普通であるが、この濃い甘さも江戸の味
だったのかもしれない。

ご飯もあるが、もちろん食べない。

だが、十分満足。
ご馳走様でした。

年のせいであろうか。
こういうものの味で、満たされるように
なってきている。
以前では考えられなかったかもしれぬ。

会計は、階下で。

玄関に掛かっていた、古い柱時計。

金杉[鳥平]というのは、今はもうないが、金杉通りと柳通りの
交差点そばにあった人気の焼き鳥やのよう。

後で気が付いたが、右の写真は在りし日の根岸名代のお行の松。
こんな立派なものであったのである。

 


笹乃雪

 

 

 

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