断腸亭料理日記2020

じゃがいものコロッケ

2月2日(日)第二食

ポテトコロッケ、で、ある。

肉やさんのじゃがいもコロッケ。

拙亭近所には、いわゆるお肉やさんがもはや少なく
買うとすると、デパートなどに入っている[井泉]だったり、
とんかつ店の揚げ物としてということになる。

つまり気軽に買い食いするものでは、なくなっている。

ご覧になった方も多いかもしれぬ。
先週のNHK「チコちゃんに叱られる!」。
「なぜ、肉やさんにコロッケがあるのか?」

まさに、知らなかった。
私も、ボーっと生きてました。

元祖があったということ。
番組では名前は出されていなかったが、東銀座の[チョウシ屋]さん
という昭和2年創業の精肉店のよう。

初代のご店主が洋食の修行をされて、独立したのだが、
開店資金が足らず、洋食店は開けず、精肉店を始めた。
この時、肉だけではなく、本職であった洋食で、安く売れる
じゃがいものコロッケを売り出したのだが、これが広まった
ということ。
日本ではじゃがいものコロッケはまさにあたり前のメニューだが
番組によれば、じゃがいものコロッケそのものも、この初代の方が、
考えたものとのこと。肉やのコロッケの元祖どころか、
じゃがいものコロッケの元祖でもある、と。
さらに肉やさんで、コロッケ以外にも様々な揚げ物を作って
売るようになったことの元祖にもなろう。

確かこのご主人はレシピを同業の肉やさんに公開され広まった、
と番組では言っていた。見上げたものである。

今も、三代目であったか、が東銀座で営業されている。
サンドイッチなども売られているよう。一度行ってみなければ。

さて。
ここまではよいのだが、コロッケのこと、ちょっと考察。
ちょっと重箱の隅をつつくことようなことになるのだが、
おもしろいので、書いてみる。

あのじゃがいもで小判型の肉やさんのコロッケは
この方が広めたのはおそらく正しい、のであろう。
どこもあの形で挽肉と玉ねぎみじん切りが入っているのは
まさに同じレシピからのものであろう。

だが、じゃがいものコロッケがこの方が本当に元祖なのか、
というのは、ちょっと疑問があるようなのである。

ウィキペディアのコロッケの項

によれば、じゃがいものコロッケは明治28年には既に一般化
していたともいう。出典も明示されているので正しいのであろう。

また大正時代に「コロッケの歌」というのが流行っている。
「今日もコロッケ、明日もコロッケ・・・」というあれ。
(益田太郎冠者作詞〜この人、おもしろい。 明治から大正の
男爵で実業家。さらに、明治から大正の軽演劇の脚本家、落語「宗論」
「かんしゃく」の作者でもあるよう。知らなかった。
ウィキペディア

この歌は新婚家庭の毎日のおかずが、コロッケと言っている。
大正時代には既にコロッケは一般家庭で作られていた。
これは史実であろう。

この大正期に作られていた家庭のコロッケがどんなもので
あったのか。これはじゃがいものコロッケではなかったのか。
そう予想できるではないか。ベシャメルを作るのが家庭で
一般化してはいなかろう、と。

じゃがいものコロッケは明治終わりから一般化して、家庭でも
作られていた。だが、形、レシピは現代に伝わっている肉やの
じゃがいもコロッケとは違っていた。そういうことでは、
なかろうか。私の仮説であるが。

だが、この明治の家庭のコロッケは、戦後、現代まで家庭には
伝わっていない。これはおもしろい。

おそらく東銀座の[チョウシ屋]さんが広めた肉やさんのコロッケが
どこでも安く買え、家庭では作らなくなった。これも私の仮説。
じゃがいものコロッケは材料費は安いが、かなりの手間がかかる
ことは、一度作ってみればおわかりになろう。

では、明治の家庭で作られていたじゃがいものコロッケは、
どんなものであったのか。これも気になる。
これは私の継続調査にさせていただこう。

だが、流行歌にもなるほど一般化していた家庭のコロッケが
その後、あまり作られなくなったとすると、ちょっとおもしろい。

と、いうことで、その手間のかかる、じゃがいものコロッケを
作ることにした。

だが、ここでちょっと考えたのである。

挽肉・玉ねぎ、小判型の[チョウシ屋]版じゃがいもコロッケ?。

いや、待てよ。
ちょいと、思い出した。

昨日の、鱈の白子の残りがまだある。

あれをじゃがいもの中に入れてコロッケにする。

え?、と思われるかもしれない。

実は、こういうレシピは、存在するのである。

和食の料理人が考えたものだと思う。

鱈ではなく、鯛の白子などでも作る。
以前にこのレシピをなにかで見た記憶があったのである。
ある程度、和食料理人の間では一般的なのであろう。
実際にも小さいものを和食割烹のお通しのようなもので
食べたような記憶もある。

全部ではなく、半分は[チョウシ屋]版でもよいだろう。

買い出し。

じゃがいも、パン粉、油が切れていた。
玉子も。
挽肉はボロネーゼに使った残りを冷凍してある。
玉ねぎもある。

じゃがいもは、長崎産新じゃが、大きなもの。

作る。

 

つづく

 

 

 

 

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