断腸亭料理日記2020

蕎麦・神田まつや

1月5日(日)夕

引き続き、1月5日。

国立の芝居がはねて、タクシーで神田須田町へ。

半蔵門からの帰り道、どこへ行くかというと、
神田須田町。便利、なのである。

内濠通りから、靖国通りを真っすぐ。

須田町だと、あんこう鍋の[いせ源]もあるし [やぶそば]もある。
昨年の正月は、こちらであった。
ウイークデーであれば、軍鶏鍋の[ぼたん]もある。

今日は神田[まつや]。

着物を着ているので[やぶそば]よりも、こちらの方が、
気分が出るではないか。

4時半。
このくらいの時刻であれば、すいているであろう。

硝子戸を開けて入る。

案の定、席にはだいぶ余裕はある。

座って、お酒お燗。

つまみは?まずは、天ぬき。
寒いのでちょうどよい。

あとは、わさびいも、うに、あたり。

酒と、そば味噌、わさびいもと、うにがきた。

酒の燗は?。
ちょっと、熱いか。
それとも、冷えていたせいか。
湯気は出ていないが、熱めである。
もちろん、いつもの通り、ただ、お燗、としか
言っていない。

ここの酒は、なんであろうか。
辛口だが、菊正であろうか。
薮であれば、四斗樽を見えるところに置いているので
わかるのだが、ここはそういう真似はしていない。

わさびいもというのは、味が付いていない、とろろ。
ここはわさびがのっている。
藪蕎麦にも同じ名前である。
じょうゆで食べる。

うに。
ここには、つまみに、うにが昔からある。
店頭でも売っており、暮れの年越しそばを買いに来るときに
毎年、同じもの、下関の[岡本]というところのもの、を
買っていた。
しかし、数年前からなぜか店頭では売らなくなっていた。
一瓶、3000円超というなかなかのものであったのだが、
うまかった。

なめてみると、岡本のものではない?、
扱いをかえたのかもしれぬ。

天ぬきも、きた。

冬、そばやにくると、かなりの確率で頼んでしまうのが
天ぬき。

天ぷらそばの、そば抜き。
つまり、温かいそばつゆに、天ぷらだけが浸っているもの。

これを酒の肴にする、のである。

歌舞伎座で演っていた「河内山」のもう一つの話。
直侍(なおざむらい)の出てくる、入谷そばやの場。
五代目菊五郎がそばやでの江戸っ子の振舞い、粋な美意識を
詰め込んだ芝居。
ここで、天ぷらそばを、テン、と略している。

天ぬきを、それ風にいうと、テンのヌキ。

この場合、テ、と、ヌ、にアクセントがくる。

ともあれ。
ここは藪蕎麦と違って、天ぷらはかき揚げではなく、
一本の海老天なので、テンのヌキはこういうことになる。

天ぬきは、フニャフニャになった、衣がうまい。
従って、衣の多いかき揚げの方が、合ってはいる。

お酒をもう一本。今度は、ぬる燗と指定する。
つまみも、追加。
葉わさびと、焼鳥。

葉わさび。

乙、で、ある。

焼鳥。

そばやだが、ここには焼鳥がある。
これがまた、ふっくらと焼けており、うまい、のである。

呑み終わり、もりを頼む。

ここは、わさびは付いていないが、
盛りが多い。

ご飯ものも置いているし、うどんもある。
老舗には珍しいといってよい、庶民派、で、あろう。

これが、池波先生が贔屓にした理由の一つであった。

息も継がずに、手繰り込む。

うまかった、うまかった。

ご馳走様でした。

勘定をして、出る。

今日は、芝居もよかったし、
なかなか充実の一日であった。

神田まつや

03−3251−1556
千代田区神田須田町1−13

 

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