断腸亭料理日記2021

赤酢の酢飯で白魚軍艦、白魚天 その1

2月10日(水)第二食

さて、白魚、で、ある。

先日、節分に食べようと思い、
吉池に買いに行ったがなかった。

やっと見つけて、買ってきた。

東京都の木というと、銀杏(いちょう)である。
花は桜、ソメイヨシノ。
鳥も決まっていて、ユリカモメ。

では魚は?。

魚を決めている都道府県があるのか、
わからぬが、東京には、ない。

江戸・東京の魚といえば、白魚、ではなかろうか。

調べると、戦後すぐまで隅田川河口で獲れていた。

江戸期、寒い時期、主として佃島の漁師が
夜、篝火(かがりび)を焚いて四手網で獲っていた。

これは広重の『江戸土産 佃白魚網夜景』。

白魚というのは、初代将軍徳川家康の好物であった
という。定かではないが家康は、白魚を江戸湾に移入させた
という話も残っている。

江戸開府時、家康は大坂湾、摂津佃村の漁師を呼び、
隅田川河口に埋め立てて作った島に住まわせ漁を行わせた。
これが佃島で、彼らは将軍家のための漁師である。
彼らは江戸の前の海(江戸前)の独占漁業権を与えられ
将軍家へ魚を献上することを生業(なりわい)と
したわけである。
その代表的な魚が、白魚ということになる。
白魚専用の黒塗り金蒔絵の箱があり、毎年この時期
本丸御用という木札を掲げ、舟で届けていたのである。

また。
「月も朧(おぼろ)に白魚の 篝(かがり)もかすむ 
春の空・・・」

これは黙阿弥翁作の七五調の名台詞。
かの歌舞伎「三人吉三廓初買(さんにんきっさくるわのはつかい)」
「大川端庚申塚の場」に出てくる。

この芝居は安政7年 (1860年) 正月、江戸市村座の初演。
幕末である。

この「大川端庚申塚の場」はちょうど節分の夜という設定。
ご存知の通り、節分の翌日が立春。

それでこの台詞「こいつぁ〜“春”から縁起がいいわぇ」で
終わる。

こんなものもある。

白魚や椀の中にも角田川 子規

この句は明治26年(1893年)。
正岡子規は、当時根岸に住んでいたわけだが、
これ以外にもかなりの数の白魚の句を詠んでいる。

白魚は明治期にも東京で盛んに食べられていたと
いってよいのだろう。

やっぱり、節分、立春には白魚を食べたい。

そして、江戸前の魚といえば、代表は白魚。
いわば東京の魚といってよいと思うのである。

もちろん、今は白魚どころか、江戸前、隅田川河口
では、佃の漁師が戦後、漁業権を放棄して以来、
漁は行われていない。
当時、遠浅の砂の海岸、芝海老、車海老も獲れた。
埋め立てられ、船の通行のため、深く浚渫された
隅田川河口には白魚も芝海老も今は住むことはできぬ
のであろうが。

お台場に砂浜を作っている。
今はそんな取り組みはしていないと思うが、
あんなところでも、芝海老や白魚は住むことが
できるのであろうか。
江戸前の白魚、復活できないものであろうか。

といったところで、白魚。

福島産、680円。(相馬市、放射線測定装置検査済。)
なかなかな値段。

開けると。

量は随分ある。

白魚の料理というといろいろある。
子規が詠んでいるように、椀物。
あるいは、豆腐と玉子で、小鍋立て。

淡泊なものなので、このあたりが定番である。
やったことがあるが、淡泊すぎて、ちと物足りぬ。

やはり、軍艦巻のにぎりずし。
これも、湯通ししたものが以前の江戸前鮨であった
と思われるが、やはり生の方がうまい。
生の軍艦。

それから、天ぷらがよいだろう。
この二種でいこう。

まずは、飯を炊き、酢飯の用意。

いつものように飯台を浸水し、用意。

米を洗い、カタメモードでスイッチオン。

小一時間で炊き上がる。
切れたら、蒸らし、8分タイマー。

鮨酢を用意。いつも通り、
赤酢7:透明な穀物酢3程度で40cc。

タイマーが鳴ったら、飯台へ一合取る。
すぐに鮨酢をまわし入れ、しゃ文字で混ぜる。

手早く、手早く。

混ざったら、やっぱりタイマー8分。

その間に、わさびをおろし、海苔を軍艦用に切る。

前回、間違えてしまったが、縦に置いて
横に6等分。


つづく

 

 

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