断腸亭料理日記2021

三筋・天ぷら・みやこし その2

3944号

引き続き、三筋の天ぷら[みやこし]。

海老、きすときて、

 

次。

めごち。
これもきす同様、ピーン。
さっくり。

もっと大きなものもあると思うが小ぶりなもの。

めごち、きす、というのは、江戸前天ぷらの
両大関、小結?といったところであろう。
大関はすみいか、か。
一人大関になってしまうが。

横綱は?
やっぱり海老、そして、穴子になろう。

先日も書いたが、天ぷらの穴子は鮨の煮穴子とは違って
比較的小ぶりなものが合っている。
これを一本で揚げる。

揚がったら、鉄の菜箸でおもしろいようにサクッと
半分に切って、お客の前に出す。
自分でやってみたこともあるが、どうやっているのか
見ていてもよくわからぬ。

穴子は天つゆ。

やっぱり、文句なく、うまい。

気が付いたが、今日の衣、ちょっと玉子が
強いように、感じる。
気のせいかもしれぬが。
こんなものであったか。
自分の揚げる天ぷらが、もっと玉子が少ないの
かもしれぬ。

ご主人は、揚げる直前に種に粉をまぶし、
その場でほぐして用意してある玉子、水、粉を
合わせて衣を作り、種をからませ、揚げる。
都度、である。

種ごとに、衣の状態も変えられる。
かなりの手間であるが、もちろん手際はよく
もの凄く速い。
これがプロの仕事というもの。

ここまでで、魚介は終了。
さいまき海老、すみいか、きす、めごち、穴子。
どれも、江戸前、東京湾で獲れていたもの。

野菜。

野菜は、一度に出される。
手前左、銀杏(ぎんなん)、奥、蓮根、中央アスパラ
右手前小玉ねぎ、右奥椎茸。

江戸前天ぷらは、以前は野菜は揚げなかった、
と、蔵前[いせや]の先代が言っていた。

だが、もちろん、野菜天もうまい。

蓮根の歯応えが特によい。
今が旬であろう。
また、蓮根というのは、部位によって歯応えが
違うと聞いたことがある。
歯応えのよいところを特に選んでいる
のかもしれぬ。

どれもうまいが、小玉ねぎの甘さ、椎茸の
みずみずしさとうま味。

最後は、かき揚げ。

ご飯と一緒だが、そのまま、天丼、
天丼に出汁をかけた、天茶の三種類から選べる。

いつも通り、内儀(かみ)さんは天茶で
私は、天丼。

お新香と蜆(しじみ)の赤だし。

天丼。

おっと、びっくり。
小柱のかき揚げなのだが、おわかりになろうか。
かなりの量、白魚も一緒に揚がっている。

白魚というのは、寒い時期、1〜2月かと思っていたら、
今も、そうだが吉池にも並んでいる。
どこか北の方だと思ったが、獲れるよう。

白魚、小柱とたっぷり入ると、なかかなか
贅沢なかき揚げになる。
うまい。

これは真似をしたいが、この厚み、中まで火を
通すのは、至難であろう。

ともあれ。

うまかった、うまかった。
久しぶりの、プロの天ぷら。
ご馳走様でした。

かなりの満腹。

勘定をして出る。

それにしても、思うのだが、ここ[みやこし]と、
蔵前[いせや]


かなりの近所、この二軒があるのは、おもしろい。

今、東京の天ぷらやはの多くは、[みやこし]のように
比較的薄い衣で、塩でもうまい。

一方[いせや]の方は、ぶ厚い衣で甘辛の濃い天つゆ。
天丼で食べたい。この系統は、浅草には多いが古い江戸・
東京の天ぷらといってよいだろう。

前記のように[みやこし]のご主人は湯島[天庄]の
出身。湯島[天庄]は調べると、明治も終わりに近い
42年(1992年)の創業。
この明治の終わり頃、客の目の前で揚げて出す、
またお座敷天ぷら、というのも出てきた。
幕末創業の銀座の天ぷらや[天金]に生まれた
池田弥三郎先生が書かれていたように思う。
このあたりが、薄衣の始まりなのではなかろうか。

古い厚衣の“浅草的”天ぷらもうまいが、薄衣の
天ぷらは明らかに進歩といってよいだろう。
より、魚介の味を繊細に引き出すことができる。
むろん、その技も進化した。
それが、現代まで磨かれてきたということになろう。

どちらも、江戸前天ぷら、大切な東京の伝統の味、
で、ある。

 


みやこし

台東区三筋2-5-10 宮腰ビル1F
03-3864-7374

 

 

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