断腸亭料理日記2022

初芝居 国立劇場・新春歌舞伎公演
通し狂言 南総里見八犬伝 その1

4005号

1月4日(火)

さて、初芝居、で、ある。

前にも書いたが、観に行くのは国立。
チケットを買ったのは12月だが、そろそろ
コロナもまた復活しつつあり、多少心配。
気を付けねば。

国立は例によって、通し狂言。
演目は「八犬伝」で菊五郎劇団である。

やはり、芝居は通しに限るだろう。

ちなみに、歌舞伎座は三回公演。
それぞれ、二幕ずつ、切れ切れに別の芝居を演る、
見取り狂言。
夜の二幕目が、猿之助の「義経千本桜」川連法眼館の場。
いわゆる「四の切り(四段目の最後)」。
例の、澤瀉屋猿之助の宙乗り、で、ある。

通しではなく、ここだけ観てどうなのか、とも思うが
やっぱり、これは観たい、、気もする。

2016年歌舞伎座で、当代猿之助が初めて出演した“通し”を
観ることができた。

もちろん、宙乗り付き。

やはり、今の歌舞伎座も初芝居のトリは、猿之助頼み
なのか?!という見方もできるか。

ともあれ、とりあえず、国立に決めた。

12時開演なので、9時には起きて、着物を着て、
出掛ける。
着物用のトンビのコートを着て出るが、
歩くと意外に温かい。気温が少し高そう。

拙亭から国立劇場は行きずらい。
大江戸線で春日、三田線に乗り換えて、神保町。
神保町からタクシー。

毎年、正月の国立には、獅子舞がロビーに出るが、
コロナで、舞台幕前から花道で演じられていた。

3年ぶり、に、なるのか、芝居見物。
やはり、この歌舞伎だけの幕、定式(じょうしき)幕を見ると、
芝居を観にきた、と実感する。

この、黒、緑、オレンジ。和風にちゃんと書くと、
黒、萌黄(もえぎ)色、柿色。この歌舞伎カラーの三色。

ご存知であろうか。歌舞伎座と同じようだが、
国立はこの順番で、歌舞伎座は萌黄と柿の順が
反対になっているのである。まあ、そう思って
見なければ誰も気が付かない。

江戸三座の頃、小屋によって違っていたのである。
歌舞伎座の色順は守田座のもの、国立は市村座のものを
踏襲している。もう一座の亡き勘三郎が復活させた 中村座
白、柿色、黒でお馴染みの歌舞伎カラーではない。

上から降りてくる幕を緞帳(どんちょう)言い、
横に引いて開ける幕を引幕という。
引幕はお上に許された三座のみが使うことができ、
それ以外の小屋は緞帳しか使えなかった。

さて。
プログラムを出しておく。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

国立劇場開場55周年記念

曲亭馬琴=作
渥美清太郎=脚色
尾上菊五郎=監修
国立劇場文芸研究会=補綴
通し狂言 南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん) ?五幕七場
国立劇場美術係=美術

序幕 ?(武蔵) ?大塚村蟇六内の場
        本郷円塚山の場
二幕目 ?(下総)滸我足利成氏館の場
同芳流閣の場
三幕目 ?(下総)行徳古那屋裏手の場
四幕目 ?(武蔵)馬加大記館対牛楼の場
大詰 ?(上野) ?扇谷定正居城奥庭の場

犬山道節        尾上菊五郎
犬坂毛野        中村時蔵
網乾左母二郎/犬飼現八 尾上松緑
犬塚信乃        尾上菊之助
犬田小文吾       坂東彦三郎
犬川荘助        坂東亀蔵
蟇六娘浜路       中村梅枝
犬村大角        中村萬太郎
横堀在村        市村竹松
甘利掻太        市村光
犬江親兵衛       尾上左近
軍木五倍二       市村橘太郎
大塚蟇六        片岡亀蔵
馬加大記        河原崎権十郎
蟇六女房亀笹      市村萬次郎
簸上宮六        市川團蔵
足利成氏        坂東楽善
扇谷定正        市川左團次
ほか

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

前回、7年前、2015年のものを観ている。

国立で、配役もほぼ同じ。

人気なのであろう。
調べると国立では昭和47年(1972年)から
三回上演され今回は四回目になるのか。
基本は、同じ尾上菊五郎劇団だったよう。

菊五郎の好みということもあるのかもしれない。

前回も書いているが、私たちの世代には、
八犬伝といえば、NHKの人形劇「新八犬伝」で
あろう。
昭和48年(1973年)放送開始で2年間。
ちょうど10歳からであったので、よく覚えている。
あれで八犬伝という物語、放送では滝沢といっていたが
曲亭馬琴、という江戸時代の作者の名前も覚えた。
坂本九さんの語りも懐かしく思い出す。

仁義礼智忠信孝悌の八つの玉を持つ、八人の犬士。

この、仁義礼智忠信孝悌もこの順でソラで言うことができる。

「♪困った時には玉を出せ・・・」であったか。
歌になっていたのではなかろうか。

馬琴の原作を読んだことはない。
文学史的にいうと、儒教思想が散りばめられ、
漢文も多用され、とても我々には読みずらいもの。
今でも読んでみようという気にはならない。

が、今回芝居を観て改めて思ったのだが、儒教思想は
ともかく、ドラゴンクエストやファイナルファンタジー
のようなRPG、あるいはスターウォーズのような冒険活劇。
出生の秘密、因果因縁、八人の主人公・冒険者が、
敵役一派に立ち向かい、皆で、長年の願いを成就させる
長大な物語。
お家再興なんというと古臭いが、基本SFファンタジー的な
作りになっているストーリーといってよいだろう。
皆、八つの玉を持ち、犬の字の付く名前で、ぼたんの痣がある
八人の主人公達がわかりやすくとにかくキャッチー。
「真田十勇士」というのもあるが、戦隊ものの元祖?。
八犬伝のストーリーは今も色あせていないと思うのである。
やはり、曲亭馬琴そういう意味で評価してもよいのでは、
なかろうか。文字通り、この世界の古典である。


つづく

 

 

 

※お願い
メッセージ、コメントはFacebook へ節度を持ってお願いいたします。
匿名でのメールはお断りいたします。
また、プロフィール非公開の場合、簡単な自己紹介をお願いいたしております。
匿名はお控えください。

 

断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5|

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |

2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |

2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |

2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |

2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |

2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |

2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |

2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月

2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |

2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |

2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 | 2015 11月 |

2015 12月 | 2016 1月 | 2016 2月 | 2016 3月 | 2016 4月 | 2016 5月 | 2016 6月 |

2016 7月 | 2016 8月 | 2016 9月 | 2016 10月 | 2016 11月 | 2016 12月 | 2017 1月 |

2017 2月 | 2017 3月 | 2017 4月 | 2017 5月 | 2017 6月 | 2017 7月 | 2017 8月 | 2017 9月 |

2017 10月 | 2017 11月 | 2017 12月 | 2018 1月|2018 2月| 2018 3月|2018 4月 |

2018 5月 | 2018 6月| 2018 7月| 2018 8月| 2018 9月| 2018 10月| 2018 11月| 2018 12月|

2019 1月| 2019 2月| 2019 3月 | 2019 4月| 2019 5月 | 2019 6月 | 2019 7月| 2019 8月

2019 9月 | 2019 10月 | 2019 11月 | 2019 12月 | 2020 1月 | 2020 2月 | 2020 3月 |

2020 4月 | 2020 5月 | 2020 6月 | 2020 7月 | 2020 8月 | 2020 9月 | 2020 10月 | 2020 11月 |

2020 12月 | 2021 1月 | 2021 2月 | 2021 3月 | 2021 4月 | 2021 5月 | 2021 6月 | 2021 7月

2021 8月 | 2021 9月 | 2021 10月 | 2021 11月 | 2021 12月 | 2022 1月 |

BACK | NEXT

(C)DANCHOUTEI 2022