断腸亭料理日記２０２２

本所石原・レストラン・クインベル

４１３６号

7月23日（土）夜

さて、土曜日。

今日は、内儀（かみ）さんが、本所石原の
レストラン［クインベル］を予約していた。

やっぱりここも、定期的に行かねばならない。

本所石原は隅田川の対岸、墨田区だが、
私の住む元浅草からはそう遠くはない。

厩橋を渡り、清澄通りを南下し、蔵前橋通りを
左に曲がったところ。
これがちょうど、錦糸町行きの都バスのルートに
なっている。

自転車でもそう遠くはないのだが、厩橋に限らず
隅田川の橋は前後が坂になっているのでちょいと
ハードルになっている。

［クインベル］に行き始めてどのくらいに
なるのであろうか。20年近くにはきっとなろう。

下町の洋食や、という形容詞は当てはまらない。

いわゆる洋食を定義するとすれば、やはり、ルーツは
明治から戦前まで、ここに一つの区切りがあるだろう。
そして、戦後昭和30年代から40年代あたりまで。
戦前までのメニューはカツレツ、コロッケ、チキンライス、
オムライス、カレーライス、カツサンドあたりが
代表であろう。
そして、戦後ルーツは、ハンバーグ、スパゲティー
ナポリタンあたりになろうか。
戦後の進駐軍・ホテルニューグランド由来と、
帝国ホテルの村上シェフ由来。
グラタンはどっちであろうか。そういえば調べたことがなかった。

ともあれ。ここまでが洋食。

この後にルーツがあるメニューはフレンチ、あるいは
イタリアンという名前になろう。

考えてみれば、この変化は不思議であろう。
だがまあ、共通認識になっているのはおもしろい。

［クインベル］のメニューは「洋食」由来のものも皆無
ではないが、その範疇に入らないものの方が多い。
が、だからといって、フレンチ、イタリアンというのとも
多少違っている。あえて言えば、その両方。
おそらく、シェフの修行された時代と場所に由来しているの
ではないかと、想像している。
「洋食」、フレンチ、イタリアン広い範囲のメニューを
取り揃えている正統派の老舗レストラン、例えば
明治創業のホテルとか。そんなところに由来している
のではなかろうか。

6時予約の少し前到着。

入って、名乗り着席。

瓶ビールをもらう。

ここの名物はいくつかあるのだが、
今日はワタリガニのパスタにしようかと
考えてきた。

その前に、いくつかの料理。

魚、肉、野菜、かなりの数がある。
季節のものも多い。

魚で1品。
鮎のから揚げ。
これは季節のもの、黒板のメニュー。

それから、肉。
仔牛ロースと生ハムのチーズ焼きハンガリー風、
というもの。

そして、渡りがにのスパゲティー。

鮎から。

けっこう大きいがから揚げ。
バルサミコの風味。
焼いたのかと思うほどきれいに揚がっている。
小鮎はよくから揚げにするが、大きいものは珍しい。
塩焼きとはまた違ううまさ。

仔牛。

仔牛肉の上に生ハム、チーズ。

上にかかっているソースはオーロラソース。

オーロラソースというのは、むろん私がいわしフライに
かけるソースではない。マヨネーズにケチャップ、ソース
で日本ではオーロラソースというのだが。

オーロラソースというのはやっぱりフレンチの
基本ソースのよう。ベシャメル（ホワイト）ソースに
トマト、バターを合わせたものだそう。
オーロラは英語で、フランス語はオーロール、
sauce auroreということらしい。

ともあれ、これは正統フレンチなのかもしれぬ。

仔牛肉は柔らかく、生ハムは強めの塩味。

オーロラソースというのは食べたことがあるか
よくわからぬが、こってりにトマトの酸味。
バランスの取れたうまいソース、で、ある。

そして。
渡りがにのスパゲティー。

これで２〜３人前。

スパゲティーはちょっと細目。
そして、スープ系。

渡りがにのパスタというのは、定番。
渡りがにとトマトでも粘度の高いソース系のものも
多いと思うが、スルスルと入ってしまう。
あっという間に、食べ終わる。

お！。
そうであった。

ビーフカツサンド。
ここの看板、で、ある。

腹は一杯なので、持ち帰りでもらおう。

ご馳走様でした。

会計はビール二本、持ち帰りも入れて、
8,170円也。

ビーフカツサンドは夜食に。

トーストしたパンにちょっと辛めのソース。

時間がたっても、うまいビフカツサンド
で、ある。

クインベル

墨田区石原1-25-5
03-3623-1222

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