断腸亭料理日記2022

神田須田町・あんこう鍋・いせ源

4201号

10月28日(金)夜

さて、先日、ふぐを食べたが、
今日は、あんこう。

あんこうといえば、言わずと知れた
神田須田町の[いせ源]。

もうなん年も行っているし、ここにも書いている。

以前は、ここも予約は取らなかったが、
最近取れるようになった。

寒い中、店前に出されたストーブにあたりながら
外で待たなければいけないのも風物詩ではあった。
が、まあ、なにより、ではある。

天保元年(1830年)、江戸中橋でどじょうやとして創業、
二代目の頃、当時の連雀町、今の場所へ移転したという。

店のHPに昭和初期の頃という品書きが載っている。

これ、なかなかおもしろい。
既にあんこう鍋が看板であるが、今と違って
あんこう以外にも鍋が中心だが、たくさんの料理を
揃えている。

はまなべ、かきなべ、ねぎまなべ、しゃこ、青柳、白魚。
はまなべは、蛤であろう。白魚はまだ多少は江戸前で
獲れたはずである。皆、50銭。

50銭は今の貨幣価値で、3000円〜5000円と
いった感じではないかと考えている。
大正から昭和初期に円タクといって、タクシーは
東京市内どこへ行っても1円均一であった。
ここから考えると、1円は1万円弱、という感覚
ではなかろうか。(先日書いた池波先生が遊んでいた頃の
少し前になろうか。)

今、あんこう鍋、一人前は3800円で、似たようなところか。

特選かに塩うで、というものよい。
うで、は茹で、であるが、江戸弁である。

おさしみと並んで、白さしみ、というのがある。
白というのは、白身ということなのか。
鯛か平目?。
ただのさしみは、まぐろ?。
ともあれ、こういう言い方があったのは、おもしろい。

さて、到着。

この店の佇まい、いつ来てもよい。
もうほんとに、見なくなったが、戦争で焼け残った
大正の震災後の建築。
東京都選定歴史的建造物である。
当時の料理や建築とてもいうのか。
ほんとに、ホントーウに心から思うが、メンテナンスなど
たいへんであろうが、是非、是非、これをずっと残して
ほしい。東京の誇りだと思うのである。

東京というのは、江戸開府から数えて400年超の大都市。
が、その歴史と文化は東京の街からはほぼわからなかろう。

玄関脇。

ここの看板にも、塩ゆでかに 江戸前料理。
こっちはなまっていないのが、おもしろい。

氷の上にあんこう一匹。
上に鉄製のフックがあるが、吊るしてもいた。
氷を入れているので、当時の冷蔵庫でも
あったらしい。

入って、玄関内、下足番で名乗り、木の番号札を
もらって、梯子段をあがってお二階へ。

窓際のお膳。

真冬になると、暖房代わりに、客がいないところも
ガスをつけていたりする。

下足札は会計の目印なので、お膳の上に出しておかなければ
いけない。

瓶ビールをもらって、鍋。
二人前、すぐにくる。

お通しは、なすときのこのおひたし。

あんこうの身と皮、そして、あん肝が人数分二切れ。
野菜は、三つ葉、東京多摩名物白いうど。
椎茸、きぬさや、銀杏、ゆずの皮が散らされている。
見えないが、下に豆腐と白滝。

お姐さんが点火していく。

あんこう鍋は、産地の茨城などへいくと、味噌で
あん肝を溶いたものというが、ここは、東京らしい
ちょっと甘めのしょうゆのつゆ。

一品だけ、鍋以外のものももらった。
あんこうの南蛮漬け。

から揚げの甘酢漬けであるが、これ、かなりうまい。
乙、である。
ちなみにここには、ふぐ同様、煮凝り、から揚げもある。
コラーゲンが共通するのか。

煮えてきた。

あんこうの身は最初から火は通っているが、味が染みた
ところを取って、食べる。

ここの白滝も、細いもの。毎度書いているが、
白滝は、細いものに限る。

骨付きの身も皮もしっかりしたコラーゲン。
これがあんこうの値打ち。

あらかた食べつくしたところで、おじやの準備。
お新香がきて、

お姐さんがご飯に玉子を落として、作ってくれる。

ちょっと甘めのつゆの味の、おじや。

うまかった、腹一杯。
下足札を持って、下の帳場で勘定。
二人で14080円也。

玄関では見上げてほしい。天井である。

格天井だが、なんだかお分かりになろうか。
これ、菊の絵柄に正宗、で、菊正宗なのである。
昔の菊正宗の樽のデザインロゴである。
タイアップであったのか。

ご馳走様でした。

 

いせ源

千代田区神田須田町1丁目11番地1
03-3251-1229

 

 

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