断腸亭料理日記2023

帝国ホテル・ラ・ブラスリー その2

4393号

引き続き、帝国ホテルのレストラン
[ラ・ブラセリー]。

二人で、メインコースの村上伝統フルコースと、
今東京都美術館で開催されいるマティス展にちなんだ
アーティスティックなマティスコースを頼んだ。

昨日はそれぞれ前菜、伝統のダブルビーフスープ、
マティスの魚まで。

次は、伝統のエリザベス女王風。
これ。

メニュー名は海老と舌平目のグラタン“エリザベス女王”風。

昨年亡くなった英国のエリザベス女王は1975年(昭和50年)
来日している。これにちなんだ料理。
当時私は中学1年、正直あまり記憶には残っていない。
その後、チャールズ皇太子、ダイアナ妃の来日はあるが、
女王の来日は後にも先にもこの1回だけ。
まあ、英連邦でもない我が国にくる理由は英国女王としては
なかったのであろう。

ただ、女王はこの時、自ら来るべきと考えてきた、
とNHKであったかルポ番組で視た記憶がある。
くるべき理由というのは、昭和天皇に会いたかった、と。
エリザベス女王は第二次大戦後の即位だが、両国は
第二次大戦で戦い、連合国の英国は戦勝国、日本は敗戦国
という立場にある。
戦った相手であるが、激動の時代を生きた元首の先輩
昭和天皇と会い、教えを受けたかった、と。
これ以前に戦後1971年(昭和46年)、昭和天皇は訪欧し
オランダで卵をぶつけられたりしているが、この時、
むろんロンドンでエリザベス女王には会っていた。
この背景があって、来日に至ったということであろう。

ともあれ。
この時、帝国ホテルに宿泊され、村上料理長が
魚介類が女王のお好みと聞いて、この海老と舌平目の
グラタンをお出した、という。

黄色いのは、オランデーズソース。
オランデーズソースとは、フレンチの基本ソースの
一つで、バターと卵黄、レモン果汁を乳化させたもの。
まあ、マヨネーズほど酸っぱくないが近いか。
どうも、この皿ごと焼いているようで、触らないで
下さいとの注意付き。(耐熱皿なのであろう。)
料理としては奇を衒ったものではない。
オーソドックス。
海老は伊勢海老系ではなく、車海老系。
これは、豪華よりも上品に、ということか。
もちろん、うまい。

次は、マティスの肉料理。

プロヴァンスの香りを一皿に、というタイトル。
牛肉の煮込み“ドーブ”にエピスの香りを添えて、と。

マティスは1917年から30年ごろにかけて南仏プロヴァンス
地方のニースに住み、製作を行っている。
マティス作品は全般的に明るい色彩。これは無関係では
ないのであろう。

牛肉のプロヴァンス風煮込みというのは、フレンチでは
定番のよう。
この牛肉は、なんであろうか、肩肉が一般的なようだが
ホロホロで、コラーゲン質が豊か。
デミグラスソースのようだが煮汁を煮詰めたもので、濃厚。
メインコースの方もそうだが、濃厚でもトゥーマッチ
ではない。抑制が効いており、やっぱり上品。

さて。

伝統メインコースの肉料理。

これが、言わずと知れた、シャリアピンステーキ。
内儀さんのお目当て。
サイズは、アラカルトで頼んだ場合の半分ほどのよう。
やはりトゥーマッチにならない配慮であろう。

1936年(昭和11年)宿泊していたロシア人オペラ歌手
シャリアピン氏向けに考えられたもの。
歯がわるくステーキが食べたいのだが、食べられない、と。
玉ねぎみじん切りに漬けて柔らかくした。
シャリアピンステーキはなん度も書いているので、
このくらいでよいか。

これ、入っていないと思うのだが、しょうゆの味が
するのである。
つまり、強いうまみ。

味は、玉ねぎ、バター、、塩、、、
入っても赤ワイン、、、あたり。かなりシンプルのはず。
まったく不思議。
日本人シェフの技と味覚が生み出したもの、
ということか。

ここまで。

最後はデザート。

マティスコースのデザートは、これ。

(ポンピドゥー・センター/国立近代美術館)

オレンジとヌード、というタイトル。
これは、皿の上に敷かれている、カードの絵の
タイトル。もちろん、マティスの。
最晩年になる1953年、ドローイングと切り絵、らしい。
サイズ感がわからぬので調べると、155×108cm。
当然、今回の展示作品のよう。

柑橘フルーツのサバラン仕立て ブラッドオレンジの
ソルベ、とのこと。

まったくスイーツには疎い私。
サバランというのは、調べると洋酒を染み込ませた
ブリオッシュ。
サバラン、オレンジ果実、バニラアイス、ブラッドオレンジ
シャーベット。
別添えで、オレンジのソース。

全体を通して、さわやかでやっぱり、上品。

ムッシュ村上伝統コースは、

内儀さんのチョイス。
ワゴンから、いちじくのケーキ、とのこと。

以上。

やはり、流石の帝国ホテルであろう。
我々のような、年のものにもちょうどよい、味と量。
フレンチのフルコースというとやはりトゥーマッチ
のことが多い。

会計は合計35,200円也。
上品でうまい料理と、心地よいサービス。

ご馳走様でした。

 

 

帝国ホテル・ラ・ブラセリー

 

 

 

※お願い
メッセージ、コメントはFacebook へ節度を持ってお願いいたします。
匿名でのメールはお断りいたします。
また、プロフィール非公開の場合、バックグラウンドなど簡単な自己紹介を
お願いいたしております。なき場合のコメントはできません。

 

 

 

断腸亭料理日記トップ | 2004リスト1 | 2004リスト2 | 2004リスト3 | 2004リスト4 |2004 リスト5|

2004 リスト6 |2004 リスト7 | 2004 リスト8 | 2004 リスト9 |2004 リスト10 |

2004 リスト11 | 2004 リスト12 |2005 リスト13 |2005 リスト14 | 2005 リスト15

2005 リスト16 | 2005 リスト17 |2005 リスト18 | 2005 リスト19 | 2005 リスト20 |

2005 リスト21 | 2006 1月 | 2006 2月| 2006 3月 | 2006 4月| 2006 5月| 2006 6月

2006 7月 | 2006 8月 | 2006 9月 | 2006 10月 | 2006 11月 | 2006 12月

2007 1月 | 2007 2月 | 2007 3月 | 2007 4月 | 2007 5月 | 2007 6月 | 2007 7月 |

2007 8月 | 2007 9月 | 2007 10月 | 2007 11月 | 2007 12月 | 2008 1月 | 2008 2月

2008 3月 | 2008 4月 | 2008 5月 | 2008 6月 | 2008 7月 | 2008 8月 | 2008 9月

2008 10月 | 2008 11月 | 2008 12月 | 2009 1月 | 2009 2月 | 2009 3月 | 2009 4月 |

2009 5月 | 2009 6月 | 2009 7月 | 2009 8月 | 2009 9月 | 2009 10月 | 2009 11月 | 2009 12月 |

2010 1月 | 2010 2月 | 2010 3月 | 2010 4月 | 2010 5月 | 2010 6月 | 2010 7月 |

2010 8月 | 2010 9月 | 2010 10月 | 2010 11月 | 2011 12月 | 2011 1月 | 2011 2月 |

2011 3月 | 2011 4月 | 2011 5月 | 2011 6月 | 2011 7月 | 2011 8月 | 2011 9月 |

2011 10月 | 2011 11月 | 2011 12月 | 2012 1月 | 2012 2月 | 2012 3月 | 2012 4月 |

2012 5月 | 2012 6月 | 2012 7月 | 2012 8月 | 2012 9月 | 2012 10月 | 2012 11月 |

2012 12月 | 2013 1月 | 2013 2月 | 2013 3月 | 2013 4月 | 2013 5月 | 2013 6月 |

2013 7月 | 2013 8月 | 2013 9月 | 2013 10月 | 2013 11月 | 2013 12月 | 2014 1月

2014 2月 | 2014 3月| 2014 4月| 2014 5月| 2014 6月| 2014 7月 | 2014 8月 | 2014 9月 |

2014 10月 | 2014 11月 | 2014 12月 | 2015 1月 |2015 2月 | 2015 3月 | 2015 4月 |

2015 5月 | 2015 6月 | 2015 7月 | 2015 8月 | 2015 9月 | 2015 10月 | 2015 11月 |

2015 12月 | 2016 1月 | 2016 2月 | 2016 3月 | 2016 4月 | 2016 5月 | 2016 6月 |

2016 7月 | 2016 8月 | 2016 9月 | 2016 10月 | 2016 11月 | 2016 12月 | 2017 1月 |

2017 2月 | 2017 3月 | 2017 4月 | 2017 5月 | 2017 6月 | 2017 7月 | 2017 8月 | 2017 9月 |

2017 10月 | 2017 11月 | 2017 12月 | 2018 1月|2018 2月| 2018 3月|2018 4月 |

2018 5月 | 2018 6月| 2018 7月| 2018 8月| 2018 9月| 2018 10月| 2018 11月| 2018 12月|

2019 1月| 2019 2月| 2019 3月 | 2019 4月| 2019 5月 | 2019 6月 | 2019 7月| 2019 8月

2019 9月 | 2019 10月 | 2019 11月 | 2019 12月 | 2020 1月 | 2020 2月 | 2020 3月 |

2020 4月 | 2020 5月 | 2020 6月 | 2020 7月 | 2020 8月 | 2020 9月 | 2020 10月 | 2020 11月 |

2020 12月 | 2021 1月 | 2021 2月 | 2021 3月 | 2021 4月 | 2021 5月 | 2021 6月 | 2021 7月

2021 8月 | 2021 9月 | 2021 10月 | 2021 11月 | 2021 12月 | 2022 1月 | 2022 2月 | 2022 3月 |

2022 4月 | 2022 5月 | 2022 6月 | 2022 7月 | 2022 8月 | 2022 9月 | 2022 10月 |

2022 11月 | 2022 12月 | 2023 1月 | 2023 2月 | 2023 3月 | 2023 4月 | 2023 5月 |

2023 6月 | 2023 7月 | 2023 8月 |

BACK | NEXT

(C)DANCHOUTEI 2023