断腸亭料理日記2008

断腸亭、中東ドバイへ行く その10

なおも、引き続き、『断腸亭、中東ドバイへ行く』その10。

さて、今日は、食いものについて、
最後にもう一つだけ、書いておきたいものがある。

私は知らなかったのだが、デーツ、

というものを皆さんはご存じであろうか。

日本語では、なつめやし。
雨の降らない砂漠ばかりのアラブでは
オアシスなどで古来から栽培されてきた、
最も大切な食糧になる植物。

ドバイでも、ホテルにも街路樹にも最も多く植えられている。
(ちなみに、街路樹もホテルの植栽も、すべてドバイなどでは、
スプリンクラーで水をやっている。基本的には砂漠であるので、
こうしないと、育たないのである。これらはすべて、
海水からの浄化水で、これだけでも
たいへんな水の量を使うことであろう。)

このナツメヤシの実は、干して、一般的なお菓子になっている。


朝食バッフェでもデザートコーナーに置いてある。
(上がデーツ。下は、干したイチジク、で、あろうか。)

これをもう少し、いや、そうとうにお洒落にしたものも
あるようで、ホテルに着いた日に、部屋に“ウエルカム”として
置かれていたもの。


ホテルの名前が入りった、皮の箱。
チョコレートかと思って開けてみると、


ナッツなども入った、デーツであった。
このままでも、うまいし、不思議とつまみ、にもなる。

もう一つだけ、最初にも書いたが、七つ星ホテル(?)。
バージュ(ブルジュ)・アル・アラブ。
見物にいったので、写真を紹介。
(このグループのホテルに泊っていれば、見に入ることはできる。)

これは正面の島へ通じる橋からのもの。

入ったところ、エントランスのホール。
全館のコンセプトは、未来っぽい、感じ、らしい。

エントランスから、上まで、吹き抜けになっている。

七つ星、というのはうそで、五つ星だが、
このスター・ダイアモンド・アワード、というのは、
ホテル業界では、世界的に最高に権威のある賞、らしい。
(ちなみに、ここは2005年に受賞しているが、その後、
今年、2008年に日本橋、三井タワーにあるマンダリンオリエンタルは
世界初の六つ星をもらっているようである。)

さてさて。

そんなこんな、二週に渡って書いてきた
『断腸亭、中東ドバイへ行く』、そろそろ、一巻の読み終わり。

書いている自分とすれば、正直のところ、毎日ネタに苦しんでいるなかで、
これだけ書くことがある、というのは、絶好の題材であった。
また、読んで下さる皆様にはどういうご感想だったであろうか。
最初のうちはよいが、続いているうちに、ああ、まだこれか、
と、呼び飛ばされた方も、あったのかもしれないが、
年に1回のことである、広いお心でお許し願いたい。

UAE、ドバイというところについて、
少し私なりに感想をまとめてみたい。

発展しきりで、金もある。
そして、今は、昨年来のアメリカの金融危機から、
世界的に数少ない、金が余ってさえいる国、であることは、
皆知っていること。

今回、初めて、中東アラブ、UAEドバイへいって、
わかったことは、日本にとって、実は近い国であったということ。
距離的、時間的にも、アメリカよりヨーロッパよりも近いということ。

彼らとは、アジアの東の端と西の端と離れているが、
やはり、欧米よりは近い国である。

そして、これは昔から知られているが、アラブ、イスラムの国々は、
親日である、ということ。
(特にトルコ、イランの人々は親日で有名である。)

だったら、もっと仲良くしてもよいのでは、というのは、
素朴に思うこと、ではある。

ちょっと堅い話になる。

ご存じの通り、我々日本という国は、戦後60年、
西側陣営の一員として、アメリカ一辺倒のポジションを取ってきた。
そして、これもご存じの通り、昨年、アメリカ金融は破綻し、
ちょうど、ドバイ滞在中に、直近の日本のGDPなど経済指標の下降が
発表され、「Gulf Times」であったか、現地の英字新聞の見出しにも、
「Japanese Economy Has shrinked」と、戦後続けてきた世界No.2の
日本の成長の時代が終わった、というような論調で書かれていた。

むろん日本の経済もそうなのだが、アメリカの経済はもっと深刻で
先のFRBの議長だった、グリーンスパン氏などは、百年に1〜2回の
危機である、とまでいっているという。

いろんな人が指摘しているが、
世界経済、勢力図、パラダイムがはっきりと変わっている。

もうアメリカにくっついている時代は、終わった。
これからは、アラブにくっつこう。
(どっちにしても、資源も金もない狭い島国、日本など、
どこかにくっつかなければ、生きていけないことは明白である。)
今、そういう転機なのではなかろうか。
(打算的で、経済的な意味では。)

そして、この主張にはもう一つの背景がある。

2〜3日前に書いたが、英米アングロサクソン人は
食べ物に興味がない。

彼らは、論理(ロジック)の人達で、20世紀は彼らが世界に君臨した。
その時代が終わったのである。
ロジックであれ、科学であれ、それらは、自然や神にも勝るもの、
そういう価値観で20世紀という時代、彼らは世界をリードし、
全体として成長を続けてきた。
むろん、それから我々が受けた恩恵は計り知れないのだが、
結果として、様々なひずみが噴出しているのもまた皆さん
ご承知のところ。

ところで、アラブの人々は、なぜ、親日なのであろうか。

一つには、アメリカが嫌い、ということがある。
広くいうと、キリスト教国、欧米すべてが入ろうが、十字軍の
頃にさかのぼる、キリスト教vsイスラム教という背景があり、
その上に、イスラエル建国を押した、アメリカ、であろう。
結局それが、911のテロにまでつながっているのだろう。

それに対して日本は(彼らからみると)仏教国であるということ。
そしてアジアの未開な小国でありながら、明治以降百数十年の間で、
欧米に伍して成長をした、こと。

こういうことであろうか。
(一度、アラブの人に直に聞いてみたいが。)

今回、ドバイへいってみて、ある程度わかったのだが、
基本的に、イスラム、アラブの人々は、きちんとして、
義理堅く、優しい、家族思いの人々である。

私の考えは、先に述べたように、
アングロサクソン的価値観が終わったのだから、
アジアなり、日本なり、イスラム・アラブなり、
ついでに中米のインディオも含めて、連帯をしたらどうだろうか。
(やはり産油国であるベネズエラのインディオ出身の
暴れん坊将軍、チャベス大統領、で、ある。
インディオは環太平洋の民族で、日本人とも民族的には
源流で繋がってもいる。)

別段、欧米と喧嘩をしようというのではない。
うまくやりながら、畳の目ずつ、離れていってもよいではないか。

おそらく、自然とは対立しない、ロジックだけではない“なにものか”を
アラブの人々は持っている。そして、おそらく、日本人も本来そうで、
インディオの人々もそうであろう。

直感的に今、そう思うのである。

その手始めに、アラブの人々ともっと仲良くなろう。
彼らの文化をもっとよく知ってもよいであろう。

確かにタリバンのやっていることは恐ろしいが、
アメリカ人にとっては敵であっても、
日本人にとって、本当は彼らは敵ではない、のではないのか、と。

この夏、アラブ・ドバイへいって、
そんなことを考えたのである。


ともあれ。

ドバイ空港から、エミレーツ航空で関空到着。
トランジット待ちの間に、関空の売店で缶ビールを買って、売っていた
奈良の柿の葉寿司をベンチに座って食った。

なんとなく、ほっとするものがあった。



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